神奈川県水産技術センター メルマガ290

掲載日:2014年1月23日

神奈川県水産技術センターメルマガ VOL.290 2009-04-03

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/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン  VOL.290 2009-04-03
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□研究員コラム

○景気のいい(?)話  (内水面試験場 山本 裕康)

○性(精)転換? (栽培技術部 長谷川 理)

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○景気のいい(?)話

 前回に引き続き、生物餌料(動物プランクトン)の培養についての話をします。

 内水面試験場で培養している生物餌料は、S型ワムシ(以後、ワムシ)です。(H20.10.31_270号記載)生物餌料は、大量培養が簡単にできることと保存ができることが求められます。このワムシは培養環境が良好なときは単性生殖(メスだけで増える)で爆発的に増殖ができ、環境が悪化すると両性生殖(オスとメスの交尾で受精卵を産卵)を行い、厚い卵膜に包まれた休眠卵とか耐久卵と呼ばれる受精卵を産出し、長期間の保存が可能な性質を持っています。

 ワムシの培養時には単性生殖により爆発的に増殖する性質を利用して、仔魚のふ化から数日おき(1週間ぐらい)に倍々で増加する、給餌量に対応できるように培養量を調節していきます。最初はふ化仔魚に必要な給餌量に対してかなり多めに培養します。なぜなら、その後増加していく給餌量に培養量が追いつかなくなるからです。このため最終的な最大給餌量を把握しておくことが必要です。

 具体例を挙げますと、仔魚へのワムシ給餌開始が1日に1千万個体からスタートすると1週間後に1日2千万個体、2週間後に1日4千万個体、3週間後に1日8千万個体、4週間後には1億6千万個体となり、開始時の16倍必要になります。培養担当者としては、長期的に安定供給するためには、供給量の5倍以上をキープし続けなければなりません。

 これは、ワムシの増殖がちょうど銀行の預金と利息の関係と同じで、増えた利息分のワムシを仔魚への給餌に充てているのです。この利率(増殖率)が通常10-30%の間なので、仮に20%とすると、開始時が1千万個体(給餌量)×6倍(20%分はその日に消費されるため)=6千万個体となり、4週間後にはなんと9億6千万個体をキープしないといけない計算になります。

 [利息20%]は金利に置き換えたら、とても景気のいい話ではないでしょうか?しかし、ワムシ培養の世界はこれに止まりません。実はこれを上回る爆発的な増殖を可能にする手法があります。この手法で培養した場合には1日で2-4倍の増殖が見込めます。ただし、ハイリスク・ハイリターン的な手法なので、失敗するとまったくゼロになる可能性もありますけどね(笑)。また、培養手法の詳細については、次の機会に紹介したいと思います。

 商品はきわめて小さいのですが、ワムシの個体数をカウントする度に、1個体1円で売れれば…、そうでなくてもせめて100個体1円で…などと考えています。これが現実となれば、ワムシの培養ももっと楽しく頑張れるのになぁ(笑)。(ちなみに数年前に雑誌でワムシ1億個体で2万円という記事をみたような…。増産時なら余剰分でかなり稼げます。)

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○性(精)転換?

 ヒラメは雌魚の方が成長が優れており、90年代にはすべての種苗を雌化するための研究が、神奈川県をはじめ全国の水産研究機関において、盛んに取り組まれました。この結果、全雌のヒラメ種苗の作出方法が開発され、ヒラメの全雌種苗としてこの技術は実用化されています。

 この作出過程で、雌性発生という操作を受精卵に行います。この原理を簡単に説明しますと、「雌魚の遺伝子だけで、次世代を作る方法」となります。このため、作出される稚魚は、全て雌魚になります。

 この雌性発生を開始するときの精子の役割は、あくまでも「発生開始の刺激」です。そこで、精子の中の遺伝子を予め、紫外線などで破壊しておきます。これにより、精子は受精能力だけが残ります。このため、ヒラメ以外の魚種、例えば、マダイ、クロダイなどの精子を用いても、全雌魚を作ることが出来ます。つまり、ヒラメの未受精卵とマダイ、クロダイといった異なる魚種の精子を交配させる訳です。神奈川県では、ヒラメの雌性発生を行う際、最近はクロダイの精子を使用しています。

 ここからが本題です。実はこのクロダイですが、現在、当技術センターで使用しているクロダイは、当センターにやって来てから8年くらい経過しています。たぶん、漁獲された時は2歳以上であり、今年で少なくとも推定年齢は10歳以上にはなるかと思います。

 クロダイは、性転換する魚として有名です。小さい時は雄魚、4歳魚くらいから雌魚に性転換することが、図鑑などの参考文献で紹介されています。そこで、毎年、今年こそは精子ではなく、卵が採れるのではないだろうかと、期待していたのですが、今年も、放精を確認しました。

 文献によると、「ホルモン等の影響で、すべての個体が性転換するのではない」とのこと。今年も雌性発生の雄としてガンバってもらうことになりそうです。しかし、クロダイが性転換するというはどうして判ったのか? もう少し、調べてみたいと思います。

 写真はこちらから 

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