神奈川県水産技術センター メルマガ120

掲載日:2014年3月10日

神奈川県水産技術センターメルマガ VOL.120 2005-12-2

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/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン  VOL.120 2005-12-2
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□□研究員コラム
・ナガスミヤキ漁に思う
                 (相模湾試験場 川原 浩)
・相模湾の水産資源の今
              (相模湾試験場 木下淳司)
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○ナガスミヤキ漁に思う
(相模湾試験場 川原 浩)

 20年ほど前にも小田原に勤務したことがあるが、強く印象に残っているのは、他の地域では漁獲も食べもしない魚が漁獲され地域で好んで食べられている地域固有の魚食文化である。


 その一つがナガスミヤキである。クロタチカマス科のクロタチカマスのことであるが、名前のとおりタチウオを炭で真っ黒にした姿で、尖った口には鋭い歯が並んでいる。塩焼きやバター焼きにして食べるが、小骨が多く、やや独特の臭いがあり、私にはこの辺が一般受けしない理由とも思えたが、この個性が引きつけるのか地域の人は兎に角旨いという。


 食文化とはそう言うものだと思う。当時漁が少ない時には市場で3千円の値が付くほどの高級魚であったことからも、地域で熱烈ファンがいたことが分かって頂けるだろう。


 このナガスミヤキは、相模湾では秋に出現し、夜に灯火をつけて、群れを水面近くに浮き上がらせて鋭い歯で糸を切られないよう真ちゅう線で針元をガードした立て縄で釣る。漁は11月の終わり頃まで続き、小釣りの漁師たちはこれで正月の餅代を稼ぐんだと言って、夕方になると忙しく支度をして、出漁していった。漁場は、大磯沖の瀬の海である。西湘バイバスを通ると20隻ほどの灯火をつけた船団が見え、秋の終わりを感じさせられたものである。


 ところが、体長3mにもなるバラムツの出現によりナガスミヤキの魚群が形成されず、小田原を離れる平成にはナガスミヤキ漁は行われなくなり、寂しさを感じていた。このバラムツもかっては地域でスギウオと呼ばれ1本が内陸部の農業地域と米1俵と交換されるほど嗜好され、重要な釣り資源であったが、ワックス分が強く食べ過ぎると下痢症状を起こすことから、昭和45年に食用販売禁止となった魚である。


 11月に入り小田原の魚市場でナガスミヤキが揚がっているのを見かけた。今年はこのナガスミヤキ漁が良く、1隻あたり100kg前後の水揚げがあり、10隻ほどが操業していると聞いて嬉しくなった。しかし、値段の方は、良い時で1000円/kg、少し漁があると200-300円/kgと20年前とは大違い。最近の魚価安の影響もあろうが、元々地域限定の魚で流通圏が狭い上に食べ慣れている高齢者が減り、若い世代に食文化が継承されていないことも原因のようである。


 小田原の漁業といえば定置網が良く知られているが、実はこのような地域固有の魚食文化を創り出したのは、優秀な釣り技術に寄るところが大きい。今各地で行われているキンメダイの道具も小田原発と聞いている。

 釣り漁業は、単価の高い魚でないと経営が成り立たず、営む漁業者もずいぶん少なくなったが、今年のナガスミヤキの好漁で昔からの小釣り漁師に混じり、遊魚船の乗り子として働く若い人たちもナガスミヤキ漁に出ているようである。伝統ある技術・文化が若い世代に継承されることを期待したい。


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○相模湾の水産資源の今
   (相模湾試験場 木下淳司)

 相模湾は沖を流れる黒潮の影響を強く受ける暖かい海です。そして1300種類を超える魚類が棲む豊かな海です。マアジ、サバ、ソウダガツオ、ブリ、カマスおよびイワシ類など水産上の重要な魚が多く回遊します。このため定置網漁業が大変盛んです。


 定置網は水深70m程度までの沿岸海域に網を設置し、毎日網の一部を引き上げて魚を獲ります。大きな網は全長500mにもなります。定置網は魚が入るのを待って獲るため、魚を獲りつくす恐れが少ない漁法です。近年相模湾の定置網では、毎年1万トン前後の漁獲量があります。


 魚種によって漁獲量が大きく変動する種類があります。マイワシは1984年には16,000トンも相模湾の定置網で漁獲されましたが、1990年代に入り大きく減少しました(図1)。またウマヅラハギも1991年を境にあまり獲れなくなりました。


 相模湾から魚がいなくなってしまったのでしょうか?


 そんなことはありません。マアジは1986年から漁獲量が急増し、現在まで相模湾の定置網を代表する魚となっています(図2)。またブリ(ワカシ・イナダなど未成魚を含む)の漁獲量も増加傾向にあります。


 海の中では十年以上の長いスケールで、優勢となる魚種が交代します。相模湾の定置網は200年もの長きにわたり絶えることなく続いてきました。それは優勢となる魚の種類が変わっても,常に相模湾が豊かな海であり続けたからでしょう。この素晴らしい海を守り,次の世代に引き継がなければならないと思います。


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[最近のホームページ更新情報(12月2日)]

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[編集後記]

11月末に小田原沿岸で潜水調査をしたところ、おそろしいほど水が澄んでいました。調査船から下ろした透明度測定板は水深11mの海底に着いてしまいました。

おそらく透明度は20mを下らなかったでしょう。海に潜るとマアジ、イサキ、イシダイ、メジナなどが乱舞し、まるで竜宮城でした。

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