神奈川県水産技術センター メルマガ217

掲載日:2014年2月3日

神奈川県水産技術センターメルマガ VOL.217 2007-10-12

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/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン  VOL.217 2007-10-12
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□研究員コラム

○大群を成して押し寄せた「クロマグロ」  (栽培技術部  沼田 武)

○沿岸域の多様な生態系に根ざした沿岸漁業の存続(その2)  (栽培技術部  一色 竜也)

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○大群を成して押し寄せた「クロマグロ」

 相模の海には多種多様な魚介類が生息し、これら海の恵みによって多彩な漁業が営まれているとともに、多くの人たちが四季を通じて遊漁を楽しんでいる。

 今年も、黒潮に乗って来遊するメジやキメジ(クロマグロ、キハダマグロの若魚)、戻りカツオなど青物狙いの漁船や遊漁船が、お盆過ぎから相模湾の沖合いへと出船している。

 どういう加減かは分からないが、今年は当歳生まれのヨコワ(クロマグロの幼魚で輪のような淡い横縞があり体長25-30cm、体重0.3-0.7kg)も、8月過ぎから大群を成して沿岸域にまで押し寄せ、ワカシ・イナダ狙いの遊漁船がこれをメーンターゲットとすることも多かったようであり、10月を過ぎた現在もまだ釣れ続いている。

 当方も、今夏にボートでのマダイ、サバ釣りの外道としてヨコワを何匹か釣り上げたが、地先の釣行でお目にかかったのは40年来の釣歴で初めてのことである。家に持ち帰って捌き、さて味見をしようかという段になって青森県・大間産が1本2千万円などと思い、生まれたてを食うのは如何なものかという気分に陥った。

 太平洋のクロマグロは、5-7月に南西諸島からフィリピン東方の海域で産卵する。孵化した仔魚は黒潮に乗って北上し、相模湾にたどり着く8月にはヨコワになるほどの成長の良い魚であり、十数年で体長3m、体重400kgにまで達する。

 しかし、この魚は乱獲が祟り絶滅危惧種に指定されており、国際的にも資源保護が叫ばれ、諸外国の一部にはクジラ並みに禁漁をとの声が上がる昨今である。

 このような状況下にあって、日本では完全養殖化やサバにマグロを産ませようなどの試みがなされているが、寿司の功罪はともあれ世界中で賞味されつつあることから、資源水準はさらに悪化するのではと危惧される。  

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○沿岸域の多様な生態系に根ざした沿岸漁業の存続(その2)

 多くの水産資源は生まれた直後、環境の影響を強く受け、その大半が減耗してしまいます。このときどのくらい生残できるかによって、その後の資源量はほぼ決まりますが、その変動は桁が変わるくらい大きいのです。水産資源が大量の卵を産むのは、自分を取り巻く環境変化に対応する自衛策といえます。この初期減耗を人間の手で管理し、資源の安定を図る技術が栽培漁業です。

 栽培漁業の中でも、生残がやや安定的に見込める稚魚の段階まで人工的に育て放流する種苗放流は、減少した資源を添加する効果的な技術として行われてきました。ただし、種苗放流事業は種苗生産にコストがかかり、それに見合うリターンが要求されます。このため、ある程度魚価の高い魚種が対象となり、多獲性魚に適応ができないので、食料生産の安定化技術として一般的ではないと指摘されることがあります。

 しかし、沿岸漁業経営の一部がこの栽培漁業によって安定的に担保され、経営のベースが強固になれば、多種多様な沿岸域の資源がより柔軟に利用でき、食料生産の安定化が図れるといえます。これらいろいろな取り組みによって食料生産の安定が図られているのですが、そもそも多種多様で不安定という性質は生物生産の本質ではないかと感します。

 現代の人間社会は規格化、安定化を高度に発達させたため、全てにそれを要求される社会になっていますが、食料生産は環境という不安定な上に成り立っている生物生産がベースになっています。生物はこの不安定な環境を多種多様な組み合わせを持つ生態系の上に、別の意味での安定化を保って存続していますが、その安定への方向性は、現代社会が求める画一的な安定とは意を異にしているといえます。

 食料生産が生態系の生み出す多種多様な生物生産の特性に沿ったものでない限り、その折り合いをどこかでつけねばならないといえます。しかし、今はその折り合いが生産現場の崩壊という矛盾に満ちた結果に繋がってしまっていると感じます。真に折り合いをつける方法は、生産現場を存続させ、現代の経済システムと共生させるところにあると思われます。地球温暖化の問題と経済成長との折り合いも、いろいろなところで訴えられておりますが、沿岸漁業の存続は、身近な自然環境との共生を意味することに近いのではないでしょうか?

 その答えを得るためにも、自然環境や生物生産、さらに社会に対するより多くの知識や英知が必要であると感じます。(終わり)

  参考;沿岸域の多様な生態系に根ざした沿岸漁業の存続(その1)はメルマガ213号 に掲載しております。

 

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