神奈川県水産技術センター メルマガ427

掲載日:2014年1月15日

神奈川県水産技術センターメルマガ VOL.427 2013-8-2

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/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン  VOL.427 2013-8-2
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□研究員コラム

〇 藻場を食い荒らすアイゴ増加の経緯 (栽培推進部 工藤 孝浩)

〇 今も続くかき(付着物)との戦い (相模湾試験場 石戸谷 博範)

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〇 藻場を食い荒らすアイゴ増加の経緯 (栽培推進部 工藤 孝浩)
 磯焼けの原因として、全国的に魚がクローズアップされたのは、比較的最近のことです。1990年代末、ある研究者から「南日本におけるいくつかの藻場の消滅は魚の食害による」との説が唱えられました。当時、専門家の多くはその説に懐疑的でしたが、私は「近い将来に本県でも起こり得る事態だろう」と強く心に留めてフィールドに臨んでいました。
 2004年に小田原地先の人工リーフのカジメが短期間に消滅する「事件」が起こりました。それが県内初の魚による藻場食害の事例で、アイゴによるものと推定されました。その後、アラメやカジメ藻場の消滅が三浦半島西岸に急速に広がっていきました。それと同時に、アイゴの定置網等での混獲や潜水目視例が急増し、葉に残された噛み跡から藻場の消滅はアイゴの食害によるものと特定されました。
 アイゴは、カジメ等の大型海藻のみならず、アマモの葉も好んで食べます。私が県内のアマモ場で初めてアイゴの食害を確認したのは2005年のことで、場所は当センター地先でした。そこでは2005年以降、毎年食害を受け続けていますが、興味深いことに隣接する城ヶ島大橋下のアマモ場は2010年まで食害を受けませんでした。センター地先のアマモ場の水深は3m以深なのに対し、大橋下では1m前後と浅く、浅い水深帯には食害が及んでいなかったのです。
 その後、三浦半島南西岸では2011年から3年続けてアイゴの大量出現に見舞われました。こうなると、浅いアマモ場もバリカン刈りに遭ったように食い荒らされ、アマモ場をすみ場とする生物は減少し、アオリイカの産卵も見られなくなりました。しかし、県内におけるアイゴの再生産についてははっきりしたことが分からず、アイゴの急増は黒潮上流域からの卵や稚魚の供給によるものと考えられていました。
 ところが2013年6月、横須賀市佐島地先の定置網に大量入網した大型のアイゴは、おびただしい卵や精子を放出しました。現在、アイゴは県内の海で大規模に再生産していると思われます。県内複数の漁協から磯焼け対策の研究をするよう要望が上がっていますが、私が見てきたアイゴ増加の経緯が何かの役に立てればと考えております。
写真1 定置網で大量に水揚げされた大型アイゴから放卵・放精が確認された(2013年6月23日、佐島魚市場)
写真2 アイゴに食いちぎられ、浜に打ち上がったアマモの葉には、多数の噛み跡がみられる(2013年7月25日横須賀市斉田浜にて採集)

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〇 今も続くかき(付着物)との戦い (相模湾試験場 石戸谷 博範)
 坂の上の雲(司馬遼太郎先生著)の中に、「米西戦争に派遣されたスペインのセルベラ少将の艦隊や日本海海戦に遠征したロシアのロジェストウエンスキー司令長官率いるバルチック艦隊が、長途の航海をつづけてきたために船底に「かき」がついて、各艦とも運動能力が著しく低下した。」と言う一節があります。
 我々、海で仕事をする者にとって、「かき」の付着による苦労は、身にしみて理解できることです。ここでの「かき」とは、カキフライのカキも含めて、フジツボやムラサキイガイ等の付着物の総称と見てよいと思います。海水温がピークを迎える7-9月の相模湾では、2ヶ月も自然状態で海水中に物を入れておくと、写真1のような状態にフジツボ等が付着します。さて、フジツボに覆われたこの物体は何かと言いますと写真2が答え。海の中の流れを計測する電磁式流向流速計です。
 通常、流速計を設置した場合には、2-3週間でフジツボ落とし(現場用語で「かき」落とし)をしますので、これほどの付着は稀ですが、台風等で沖に出れない日々が続くと、このような厳しい現実が待っています。
 定置網や生簀網では、このフジツボなどがロープや網で成長すると、水中での重量増加により、昨日まで浮いていた漁具が翌日には海中に沈んでしまうこともあります。また、面積が増えた分に応じて流れによる抵抗が2倍、3倍と増加し、急潮により網を流出する原因ともなります。
 秋山真之参謀が、作戦を練った明治の頃より今日まで、かき(付着物)は、海で生きる人々の課題として、生き続けています。しかし、これを撃退するのではなく、浮子など困った部分に付いた物については、「かき」落とし作業で、退いてもらいながら、自然状態のフジツボ等も共存できる海を育むことも大切ではないかなと、秋山真之中将の終焉の地である小田原の海を見ながら思っています。
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