神奈川県水産技術センター メルマガ447

掲載日:2014年5月23日

 神奈川県水産技術センターメールマガジン  447号    2014年5月23日号

□ 研究員コラム

1 100年間単位の森づくり (企画資源部 一色 竜也)

2 川で育っていた人工産アユ (内水面試験場 相川 英明)

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1 100年間単位の森づくり (企画資源部 一色 竜也)

 先日、会議に出席のため東京代々木にある国立オリンピック記念青少年総合センターに行って来ました。その裏手には明治神宮の森が広がっており、昼休みに散策してみました。そこは、都心とは思えないほどの深淵な樹林で、神社の荘厳さを醸し出しており、落葉の堆積した腐葉土や、小灌木、下草なども多く、その佇まいからは、いかにも自然植生の森といった感じがしました。しかしこの森は、植生学や森林生態学に基づいて植林された人工林で、当時の設計者たちが100年後の森をイメージして作り上げられたとのことです。

 明治神宮は、明治天皇と昭憲皇太后を祭神とする神社で、明治天皇が明治45年(1912年)に崩御された後、大正2年(1913年)に衆議院で明治神宮創建の建議が可決されました。東山栄著の「本多静六 日本の森を育てた人」によりますと、このとき発足した神社奉祀調査会は本多静六東京帝国大学教授を中心として森づくりの基本方針を定めています。それは「ひとたび植栽すれば、その後は人手を入れなくても自然更新して、林相を維持できるようにする」というもので、将来的にはカシ、シイ、クス類の常葉広葉樹を主体とした極相に至る計画でした。ただし神社の境内は約70ヘクタールと広大であるため、林苑全域にわたって常葉広葉樹を植栽するのは困難なので、長い年月をかけて常葉広葉樹の極相に遷移していくよう植栽計画が立てられたとのことです。 代々木の地で極相となり、かつ神社にとってふさわしい林相は何であるか、また、出来る限り人手のかからない植栽方法について遷移理論を用いるなど、植生学や森林生態学の理論を生かした植林がなされます。こうした100年もの前の人々の業績によって、後世の私たちは大都市の中で神社の荘厳さを感じることができ、その恩恵を受けることができるのです。さらにこの森の豊かさは後世へも永続的に受け継がれていくでしょう。

 さて現在、三浦半島沿岸では海藻が極端に減少する「磯やけ」状態にあるとされ、生態系の激変や漁業への影響が心配されています。その原因としてアイゴやガンガゼといった食害生物の拡大が考えられています。その対策は現在着手され始めたところですが、一方で、沿岸の豊かな生態系を育むための植生について、本来どうあるべきかを検討することも重要であるかと思われます。その上で、海が与えてくれる恵みを、どうすれば安定的かつ永続的に手にすることができるかを考える必要があると思うのです。

 明治神宮の森は安定した植生に移行するのに、100年という長期スパンの計画で実行され、見事に達成されました。三浦半島の磯焼けもなるべく早く元の海藻が茂る状況に戻すことが望まれますが、子々孫々に至るまで海の恵みを享受できるような海の森づくりについて、長期的な視野で考えることも重要であると感じました。

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2 川で育っていた人工産アユ (内水面試験場 相川 英明)

 神奈川県では県内の河川へ放流するためのアユを生産しています。現在、人工産アユは10世代(10年間)にわたり継続的に飼育しています。このアユの河川での移動や成長を調べるため、県と神奈川県内水面漁業振興会が共同で調査を行うこととなり、2013年5月16日に漁業者、海洋科学高校、内水面試験場が参加して、アユの脂鰭をハサミで切除する方法で標識付け作業を行い(写真1)、相模川と酒匂川へ放流しました。

 2013年9月10日、私は酒匂川漁協へ訪問していて、酒匂川で釣れたアユを漁協組合員の方から見せてもらっていました。漁協の皆さんも標識付けしたアユが釣れているか、とても関心があります。標識付けしたアユは脂鰭が切除されていますので、釣れたアユの脂鰭の有無を確認していきます。

 漁協の方の話では、20-30g/尾程度大きさのアユに標識付けしたアユが含まれることが多いので、このサイズのアユは注意深く脂鰭を観察していきます。

 アユの中に1尾だけ101.4gのアユが含まれていました。大型魚は海産アユであることが多いので、その場にいた漁協の方、私も海産アユと思い込んでいました。ところが、このアユをよく見ると脂鰭が切除されていて、5月16日に放流した人工産アユだったのです(写真2)。

 神奈川の人工産アユが川でこのように成長していたことにたいへんうれしく思いました。人工産アユについては、より野性的なアユの生産に着手しています。県内の河川に天然アユと遜色のない野性味あふれる人工産アユを放流できるよう、これからも努力していきたいと考えています。

写真1 人工産アユの標識付け作業

写真1 人工産アユの標識付け作業

写真2 採捕された人工産アユ

写真2 採捕された人工産アユ

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