神奈川県水産技術センター メルマガ309

掲載日:2014年1月23日

神奈川県水産技術センターメルマガ VOL.309 2009-08-21

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/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン  VOL.309 2009-08-21
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□研究員コラム

○「ヒラメのリハビリ」            (栽培技術部 長谷川 理)

○エビ地獄・カニ地獄・・・次は何地獄?     (資源環境部 田島 良博)  

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○「ヒラメのリハビリ」 

  ヒラメは栽培漁業を代表する魚種のひとつです。昨年は、県下の沿岸に合計32万4千尾を放流しています。一方で、放流効果が高まるに従って、放流する魚が健苗であることは言うまでもありませんが、地場産のものが求められる傾向にあります。そこで、神奈川県では、県下の沿岸域で漁獲された天然ヒラメを、親魚に養成し、これらから放流用のヒラメを生産する試験を本年度から開始しました。

 この試験を開始するにあたり、当センターでは、県下の沿岸で漁獲された天然魚の確保を少しずつ始めています。この試験のポイントは、(1)天然魚を当所の飼育環境に馴致させ(如何に飼い慣らすか)、(2)これらを親魚に養成して大量の受精卵を効率的に確保することです。
 先ず初めに、市場に水揚げされたヒラメの中から状態の良さそうなものを親魚候補として選ぶのですが、ヒラメにしてみれば漁獲されたことは、広い大海原で交通事故にあったようなものです。漁獲された直後は、外見的には健康のようであっても、その後に後遺症が発生することが、しばじばあります。時には、この後遺症が致命傷となってしまう場合もありますが、当センターではこれらの怪我魚?に可能な限りの治療を施し、ヒラメのリハビリに孤軍奮闘しています(写真)。

 また、天然のヒラメは食に関してはとても頑固で、漁獲直後は「武士は食わねど高楊枝」と言わんが如く、冷凍魚や配合餌料には見向きもしません。そこで、漁業者の方から、活イワシ(写真)を分けていただき、当初はこれを給餌するとともに、冷凍魚や配合餌料を食べるオトリヒラメを混養して、騙し騙し冷凍魚に慣らしていきます(本年度の経験としては、この餌付けの成否がその後の生残に大きく関係しました)。
 この方法によって、現在まで生残している天然魚は、冷凍魚に対して旺盛な食欲を見せています。本年度は僅かですが、神奈川県の天然魚を親として、稚魚(生粋の神奈川っ子?)を作出することができました。今秋から、再び天然魚を確保して、神奈川県の天然魚による親魚群を更に充実させていく計画です。

 最後に天然魚及び餌の活イワシの確保についてご尽力いただきました漁業者、並びに漁協、市場関係者の皆様に、この場を借りてお礼申し上げますとともに、今後ともご協力をよろしくお願いいたします。

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○エビ地獄・カニ地獄・・・次は何地獄? 

 東京湾の生物相モニタリング調査については、メルマガでも何度か話題にしています(Vol.231Vol.252Vol.291など)が、今回は種類を調べる難しさについてお話します。
 Vol.231では、「最近は顔馴染みが多くなった・・・」などと書いていましたが、最近、種類の同定(名前を調べること)に疑問のある生物がいくつか見つかりました。つまり、名前を間違えているものや、複数の種類をひとつの名前で記録していたものなどです。せっかく長年にわたる記録をとっているのに、データが間違っていたのでは記録の価値も半減してしまいます。そこで、疑問のある種類について再検討をはじめ、確定した種類についてはデータの修正を行っています。
 しかし、過去のデータについては、標本が残っていないこともあり、確認できない部分も多く残っています。それでも、どのような種類が混同されたり誤同定されている可能性があるかはだいぶわかってきたため、記録の価値は保てると思います。

 さて、前置きが長くなりましたが、タイトルの「地獄」の使者達のお話に移りましょう。まずエビの仲間ですが、図鑑の写真や絵を見ていわゆる絵合わせでわかる種類は意外と少ないのが実態です。また、体長数cm程度の小さい種類は、図鑑に出ていない種類も多いのです。さらに、ホルマリン漬けの標本であるため、色は生きているときとはまったく違ってしまいます。
 日本産のエビ類については、「海洋と生物」という雑誌に、林健一氏が1981年から書き続けている「日本産エビ類の分類と生態」という連載があり、小型のエビ類についても、ほとんどが検索可能です。しかし、現在も連載は続いており、まだ完成しておりません。既に30年近い時間をかけた連載であり、すばらしいお仕事をされています。しかし、恐ろしきは、それでも完成を見ないエビ類の底の深さです。このような詳しい資料を頼りに、絵合わせを諦めて部品の特徴で種類を決めていますが、体長1-2cmのエビの部品は、とても肉眼では見えません。部品の特徴というのは、足や触角の形、棘の数や長さなどです。しかも、よく似た種類では、複数の特徴が重複することもあります。また、雄と雌では別の種類かと思うほど形の違うものもいます。

 でも、恐ろしきはエビだけではありません。エビに負けず劣らず難儀なのがカニです。エビのような包括的な詳しい資料はなく、複数の図鑑の絵と解説を頼りに調べていますが、エビよりも個体変異が多いことが、同定を難しくしています。つまり、色彩はもとより、甲羅の凸凹や形まで個体差があります。一目見ただけでは「ほんとに同じ種類?」という例は稀ではありません。エビ、カニだけでなく、魚やイカでも難儀することは少なくありません。好きだからやっていられるけど、でも、結構泥沼な今日この頃です。

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