神奈川県水産技術センター メルマガ445

掲載日:2014年4月25日

 神奈川県水産技術センターメールマガジン  445号    2014年4月25日号

□ 研究員コラム

1 ゴンズリを呑むウドリ (栽培推進部 岡部 久)

2 アサリの採苗 (企画資源部 石井 洋)

----------------------------------------------------------------

1 ゴンズリを呑むウドリ (栽培推進部 岡部 久)

 寒い季節になると、城ヶ島の赤羽根海岸に近い岩壁には、越冬のためにたくさんのウミウがやってきます。この鳥の生態に関する大変面白い話を、横須賀市立自然・人文博物館の元館長、林公義先生から聞いたことがありました。今回はそれをご紹介します。

 先生が学芸員になりたてのころ、城ヶ島のある漁師さんに、島の自然に関する聞き取りをしていました。その中で、「おめぇ、ウドリがゴンズリを呑むのを見たことあるか?」と逆に聞かれ、「見たことねぇなら、行って見てこい」と、宿題を出されたといいます。ウドリとは島で言うウミウのこと、ゴンズリは有名な毒魚、ゴンズイのことです。ゴンズイの毒は、背びれと胸鰭のトゲにあり、刺されると大変痛みます。某O漁協のT組合長は、ゴンズイに刺されて死に掛けたとことがあるといっていましたので、侮ってはいけない強毒であることが分かります。この3本の強力な毒トゲは、後ろ向きに倒すことができるようになっていて、危険が迫るとこれを起こして身を守ります。こんな危ない魚を、ウミウはどうやって呑むのでしょうか。

 先生はその様子をこの目で見ようと、何日も城ヶ島の裏手の岩場に座って観察を続けたといいます。あるとき、潜っていたウミウが何か魚をくわえて水面から顔を出しました(写真参照)。よく見るとそれはゴンズイで、頭に近いところにある3本の毒トゲに刺されないように身体の真ん中辺りをくちばしで挟んでいます。次の瞬間、ウミウはくわえたゴンズイを空中に放り投げ、落ちてきたところを頭から丸呑みにしたのだそうです。頭から呑めば、毒トゲは身体の後方へたたまれて、口やのどに刺さることがないのでしょう。岩場に座り、長いこと待って漁師さんからの宿題をやり終えたことと、目の当たりにしたウドリの見事な食事ぶりに、先生は「いたく感動した」とおっしゃっています。

 さて、このように毒魚さえ餌として丸呑みにできるツワモノも、食われる側に回ることがあります。冬から春にかけて、餌の魚を求めて城ヶ島の海に潜るウミウを待ち受けるものとは? この続きは次回のお楽しみということで。

 メルマガでの逸話の紹介をお許しくださった林先生、貴重な写真の提供をいただいた横須賀市博の萩原学芸員に、この場を借りて感謝します。

ゴンズイをくわえたウミウ 

写真 「ゴンズイをくわえたウミウ」(2007年12月、天神島)

撮影:横須賀市立自然・人文博物館 萩原清司学芸員

----------------------------------------------------------------

2 アサリの採苗 (企画資源部 石井 洋)

  4月になり『東京湾の潮干狩り場がオープンし親子連れで賑わっています』というニュースを目にする季節となりました。手頃なレジャーとして親しまれている潮干狩りも、東京湾ではアサリ資源が減少したため、潮干狩りを楽しんでもらうために他地域から入手しているところがあります。東京湾のアサリの漁獲量は、大規模な埋め立て工事がほぼ終了した昭和60年以降2万トンをピークに減少し続け、平成23年では千トンを割り込み大きく減少しているのです。このままでは江戸前アサリが幻となってしまいます。

 そこで、東京内湾を普及区に持つ私は、漁業者とともに三重県で行われているアサリ養殖に取り組んでみることにしました。アサリを大規模に養殖することができれば、江戸前アサリの供給量が増加し、さらに養殖アサリが大量に幼生を放出しそれらが育ってアサリが増えることが期待できます。

 養殖には、アサリ種苗が必要となりますので、平成25年度は三重県で実績のあるアサリ採苗袋を砂浜に設置する採苗試験を実施しました。試験では横須賀市東部漁業協同組合から特別に許可をいただき、共同漁業権の漁場に設置させていただきました。

 採苗袋といっても、特殊な材料を使っているわけではありません。写真1のとおり普通に売っているネットの中にケアシェル※と小石を入れただけのものです。砂浜に設置すると、砂浜を転がっているアサリ幼生がネットの目から採苗袋に集まります。また捕食者からネットが守ってくれるのですくすくと育つのです。ただ、やみくもにアサリ採苗袋を設置しても、効率良くアサリは集まりません。アサリ稚貝は、大潮の干潮時のなぎさ線あたり、地盤高では-30から+30センチメートルに多くいると言われており、試験では掃除等のメンテナンスのことを考えて+50センチメートルに設置しました。

 6月10日から10月3日までの116日間で、4183個、1袋あたり182個のアサリが採苗できました。2列に敷き詰めたにもかかわらず、多い袋で425個、少ない袋で35個と12倍もの差がみられました。殻長は8.5から27.1ミリメートルで平均18.1ミリメートルでした。個体密度は1リットル当たり40.4個で、これは設置した砂浜の最大値1リットル当たり10.4個より高いものでした。このことから、採苗試験は一定の成果をみることができました。ただこの試験でいくつかの問題点も浮かび上がりました。まず採苗数のばらつきが大きいことです。また、平成25年9月16日の台風18号により、砂浜に海藻が大量に打ち上げられ採苗袋を覆い尽くし、結果25パーセントのアサリが死んでしまいました。これらについては、平成26年度に設置場所等の対策を講じて取り組むことになっています。

 養殖アサリが出荷され、ブランドアサリとなる日が来るのを励みとして、今年も漁業者と試験を続けます。

※ケアシェルは、株式会社ケアシェルの製品で「カキ殻を粉末にしたものを独自の技術で固化した天然の栄養剤で、成長に必要なミネラルを補給することにより成長を促進する効果がある」製品です。(ホームページから引用)

 砂浜に設置したアサリ採苗袋

写真 砂浜に設置したアサリ採苗袋

----------------------------------------------------------------

■水技Cメールマガジン(隔週金曜日発行)
■メルマガの配信の変更、解除、ご意見やお問い合わせはこちらのメルマガお問い合わせフォームからお願いいたします。

発行:神奈川県水産技術センター 企画資源部
住所:〒238-0237 神奈川県三浦市三崎町城ヶ島養老子
電話:046(882)2312

-----------------------------------------------------------------

メルマガTOPへ

神奈川県

このページの所管所属は 水産技術センター です。