神奈川県水産技術センター メルマガ450
神奈川県水産技術センターメールマガジン 450号 2014年7月4日号
□ 研究員コラム
1 アカモクの原点 (企画資源部 荻野 隆太)
2 リニューアルオープン (内水面試験場 蓑宮 敦)
----------------------------------------------------------------
1 アカモクの原点 (企画資源部 荻野 隆太)
「かながわのアカモク食文化」の歴史は意外と浅く、8年前の平成18(2,006)年に幕を開けました。今では、春先になれば、各浜の漁業者が当たり前のようにアカモクを収穫し、地域の料理店等でアカモクしらす丼やアカモクマグロ丼等のメニューが、人気となっています。平成24(2,012)年には、「鎌倉あかもく」がかながわブランドに登録され、邪魔者扱いだった海藻が、かながわを代表する新名産にまで成長を遂げました。(メルマガVOL.399)
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f450011/p582297.html
アカモクの食文化が着実に定着しつつありますが、今日は、この原点、「アカモクがおいしく食べられることに気づいたきっかけ!」についてお話します。
実は、この直接的なきっかけは、水産技術センターでも漁業者でもありません。漁業者の親戚の、とある農家の方、FKさんの存在なのです。
神奈川のアカモクの幕開けは、平成18(2,006)年2月28日。その時、私は水産業普及指導員として三浦市内を担当しておりました。この日、松輪サバで有名な、松輪地区の漁業者、茶光丸 藤平さんより、
「病を煩っている親戚(農業を営むFKさん)が、テレビ放映で、『アカモクに抗がん作用がある』と紹介されているのを見て、通信販売でアカモクを扱っている他県の業者に問い合わせたが、通信販売業者の方からは、『現在、アカモク製品の在庫はありませんが、そちら(神奈川)にも生えていると思いますよ?』と言われた。
そこで、親戚のFKさんに頼まれてそれらしい海藻を収穫したが、それがアカモクかどうか?また、どうやって食べるのかを調べてもらいたい!」との相談がありました。
私は、海藻図鑑を片手に茶光丸さんの自宅に伺い現物を調べた所、その海藻がアカモクだということがわかり、アカモクを常食している新潟県の水産試験場に問い合せて、食べ方を教えてもらいました。
早速、その場でアカモクを茹でると、地味な茶褐色だった海藻が鮮やかな緑色になり、包丁で刻むとメカブと同様な粘りの有るトロロ状になりました(写真2)。しかし、茶光丸さんと私、共に初めて食べる食材だったので、「これ、本当に大丈夫かな・・?」などと話しながら、恐る恐る試食しました。茶光丸さんと私の感想は、「メカブの様な粘りと、シャキシャキとした歯応えがあり、おいしい!」
これが、食べるどころか、邪魔者扱いされてきた「アカモクが、実はおいしい!」と気付いた瞬間で、この時から私はアカモクの普及に取り組み始めました。
しかし、そのきっかけとなったFKさんは、残念ながらその後逝去されました。私は、アカモク乾物の製品化に成功した翌年、平成20(2,008)年のお盆に、FKさんの墓前にアカモクの乾物と生前吸われていた煙草をお供えし、「アカモクを教えて頂きありがとうございました!」と、お参りさせて頂きました。
かながわのアカモク食文化の最初の1ページには、農家のFKさんが病を治したいという想い、一人の男性の生存本能が刻まれております。アカモクは、漁業者にとって冬場の新たな収入源として定着し、かながわの新たな名産品になりました(写真3)。
全ての原点である、FKさんのご冥福を謹んでお祈りいたします。
写真1 松輪の茶光丸さん ご自身も平成21年より、アカモク乾物製品を生産されています。
写真2 茶光丸さんの食卓で、初めて試食したアカモクとろろ(平成18年2月28日撮影)
写真3 かながわのアカモク普及の経緯(拡大画像 [その他のファイル/474KB] ・ [PDFファイル/899KB])
----------------------------------------------------------------
2 リニューアルオープン (内水面試験場 蓑宮 敦)
平成26年3月26日に、相模原市中央区水郷田名にある「相模川ふれあい科学館 アクアリュウムさがみはら」がリニューアルオープンしました。
相模川ふれあい科学館は、集い、学び、遊びを通して相模川とのふれあいを深めることを目的として、昭和62年11月に相模原市が設置した施設です。施設の老朽化や展示の旧態化などのため、平成24から25年度にかけて再整備工事が行われました。
当場では、このリニューアルにあたり展示内容などについて技術的な助言をしました。
例えば「坂道お魚観察水槽」では、「常に魚道を遡上する魚が観察できるドーナッツ型の水槽を造りたいので力を貸して欲しい」というのが最初の相談でした。魚には流れに向かって泳ぐ性質がありますが、一年中遡上している魚はいません。また、遡上したいという欲求はあっても、遡上には体力が必要なので、流れの緩いところに留まってしまうこともあります。どうなることかと心配でしたが、打合せを重ねていくうちに「魚の行動を観察できて、行動実験などにも使用できるような水槽」というコンセプトで完成しました。
また、当場と縁の深いイラストレータの安斉俊氏による活き活きとした魚たちの絵も魅力的な展示の一つになっています。
私としては、限られた期間の中でできる限りのお手伝いをさせていただいたつもりですが、もう少し時間があったらと思うところも正直あります。
これから夏休みシーズンになりますので、遊びに行かれては如何でしょうか?
http://hakozoo.blog94.fc2.com/
----------------------------------------------------------------
■水技Cメールマガジン(隔週金曜日発行)■メルマガの配信の変更、解除、ご意見やお問い合わせはこちらのメルマガお問い合わせフォームからお願いいたします。
発行:神奈川県水産技術センター 企画資源部
住所:〒238-0237 神奈川県三浦市三崎町城ヶ島養老子
電話:046(882)2312
-----------------------------------------------------------------