神奈川県水産技術センター メルマガ455

掲載日:2014年9月12日

 神奈川県水産技術センターメールマガジン  455号    2014年9月12日号

□ 研究員コラム

1 相模湾のブリ (相模湾試験場 高村 正造)

2 オキセミホウボウと高校生 (船舶課 中村 良成)

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1 相模湾のブリ (相模湾試験場 高村 正造)

 相模湾ではここ数年ブリの漁獲が増えています。最近、全国的にブリの資源量が大きく増加していることから相模湾での漁獲も増えたのではないかと考えられています。今から60年程昔には相模湾でブリが大量に獲れていた時代があり、年間50万本以上の漁獲があった年もありました。さすがにその時代ほどの漁獲ではないですが、1980年代中盤以降、1万本以下の漁獲が続いていたことを考えると一昨年は約3万本、昨年は約2万本と漁獲状況は好転しています。日本周辺海域の資源の状態としては60年前よりも現在のほうが多いのではないかという話も研究者の会議の場では出ています。ではなぜ60年前と同じくらい獲れないのかと考えると、昔と比べてまき網や西日本のモジャコ(ブリの幼魚)漁の漁獲が大幅に増えたことや、ブリの回遊経路そのものが昔と変わってしまったことなどが原因ではないかと言われています。実際に北海道ではこれまでほとんどブリは獲れなかったのに、ここ数年間は大量にブリが漁獲されています。相模湾試験場では中央水産研究所と協力してブリの回遊経路の調査を行っています。泳いだ場所の水温や水深、日照時間などの情報を自動で記録する標識(アーカイバルタグ)をブリに取り付けて、そのデータから回遊経路を調べる取り組みです(写真)。多くのデータを集めてブリの生態解明に繋げていくことを目的に取り組んでいます。

再捕された標識ブリ(腹部にアーカイバルタグのセンサー)

写真 再捕された標識ブリ(腹部にアーカイバルタグのセンサー)

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2 オキセミホウボウと高校生 (船舶課 中村 良成)

 21年前のこと、あるTV番組をきっかけに1人の高校生と知り合いになりました。とにかく魚のことになると目の色を変えて話が止まらなくなる高校生でした。私が水産試験場(水産技術センターの平成7年3月までの名称)の研究員だと分かると、収録の合間には「相模湾でビワアンコウは獲れますか?メンダコは水揚げされますか?」などと質問攻めに会い、「うーん、漁師さんも商売だからねえ、そういう魚は獲らないなー」何てやり取りが続きました。

 彼にとっては「水族館の飼育員や魚屋さん以外にも魚を職業にしている人がいるんだ!」と、私のような存在が非常に新鮮に感じたようで、その後、彼はちょくちょく試験場に遊びに来るようになりました。

 ある夜のこと、自宅に彼から「良成さん!3センチの稚魚なのですが、どう見てもオキセミホウボウと思う標本があるので鑑定してもらえませんか?」と電話がありました。オキセミホウボウといえば当事は図鑑にも満足な絵が出ていないめったに獲れない幻のような魚でした。もちろん、私も現物など見たことありません。「どうせただのセミホウボウだろう」と思ったのですが、「すぐにでも送ります!」と張り切る彼の気持ちも無碍にはできません。しかし、私も分類の専門家ではないので、わずか3センチの稚魚をオキセミホウボウとまで断定する自信はありませんでした。ちょっと考え、「私よりもN先生に送ってみたら?連絡先を教えてあげよう」と提案しました。彼は「えっ!図鑑で有名なあのN先生ですか!うれしいです!」と声を裏返して喜びました。(実は寝ようとした矢先のことだったので、早く彼の電話を終わらせるために思わず大学時代にお世話になったN先生を利用したのでした。笑)

 翌日、私の元にN先生から電話がかかってきました。「さっき変な高校生から電話がかかってきたわ、こっちは締め切り間近の検索図鑑の校正で忙しいんじゃ!わしにふるな!お前も水産試験場の研究員ならちゃんと自分で対応しろや!」とかなりお怒りの様子でした。これも覚悟の上でしたので「すんません、どうしても見てくれと聞かないもので・・・・、今回だけは勘弁してください」と平身低頭で電話を切りました。

 その翌日、再びN先生から電話がありました。「今、送られてきた標本を見た。まだ稚魚だが、確かにオキセミホウボウや。40年振りの発見になるぞ、あの高校生はこんな小さな個体をオキセミホウボウと見抜いたのか、あいつは何者や!」N先生の声も裏返っていました。

 これが彼とN先生の出会いの始まりでした。それから17年後、この出会いがレッドリストを書換え、天皇陛下も絶賛した魚類学上の大発見に繋がっていくとは当時は思いもよりませんでした。

 さて、県内で魚祭りやみなと祭りなどのイベントがあると、魚の展示や解説のボランティアによく出向きますが、近頃の子供達はよく知っています。数年来のダイオウイカブームのように、魚や海の生き物に対する関心がとても高まっていることを実感させられます。これも彼の功績でしょう。

 人との出会い、物事に対するまっすぐな気持ちと熱意、日々の惰性に流されることが多い自分を省みて、「これではいけない」と改めて気を引き締めました。いつも彼には教えられます。

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