神奈川県水産総合研究所 メルマガ050

掲載日:2014年3月18日

神奈川県水総研メルマガ VOL.050 2004-07-02

-- Fish-mag >゜)))< ------------------------
/KN/ 神奈川県水産総合研究所メールマガジン  VOL.050 2004-07-02
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
□□研究員コラム
・ゾウの時間クラゲの時間(相模湾試験場 木下 淳司)
・アユ初期生態調査(内水面試験場 蓑宮 敦)
■[特集](財)神奈川県栽培漁業協会(その1 設立の経緯)
-----------------------------------------------------------------
○ゾウの時間クラゲの時間
 ゾウの時間ネズミの時間(本川達雄・中公新書)という本には、生き物の世
界のふしぎが分かりやすく書いてあります。

 大きな生き物ほどたくさん食べる(エネルギーを必要とする)ことは当たり
前ですね。
 でも体重が2倍になっても、エネルギー消費量(呼吸速度)は、1.5倍に
しかなりません。つまり大きな生き物ほど「省エネ」なのです。

 小動物は餌がなくなるとすぐに死んでしまいますが、大きな動物は平気なこ
とを思えは、理解しやすいでしょう。
 これはバクテリアから人間まで、ほとんどの生き物に当てはまる経験則なの
です。

 しかしクラゲは例外です。

 私は修士課程でミズクラゲのエネルギー消費量(呼吸速度)を研究しました。

 赤ちゃんクラゲ(直径3ミリ)から10センチのクラゲまで、体重は1万倍
違います。赤ちゃんクラゲは花びらのような形をしていますが(写真1)、2セ
ンチくらいに成長すると、親と同じクラゲ型(写真2)になります。

 実験の結果、赤ちゃんクラゲの間は体重が2倍になってもエネルギー消費量
は1.3倍にしかなりませんでした。

 しかしクラゲの形になると、体重が2倍になればエネルギー消費量も2倍に
なりました。ミズクラゲは短い生涯の中で大きく体質を変化させていたのです。

 赤ちゃんクラゲは餌を捕るのが下手で死亡率も高いため、成長に伴うエネル
ギー消費量の増加を抑制しているのでしょう。

 クラゲ型(2cm)へ成長したあとは、どんどん餌を食べてすばやく成長で
きるような、活発な体質になると考えています。

 ところでクラゲの鑑賞は癒し効果があると人気上昇中です。4月にオープン
した「新江ノ島水族館」へ行ってみましょう。神秘的な世界を垣間見ることが
できるでしょう。
               (相模湾試験場 技師 木下 淳司)

ミズクラゲの幼生と成体の写真はこちら(撮影:木下)
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f450011/p583032.html
新江ノ島水族館のHPはこちら
http://www.enosui.com/

○アユ初期生態調査
 アユ釣り解禁から1ヶ月が経ちました。
 今年は、天然稚アユの遡上も多く、釣果も好調のようです。

 遡上してくる稚アユは昨年秋に産卵・孵化して海へ下ったものですが、これ
まで、海に下ってからの生態はほとんど分かっていませんでした。

 河川への稚アユの遡上量は年変動が激しく、資源量の予測が非常に困難です。

 この資源変動の要因を解明するためには、最も減耗が大きいとされる孵化後
の仔魚期から稚魚期の生態を明らかにすることが重要です。

 内水面試験場では、相模川河口域及び隣接する波打ちぎわで、10月から翌年
5月にかけてアユの分布調査を実施しています。

 今回は、当調査の苦労話を紹介します。

 波打ちぎわの調査は、小型曳き網を人力により曳いてアユを採集しています
(写真1)。

 海が穏やかな時は良いのですが、波が高い時や風が強いとき等は困難を極め
ます。
 せっかく来たからと、高波時に半ば強引に網を曳いたこともありますが、網
と共に波に飲み込まれ散々な結果に終わりました。

 勿論アユは一尾も捕れませんでした。

 また、強風時は、網が風を受け、まるでパラグライダーみたいです。

 冬の海は、荒れることが多く、早起きして調査に向かっても、現場に付いて
呆然と海を眺めてしまうことが度々あります。こんな時は、気持ち良さそうに
波に乗るサーファーが恨めしく思うほどです。

 河口域の調査では、主にプランクトンネットを船曳してアユを採集していま
す(写真2)。

 船曳は相模川漁業協同組合連合会の協力を得て行っていますが、川の船は小
さいので、波が高いときは、まるで木の葉のように舞ってしまいます。
 船酔いしてしまうだけなら良いのですが、2002年度調査では、ネットが障害
物に引っかかり操船不能となってしまいました。

