神奈川県水産技術センター メルマガ457

掲載日:2014年10月10日

 神奈川県水産技術センターメールマガジン  457号    2014年10月10日号

□ 研究員コラム

1 アマモ神事のルーツを鶴岡八幡宮にみた (栽培推進部 工藤 孝浩) 

2 淡水魚の釣り今昔 ( 内水面試験場 安藤 隆)

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1 アマモ神事のルーツを鶴岡八幡宮にみた (栽培推進部 工藤 孝浩) 

 当センターと多くの方々との協働によるアマモ場の再生事業が実を結んで、横浜市南部の海の公園や野島海岸では、もはや植える所が無いほどにアマモ場が広がりました。

 現在、再生事業の最前線はアマモの生育がより困難な場所へと進んでいます。その一つが、京浜急行の金沢八景駅に近い平潟湾です。ここでは平成23年から再生活動が継続されていますが、それが契機となって平潟湾に臨む瀬戸神社に伝わるアマモを使った「無垢塩祓(むくしおはら)い神事」が復活しました。

 その神事は、夏の祭礼でふんどし一丁の若者が海に飛び込んでアマモを採り、神域や神輿(みこし)の清めに使うものでした。しかし、軍事工場からの排水や埋立てによって平潟湾のアマモ場は戦前になくなり、戦時色が濃くなる中で神事は廃れてしまいました。

 しかし、再生活動によってアマモが一時的に定着した事から、80年ぶりに神事が復活しました(写真1)。アマモ場の再生は、環境の再生にとどまらず、失われていた地域住民と海との精神的な繋がりをも紡ぎ直したのです。

 さて、平潟湾から裏山を越えた鎌倉には、鶴岡八幡宮に海藻を使った興味深い神事「浜降式」が伝わっています。八幡宮では9月14-16日にもっとも大切な例大祭がありましたが、14日未明に始まる浜降式は、3日間にわたって執り行われる数々の神事の幕開けとなります。

 まず、白装束の神職約30名が夜明けの由比ヶ浜に集まって祝詞(のりと)をあげます(写真2)。次に神職はふんどし一丁となって駆け足で海に入り、禊(みそぎ)をすると海藻を手に海から上がり(写真3)、海藻を収めた木箱とともに戻ってきます(写真4)。海藻は神域の要所に置かれて清めとし、身を清めた神職とともに例大祭を迎えます。

 実は、瀬戸神社の宮司家は鶴岡八幡宮の神楽男(かぐらお)としてその伝統を継承する社家の一つで、アマモ神事のルーツはここにありそうです。採られた海藻はアラメ、カジメ、ホンダワラ類の混合で、「手近に採れるものを使う」感じでした。これが山を越えて東京湾側に伝わると、手近に生えていたアマモに替わったのでしょう(詳しくはこの論文をお読みください)。

 アマモ神事は復活したものの、平潟湾のアマモは夏に枯れてしまう事がなやみでした。ところが今年の夏、ついにアマモの夏越しに成功しました!今夏がさほど暑くなかったことが最大の要因でしょうが、アカエイによる掘り起しを防ぐ棒を密に立てたり、潮干狩りへの注意喚起を促す看板を建てるなどの、関係者の努力が実ったのだと思います(写真5)。

日本藻類学会和文誌「藻類」59巻3号 木村光子・工藤孝浩(2011)「神奈川県・瀬戸神社の「無垢塩祓ひ」神事とアマモ」 [PDFファイル/3.33MB]

復活4年目となった瀬戸神社の「無垢塩祓い神事」(平成26年7月6日)

写真1 復活4年目となった瀬戸神社の「無垢塩祓い神事」(平成26年7月6日)

夜明けの海へ祝詞をあげる鶴岡八幡宮の神職(平成26年9月14日鎌倉市由比ヶ浜)

写真2 夜明けの海へ祝詞をあげる鶴岡八幡宮の神職(平成26年9月14日鎌倉市由比ヶ浜)

海藻を手に海から上がる神職(同上)

写真3 海藻を手に海から上がる神職(同上)

海藻を収めた木箱を先頭に神社へ戻る(同日、鶴岡八幡宮)

写真4 海藻を収めた木箱を先頭に神社へ戻る(同日、鶴岡八幡宮)

注意喚起の看板と、看板を建てた地元大学の学生・先生とともに(平成26年4月)

写真5 注意喚起の看板と、看板を建てた地元大学の学生・先生とともに(平成26年4月)

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2 淡水魚の釣り今昔 ( 内水面試験場 安藤 隆)

 私が子供だった昭和30年代は、淡水魚の釣りが盛んだった。というか普通に皆やっていた。近所のおじさんが釣った鯉を濡らした新聞紙にくるんで家に持ってきてくれて、それを「たらい」に放ってしばらくすると元気に泳ぎだして不思議に思ったりした。それを夜には鯉こくにして食べた。また、祖父に連れられてため池に行き、乗っ込み(産卵期)の小鮒をたくさん釣って帰ると祖母が白焼きにして甘露煮を作った。お腹にたくさん卵の入った小鮒はおいしかった。

 そんな環境で育ったので、小学校5年生頃からは、一人で毎週のように鮒釣りに行くようになった。また、1m四方ほどの四つ手網で、クチボソ(モツゴ)を採って遊んだ。採った鮒やクチボソは、水槽にたくさん入れて飼っていた。

 釣り場には、大人や子供の常連が結構いて、互いに釣り情報を交換したりしていた。それらの人々は、最新のかっこいい釣り具を持ち、凝った服装をしているような人々ではなく、最低限の使い勝手の良い道具を持った普段着の人々だった。

 現在はすっかり状況が変わった。川の釣り場に集まるのは専用の凝った道具を携えた鮎釣り、へら鮒釣り師、またはルアー・フライマンである。たまに、それらの人々を避けるようにして、水たまりの端っこで雑魚を釣っている人を見ると、なんだかほっとする。気張らず、楽しく魚と戯れている様が心地よい。なんだか自然にやさしい感じがする。

 特定の魚種を釣りの対象にするようになると、どうしても少し考え方が偏ってくると思う。是非、子供達には、ルアー釣りでなく、まず雑魚釣りをやってほしい。そこで様々なことを感じ、身につけてから、専門的な釣りをすればいいと思う。

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