神奈川県水産技術センター メルマガ140

掲載日:2014年2月26日

神奈川県水産技術センターメルマガ VOL.140 2006-4-21

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/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン  VOL.140 2006-4-21
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□□研究員コラム
・あなご学うんちく(1) (資源環境部 清水 詢道)
・2006年春、東京湾の干潟にカレイ湧く  (栽培技術部 工藤孝浩)
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○あなご学うんちく(1)
                    (資源環境部 清水 詢道)

 マアナゴの旬が近づいてきました。東京湾のあなご筒漁業も本格的なシ-ズンを迎えようとしています。私たちの予測では今年の東京湾の漁獲見通しはあまりよくないので、ちょっと心配です。これまで何回かマアナゴについて書いてきましたし、去年横浜で開催された豊かな海づくり大会に参加して「あなご学への招待」というタイトルでお話もしました。ここでは、繰り返しになるかもしれませんが、「あなご学うんちく」と題して、いくつか書いてみたいと思います。

 さて、このマアナゴ、分類学的には、ウナギ目アナゴ科クロアナゴ属で、英名はwhite-spotted-conger、中国名は星鰻、どちらも体の側面にならんだ白い点からついた名前であると考えられます。日本でもホシアナゴと呼ぶ地方がありますし、この白い点の列がさおばかりの目盛(実物を見たことがあったり、使ったことがある方はかなりのお年とおみうけしますが)を連想させるために、「はかりめ」とか「はかりのめ」と呼ぶ地方もあります。日本では、マアナゴに分類的に近い種として、クロアナゴ、ダイナンアナゴが分布していますが、これらには白い点がないので、区別することは簡単です。

 マアナゴは少なくとも江戸時代から東京湾で漁獲されていたことは間違いありません。江戸時代には幕府に魚介類を納める御菜8ケ浦と呼ばれた漁業地区(本芝、芝金杉、品川、御林浦、羽田、生麦、新宿、神奈川)がありましたが、このうち品川浦の1824年の記録に、漁獲物としてシバエビ、シラウオなどにならんでアナゴが記録されています。江戸時代にどんな食べ方をしていたかはよくわかりませんが、よく食べられるようになったのは、江戸前寿司やテンプラが一般的になった1800年代からではないか、と想像しています。元禄10年(1697年)に人見必大という人が書いた本朝食鑑という、食用・薬用になる植物・動物についての本があり、その中の鱗介部という分類で魚介類について記載しているのですが、ここにはアナゴは載せられていない、というのが私の想像の乏しい根拠です。姿形がよく似ているウナギがなんと万葉集に登場することと比べると、アナゴの歴史は短いようです。ただし、ウナギの代用品としてアナゴが使われることがあったとすると、ちょっと事情は変わってきますが。ちなみに、ウナギの蒲焼という言葉は室町時代には使われていたようです。

 マアナゴはなんといっても寿司、テンプラが一般的な食べ方だと思いますが、八幡巻き(アナゴを煮て、煮汁でゴボウを煮て、煮たアナゴをゴボウに巻きつけ、煮含める)もおいしいですし、おつゆの身にして卵でとじるのもいいですし、最近では刺身を提供するお店もあるようです。私が食べた刺身は、薄造りにしてフグのように綺麗に大皿に盛り付けたものでした。広島県宮島のアナゴ料理店のご主人に教えていただいた一番の食べ方は、白焼きにして熱いうちにワサビ醤油で食べる、というもので、これはお薦めです。


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○2006年春、東京湾の干潟にカレイ湧く
                    (栽培技術部 工藤孝浩)

 潮が引いたくるぶし程の浅瀬を歩くと、足元から10円玉のようなイシガレイの稚魚が飛び出し、タモ網を手当たり次第にひくと1網で何尾も採れました。

 これは1984年春、大学の卒業研究で魚採りをしていた時の、横浜の野島海岸と海の公園での忘れられない光景でした。埋立地に囲まれながらも奇跡的に残った小さな浜には、春になるとイシガレイの稚魚が大挙接岸していたのです。それは、都会の海になおも息づく生命の息吹きを強く感じる出来事でした。おそらく、人間が東京湾を蝕むはるか昔から連綿と続いた春の営みだったのでしょう。

 ところが1980年代後半にイシガレイの稚魚は忽然と姿を消しました。「この春こそは」の期待を込めて干潟に繰り出すも、空振りが10数年も続きました。

 確かに東京湾のイシガレイ資源はこの30年間で激減しました。しかし、湾奥の三番瀬などでは毎春大量のイシガレイの稚魚がみられていたので、野島・海の公園がイシガレイの育成場として利用されなくなったと考えざるを得ませんでした。

  カレイが消えたこの20年間には、八景島や金沢漁港ができ、アオサの激増とアマモの激減が起きました。どれがカレイに嫌われたのか?あるいは、我々には感知し得ない他の要因があったのか?皆目見当がつきませんでした。

  イシガレイとの再会をあきらめかけていた2000年春、本当に久しぶりに野島海岸で7尾の稚魚が採れました。しかし、翌年以降はアマモ場の調査や造成作業で以前にも増して頻繁に潜るようになったにも関わらず、再びカレイを見ることはありませんでした。

  そして今年3月、野島と海の公園で潜水中におびただしいカレイの稚魚が目撃されました。2000年と同じやり方で網をひいたところ、何とイシガレイ56尾とマコガレイ3尾が採れました。1度にこんなに多くのカレイが採れたのは22年ぶりです。

  この春は、横浜港奥、多摩川河口、お台場海浜公園と各地からカレイ稚魚目撃の情報が寄せられています。これらが上手く生き延びてくれれば、久々の卓越年級群となるでしょう。これを契機に、長期低迷のイシガレイ資源が持ち直すのではないかと期待せずにはいられません。


写真 3月31日に野島海岸で採取されたカレイの稚魚
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f450011/p582867.html
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[編集後記]

  散歩に出たくなるような気持ちの良い日が増えてきました。
  そんな気持ちの良い日にはちょっと足を伸ばして海辺にお出かけになってはいかがでしょうか。
  磯場で自分の目と手で実際に生物を観察してみると、いろいろと発見があり楽しいものです。
  また、潮風を受けながら食べるお弁当は格別の味がするはずです。

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