神奈川県水産技術センター メルマガ174

掲載日:2014年2月13日

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/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン  VOL.174 2006-12-15
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□研究員コラム
○魚食普及の鍵は街の魚屋さん     (企画経営部 中村 良成)
○仏様の恩返し           (資源環境部 仲手川 恒)
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○魚食普及の鍵は街の魚屋さん
                    (企画経営部 中村 良成)

 当水産技術センターのホームページの名物連載「市場を歩く」で、この夏から主に三崎沿岸魚市場に揚がる魚を紹介していますが、市場に行ってまず目に付くのはやはり赤い魚です。これまでもアカムツ、アカイサキ、カナガシラ、ホウライヒメジ、ハシキンメ(添付写真参照)などを紹介しましたが、先日ふと気が付きました。「この魚達は全部、昔に近所の魚屋で見ているなあ・・・」私は大学に入るまで東京都調布市で産まれ育ちました。東京といっても、私が子供の頃はまだまだ「多摩の田舎」でした。

さて、昭和50年、私が中学3年生の時のある土曜日の午後、調布駅に程近い街の魚屋さんは夕食の材料を買う主婦でなかなかの賑わいでした、当事からお魚ウオッチャーで街の魚屋さんを冷やかすのが大好きだった私も主婦に混じって覗いてみると、ホウライヒメジの特売中でした。主婦が「あら、きれいなお魚、どうやって食べるの?」と店員さんに聴いては次々とホウライヒメジを買い求めていきます。私も「おじさん、このお魚なに?」と聞くと「ベラだよ」(おいおい、ベラはねーだろ)、早速私もお小遣いで4尾購入し、母に煮魚にしてもらい夕餉の食卓をにぎわしました。

また別の日、銭湯の帰りに店じまい中の魚屋さんを覗くと赤紫色のいかつい顔をした魚がいます。「これがハシキンメか!」初めて見る現物のハシキンメにしばし釘付け。魚屋さんに聞くと「キンメダイだよ」(おいおい、ま、いいか。)銭湯のお釣りは2尾のハシキンメに化けました。これまた母に煮付けにしてもらったら美味しかったですねえ、ざらざらした皮に無骨な顔という外見に似つかわず、上品な味と身離れの良い肉は目から鱗ものでした。あの時のハシキンメの美味しさは30年近く経った今でも忘れません。

また、カナガシラとホウボウは外見は良く似ているが、さわってみれば違いがはっきり分かること(カナガシラはザラザラ)、アカイサキはオスとメスで色が異なること、アカムツは口の中が黒いこと、子供の時に読んだ図鑑で知ったこれらの事実を確認できたのは、すべて近所の街の魚屋さんでした。そしてこれは全部別々の店での出来事。つまり、一昔前まではこんな魚がごく普通に内陸部の街の魚屋さんにも並んでいたわけです。そして、主婦は初めて見るようなお魚であっても調理方法をお店の人に聞きながらそれを買い求めるのが日常のことでした。

今日、そんな魚をスーパーの鮮魚売場に並べても果たして主婦は買うでしょうか? まず間違いなく買わないでしょうね、その隣にある輸入物のサケの切身かマグロの刺身、鮮魚としても精々サバかサンマを買うのが関の山でしょう。それこそ、ごく少数の魚好きのお父さんが目ざとく見つけて買い求めるくらいで、ほとんどは売れ残るだけでしょう。大規模店舗の効率化のみを優先させた、大量少品種という今日の流通形態は多くの消費者から魚を選ぶ楽しみ(それどころか魚を選ぶという行為そのもの)を奪ってしまったと言っても決して言い過ぎではないでしょう。

もとより、そんな「街の魚屋さん」自体がいまや貴重な存在です。神奈川県だけでも「街の魚屋さん」は昭和51年の2,681店が平成16年には1,189店と44%に激減しています。私が前述の5種の赤い魚に出会った調布市内の5件の魚屋さんも今は全て廃業しています。仕事柄、魚食普及の一環として、生協の主婦などに神奈川の魚の話をする機会がありますが、その後の質疑で「確かに相模湾からはいろいろなお魚がとれ、それらが健康にいいのは良く分かるのですが、買いたくても買えません。どこで買っていいのかすらわかりません。」という意見をよく聞きます。魚食普及には、まず、県民の皆さんが地魚を入手できる「場」を作ることこそが課題と痛感させられます。

 しかし、今日まで生き残った街の魚屋さんには「何とか魚の素晴らしさをお客さんに伝えたい」という店主さんの熱意が伝わる店が決して少なくありません。実際に、魚市場で(魚屋さんにとっては大事な売り物である)魚を測っていても、煙たがる人はほとんどいません。むしろ、こちらが水産試験場(我々にはどうしてもこの言葉が一番しっくり来ます)の研究員と分かると質問攻めにしてくる方もおられます。こんなやる気のある街の魚屋さんに対して、我々も何とか少しでもお力になりたいものです。実際に、統計データやアンケートの結果を分析すると、街の魚屋さんをよく使う人や地域ほど魚をよく食べる、よく買うという傾向がはっきり出ています。

 魚食普及、地産地消の推進・・・・言うは易しですがその実行性となるとこれは難しい問題です。まさか神奈川県民880万人全員にお話をするわけにはいきません。街の魚屋さんを「魚食普及の情報発信基地」と位置づけ、「とにかく街の魚屋さんに行けば地魚情報が手に入る。神奈川県にはそんな情報基地が1000箇所以上もある。」こんな神奈川県の将来像を決して夢物語と思わず、その実現に向けての模索が続きます。「魚を獲る人・売る人・食べる人」神奈川県というグラウンドに三位一体の強力スクラムが形成される日はきっと来るでしょう。


写真はこちらから
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f450011/p755123.html
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○仏様の恩返し 
                   (資源環境部 仲手川 恒)

 浜で漁師と話す機会がある。先日はこんなことを聞いた。海にはいろいろなものが落ちている。ビニール袋や空缶などはもちろん、自転車等の粗大ゴミが網に入って上がってくることもあるらしい。陸から川、海へと繋がっているので海が全てを受け止めてしまうのか。身の回りの自然をもっと大切にしたいものだ。

 そんな中で、もうひとつ大きなものがある。それは仏様だ。この漁師は今年2回あったそうだ。船を走らせていると大きいものが浮いている。そのまま走り去ってしまえばよいのかもしれないが、正義感もあってか、何とか船に引き揚げる。これがとても重いらしい。寝た赤子が突然重くなるのと同じであろう。

 やっとの思いで港まで運ぶと、その後は厳しい事情聴取を受ける。まるで犯人扱いだ。第一発見者だから仕方がないのか。ご親族には感謝されるが。他にも海難事故等に対する漁業者の持つ役割は大きいと感じる。

 そして、仏様を大事にする理由がもうひとつあるようだ。魚が獲れなくて困っているとき、仏様と出会った場所に行くと大漁に見舞われるらしい。仏様が恩返しをしてくれるのだ。漁師はそう話していた。


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