神奈川県水産技術センター メルマガ454

掲載日:2014年8月29日

 神奈川県水産技術センターメールマガジン  454号    2014年8月29日号

□ 研究員コラム

1 魚食普及について思う (相模湾試験場 中川 研)

2 自由研究 (内水面試験場 井塚 隆)

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1 魚食普及について思う (相模湾試験場 中川 研)

 「魚離れ」が叫ばれて、どのくらい経つでしょうか。
 県でも様々な魚食普及事業や活動を行ってきましたが、残念ながら大きな成果(魚離れへの歯止め)は、得られていないのが現状ではないでしょうか。

 私も魚食普及活動として、いくつもの魚の料理教室に協力してきましたが、料理教室を行っているときは、参加者から、「この魚おいしいわね。」「簡単に調理ができるのね。」「家でも作って食べたいわ。」などの意見が聞かれ、手応えのようなものを感じるのですが、なかなか結果に結びつきません。
 そこで、よくよく参加者の意見を聞いてみると、「この魚おいしいわね。…でも、家で作るのは面倒だわ。」「簡単に調理ができるのね。…でも、生ゴミがたくさん出て嫌だわ。」「家でも作って食べたいわ。…でも時間が無いし、手間もね。」と、魚食普及の難しさが伝わってきます。
 これまでの料理教室は、主に主婦層等を中心とした大人を対象として行ってきたのですが、大人は、既に生活スタイルや食習慣及び好みが定まってしまっているため、それを変えるのは、とても難しいこと。
そうです。対象を間違っていたのです。
 それを実感したのが、当場で開催した親子料理教室でした。
 この料理教室は、以前、このメールマガジンでも紹介したものですが、1年を通して、同一参加者に相模湾の旬の魚を知ってもらうための料理教室を行い、相模湾で行われている漁業を知ってもらう漁業体験などを併せて行うものでした。
そこに参加してくれた親子のアンケートの回答文等の中に「子供がスーパーの鮮魚売り場に率先して行き、魚の名前を言って食べたがるようになった。」「子供が台所で、「魚は僕がさばくよ!」と言って、料理を手伝うようになった。」などの意見が見られたのです。
 そう、対象とするべきは、これから育っていく子供たちなのです。
 子供を対象とすることで、良いことがいくつもあると私は考えます。
 一つ目は、主題でもある魚食普及です。子供の頃から魚を食べることに親しんでいれば、大人になっても魚を食べてくれます。また、子供が、魚を食べたがれば、親は、魚を購入し、魚料理を作ってくれるのではないでしょうか。
 二つ目は、魚中心の食生活が、生活習慣病の予防をしてくれることです。子供にも増えている生活習慣病ですが、料理教室を通じて、魚を好きになり、魚をよく食べるようになることで、これらを予防することができるのではないでしょうか。
 三つ目は、包丁を扱うことで、手先が器用になり、手先をよく使うことで、脳に良い影響を与えてくれるのではないでしょうか。
 四つ目は、地元の魚を知ることで、地元に興味を持つようになり、もって、地元を誇りに思うようになってくれるのではないでしょうか。(もしかすると、地元を誇りに思うことで、過疎化に歯止めがかかる地域もあるかも…。)
(これらは、あくまで、私個人の私見ですので、あしからず。)
 そのようなことを考えていくと、今各地で進められている、学校給食への地元水産物の導入は、さらに進めていくべきと思います。
残念ながら、当場で開催していた親子料理教室は、平成22年度に終了してしまいましたが、子供たちへの魚食の普及や地元に誇りを持ってもらえるような周知活動は、続けていきたいと思っています。

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2 自由研究 (内水面試験場 井塚 隆)

 小学生の長女に夏休みがやってきた初日、父である私は「何の宿題が出たか?」と問うた。長女曰く「算数プリントでしょ、国語プリントでしょ、それと自由研究」とのこと。

 自由研究!!! 研究を職業としている私にはワクワクする語感である。

 「何をやってもいい」

 「誰にも縛られない」

 「俺は自由だぁ!」

 子供の頃の自由研究といえば昆虫採集が定番。コガネムシを捕まえて安眠させてムシピンを刺す。なんだか罪悪感に駆られて狩猟本能がそがれ、結局はそのコガネムシと飼っていて死んだカブトムシの2個体だけを提出した記憶がある。

 さて、娘に「何をやるの?」と問うたところ、「何もやらない」とのこと・・・。自由研究とは、やってもやらなくても自由だと勘違いしているらしい。オイオイ・・・。

 そこは何とか諭しつつ、父の厳しい指導が始まる。「育てているトマトの収穫数と気温の相関関係を調べてはどうか。もしかすると、収穫数からエルニーニョ発生が予測できるかもしれないぞ。まてよ、そもそもトマトの熟し具合は太陽の黒点活動と関係しているのかもしれんな・・・云々」。思った通りにトマトが実らずに悩んでいた酔っぱらい親父の戯言は、何一つ娘の心を打つことはなかった。「まあよい。そのうち泣きついてくるだろう。その時は助けてやらん訳でもない。」

 そんなやり取りも忘れつつあった夏休み中盤。気になって聞いてみたところ、父では埒が明かずと判断した娘は、母と相談して即決したらしい。テーマは「豆腐づくり」。地域在来種の大豆と一般流通している大豆の2種類を原料として、さらに苦汁(にがり)も2種類使って、出来上がりを比較するそうだ。

 「フン!面白そうじゃねえかぁ。でもこの場合は、比較するのが難しいぞ。硬さか?白さか?それとも美味しさか?何を以って美味しいとするのか?食味官能試験をしなきゃだめだぞ。対象人数は?その前に、得られたデータを解析する方法から考えておかないとな。ワ-大変じゃ!研究をナメンナヨ!」

 職業病を抱えた酔っぱらい親父の前から、娘の姿はすでに消えていた。

 「まあ良いワ。反論されても困るし・・・・。」

 考えてみればわれわれ職業研究者は、ほとんどの場合がテーマを与えられている。つまり、県民ニーズがあって、それが研究テーマになっている。努力の多くは、そのテーマを解決するためにはどのような手法を用いればよいか?どのようなプロセスを辿れば最適解への近道か?などという方法論に注がれていると思う。もし所属長から「何でもいいから自由に研究しなさい」と命令されたらどうか?ワクワクするのは語感だけであって、結局は戸惑って、考えすぎて、リスクを恐れて、何もできないのではなかろうか?何も迷わずに昆虫採集に取り組んだ幼心も、少しは残しておきたいものである。

 夏休みも終盤に差し掛かった。まだ豆腐は姿を見せていない。

 父は黙って肴が出来上がるのを待つことに決めた。

 ビール飲みつつ「どれも美味いねぇ」と答えるのだ。

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