神奈川県水産技術センター メルマガ181

掲載日:2014年2月7日

神奈川県水産技術センターメルマガ VOL.181 2007-2-2

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/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン  VOL.181 2007-2-2
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□研究員コラム

○横浜のタチアマモに希望を見た  (栽培技術部 工藤孝浩)

○あなご学うんちく(4)   (資源環境部 清水 詢道)

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○横浜のタチアマモに希望を見た  (栽培技術部 工藤孝浩)

 「海のゆりかご」であるアマモは、花を咲かせ種子で増える海産種子植物(以下、海草(うみくさ)と呼びます)です。現在地球上には、23万種のもの種子植物が存在するとされていますが、うち海草はわずか56種類だけです。ただし、この数字は2000年時点のもので、ウミヒルモ類の分類学的再検討が進められている現在、5種類ほどが増える見込みですが、いずれにしろ、マイナーグループであることには違いありません。以下、2000年時点の分類体系にもとづき話を進めます。

 日本には16種の海草が分布し、これはオーストラリアに次ぐ多様性の高さです。神奈川県の狭い海にも5種の海草がみられ、これは9種を産する沖縄県を除けば、全国屈指といえます。 本県産の5種のうち、テープ状の細長い葉をもち、砂泥地に生えるものは、アマモ、コアマモ、タチアマモの3種です。県内最大の海草藻場がある小田和湾では、これらが水深ごとにすみ分けている様子が観察できます。すなわち、草丈が25cmほどしかないコアマモが干潟面から水深1mまでに、草丈1.5mほどのアマモが水深1-4mに、草丈5mを超えるタチアマモが水深3-7mに生育します。

 これら3種から成る多階層の群落は、植生が幅広い水深帯に広がり、様々な動物が暮らせる多様な微細環境ができる理想的な藻場です。しかし、県内では小田和湾から知られるのみで、よほど良い環境が整わないと成立しないと考えられていました。生態の解明が遅れている海草の中で、造成技術が確立しているのはアマモだけ。人の手で多階層の群落を造ることは不可能なのです。

 一方、横浜市金沢区の野島海岸では、2001年以来アマモ場の再生事業が着々と進められ、今では造成区域の外にも自然にアマモが生えて藻場が広がるようになりました。すると驚いたことに、以前からアマモ群落の岸側に細々と生えていたコアマモが息を吹き返したように増え始めました。2003年以降の事です。

 さらに2005年6月、アマモ群落の沖側で数株のタチアマモが発見されました。東京湾のタチアマモの北限は、本県側は観音崎、千葉県側は富津岬なので、横浜市沿岸からは初記録となり、東京湾の北限記録をも更新する貴重な発見でした。

       野島海岸で観察したタチアマモの写真 ↓
 http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f450011/p582796.html

 アマモとコアマモが北半球に広く分布するコスモポリタンなのに対し、タチアマモは分布が日本周辺に限られる極東固有種で、2000年には環境庁レッドデータブックで絶滅危惧2類(VU)に指定されました。また、世界で最も背が高い海草でもあります。これが一時的な出現なのか否か?その後も注意深く観察を続けたところ、タチアマモは種子を実らせて散布し、その1年半後に株数は10倍にも増えました。これで野島海岸に、コアマモ-アマモ-タチアマモという多階層群落が成立する可能性がみえてきました。

 さらに2007年1月、金沢区のベイサイドマリーナに隣接する造成浅場で、北限をさらに更新するタチアマモの群落が発見されました。実は、ここでもアマモ場の再生が進められていますが、「じょれん」を使ったアサリ堀りによって藻場が痛めつけられていたため、2006年4月に神奈川海区漁業調整委員会指示によるアマモ場の保護区域が設けられました。保護区域の効果はすぐに現れ、そこかしこに新たなアマモの群落が生じ、大型のアサリも増え始めた中での嬉しい出来事です。

      ベイサイドマリーナで採集されたタチアマモの標本写真 ↓
   http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f450011/p582797.html

 アマモを増やすことにより、その沖側にタチアマモ、岸側にコアマモが増えて多階層の群落が形成される・・・。そんな夢のようなシナリオが、横浜の海で今、現実のものになろうとしています。

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〇あなご学うんちく(4)   (資源環境部 清水 詢道)

 東京湾ではマアナゴの90%はあなご筒漁業によって漁獲されています。あなご筒は、直径10cm、長さ80cmの塩化ビニ-ルパイプの両側にプラスチック板で作った円錐形のロ-トを付けたものが基本の形です。ロ-トには切れ目がはいっていて、アナゴはそこから筒の中に入れますが、外にでることはできないようになっています。

 この筒を船によっては400本以上、細いロ-プ(枝縄)によってメインロ-プ(幹縄)につないで海中に入れていきます。筒と筒の間は約30mですから、400本入れると、幹縄の長さは12kmになります。筒の中には冷凍イワシを主とした餌を入れて、おそらく匂いでマアナゴを誘い込み、中に入ってしまうと出られない、ちょうどネズミ捕りと同じ仕組みですね。ネズミ捕りを英語では rat trapといいますが、あなご筒は tube trap 、どちらも trap (わな)なのです。

 筒を入れるのは普通は夕方、あげるのは次の日の早朝です。ラインホ-ラ-で幹縄を巻き取り、筒をあげて中のマアナゴを船の魚倉に入れ、筒は次回に備えて順序良く棚に並べていきます。

 さて、とれたマアナゴは餌のイワシを腹いっぱい食べているので、そのまますぐに出荷することはできません。港の近くの専用活場で網袋に入れて一晩、腹の中のイワシを吐き出させてから出荷します。10年ほど前に東京湾にサバフグが大量に回遊したことがありましたが、このサバフグがマアナゴが吐き出したイワシを食べるために活場に集まってしまい、マアナゴを入れた網袋をかじって穴をあけ、中のマアナゴが逃げてしまうという出来事がありました。

 漁師さんにとっては、せっかく漁獲したマアナゴが逃げてしまった損害と、網袋のかわりにかじられても大丈夫なプラスチックコンテナを購入しなければならない経費増など、頭の痛い状態でした。その年からあとにはサバフグの来遊はみられないので被害もないのですが、あの時購入したプラスチックコンテナは今どうなっているのかな?

 一晩活場でイワシを吐き出させて、次の朝はいよいよ出荷です。活場から網袋のまま、海水を入れた風呂桶に入れて、リアカ-で引っ張って出荷場に運びます。出荷場では専用の選別台に乗せて大きさをそろえます。選別台は縦2m、横1m、深さ30cmの木箱を斜めに置いたもので、底には直径1cmの塩化ビニ-ルパイプが1cm間隔で並んでいます。台の上でバタバタしているうちに小さいマアナゴはパイプの隙間から下に落ちる仕組みで、台の上に残ったマアナゴが出荷できる大きさです。基準になる大きさは、頭から尻尾の先までの長さ(全長といいます)にして35-36cm以上ということになっています。

 大きさがそろったら活魚運搬車にのせて築地魚市場へ出発。ここ10年ほどの築地での活マアナゴの単価は、1200-1400円と安定していますが、漁師さんの側から考えると燃油代や餌代といった経費が増加しているので、少しでも高値で取引されることが期待されます。

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[編集後記]

 つい先日「初日の出」を拝んだと思ったらもう2月です。忙しいからか、歳の所為か分かりませんが、2月は「光陰矢の如し」をしみじみと感じる月です。

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