 河口の中央部にあるコンクリートの杭に何度も激突し、水がどんどん船の中
に入って来ました。必死にネットを回収し、何とか無事に脱出できました。

 今では、船頭さんと「あの時は凄かったなあ」と笑っていますが、あの時は
もうダメだとあきらめ、結婚もしないまま僕の人生は終わるのかなあと思いま
した。

 また、酔うだけならマシと言いましたが、昨年調査後に忘年会があり、船酔
いで料理が食べられなかったと言う悲しい経験をしました。

 こんな危険な仕事に快く協力してくれる、船頭さんと当場の先輩方に心から
感謝しております。

 今年度は、悪状況では退く勇気を持って中止できる、そういう人に私はなり
たい・・・と反省する新婚の今日この頃です。
                     (内水面試験場 蓑宮 敦)
稚アユ調査の様子と調査用曳網の写真
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f450011/p583033.html
-----------------------------------------------------------------
■[特集](財)神奈川県栽培漁業協会(その1 設立の経緯)全3回
 37魚種、約9400万尾。各県や国の機関等において、平成14年度中に放流を目
的として種苗生産された数です(注)。

その中でもマダイはヒラメ(約3,700万尾)に次いで特に多く、22の県で約
2,500万尾が生産されました。

 神奈川県でも、毎年65万から100万尾のマダイが放流されております。これ
は、財団法人神奈川県栽培漁業協会が毎年、生産、放流しているものです。

 神奈川県で1年間に釣られるマダイは100トン前後ですが、そのうち、釣り
人によって釣られる量は60-90トンと漁業を上回ると言われています。

また、釣られているマダイの約半分は放流したものという結果も明らかになっ
てきています。

 このようなことから、(財)神奈川県栽培漁業協会では、マダイ種苗生産の
協力金として、マダイ釣りの方から1回200円をご寄付いただいております。
すでにご協力いただいている釣り人の方も多いと思います。

業務課長の鈴木秀雄さんにお話を伺いました。

「県栽培漁業協会は、昭和61年8月に設立いたしました。

これは、昭和60年に水産団体、遊漁者、釣り船業者の代表など構成された協
議会より、「今後の放流事業については、県は研究・開発を中心として、大量
生産による放流は受益者が行うべき」という内容の提言を受けて進められたも
のです。

受益者である漁業者や漁協などが直接種苗生産を行うことは難しいですから、
沿海漁協、水産団体、沿海市町、県などの出えんを受け、財団法人としてこの
働きを担う団体ができました。

生産業務は62年にマダイの中間育成からはじまり、隣接する当時の県水産試
験場の技術協力を受けながら行ってきました。

職員は、現在28から46歳、平均35歳の9名のプロパーが生産を行っており、
マダイ等魚類担当、アワビ等貝類担当、調査管理担当と分かれております。

生産について大きな失敗というのはいままでないのですが、平成12年にサバ
フグが大量に発生し、放流用マダイの中間育成のために網代湾においてあるイ
ケスの網をかじってしまい、放流する予定の種苗が大量に逃げ出してしまうと
いう事故がありました。

魚自体は海の中へ逃げたので放流したのと同じなのですが、放流実績には入
らないとのことで、報告書やホームページの放流数グラフなどにはカウントさ
れていません。

また、それ以前にも台風で流されてきた大木がイケスを壊したり等というこ
ともありました。

イケスの外側に2重に網を張る等、種苗が逃げないような対応を
しております。」
(続きます。)
                   (取材 企画経営部 小川 砂郎)
(財)神奈川県栽培漁業協会の写真と用語解説
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f450011/p583034.html

(注)平成14年度 栽培漁業種苗生産、入手・放流実績(全国):水産庁・独
立行政法人水産総合研究センター
-----------------------------------------------------------------
[編集後記]
 おかげさまで、このメルマガ今回で第50号となります。
 登録いただいている方も約400名となりました。いつも読んでいただいてい
る方、感想やコメントをいただいている方々、大変感謝しております。
 今後ともよろしくお願いいたします。

 さて、栽培漁業協会は、お隣というか同じ敷地内にあるので取材しやすい
です。次回は、協会の現在の取り組み、第3回目は、生産現場からの声、
という構成を予定しております。

(財)神奈川県栽培漁業協会
http://www.kanagawa-sfa.or.jp/
-----------------------------------------------------------------
■水総研メールマガジン(毎週金曜日発行)
■配信の変更、解除は、こちらから↓
http://www.agri-kanagawa.jp/suisoken/mailmag/

発行:神奈川県水産総合研究所 企画経営部 担当 小川
住所:〒238-0237 神奈川県三浦市三崎町城ヶ島養老子
電話:046(882)2311
ご意見・お問い合わせ:fish.415@pref.kanagawa.jp

-----------------------------------------------------------------

メルマガTOPへ

神奈川県

このページの所管所属は 水産技術センター です。