神奈川県水産技術センター メルマガ337

掲載日:2014年1月21日

神奈川県水産技術センターメルマガ VOL.337 2010-03-12

-- Fish-mag >゜)))< ------------------------
/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン  VOL.337 2010-03-12
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
□研究員コラム

○アマモ場のひき網調査      (栽培技術部 工藤 孝浩)

○ チリ地震と津波      (資源環境部 清水 顕太郎)

----------------------------------------------------------------

○アマモ場のひき網調査   

 本県におけるアマモ場の再生活動は、平成15年からNPO、企業や地域の学校の方々とともに本格的に取り組まれてきました。
 その結果、横浜市南部の野島海岸や海の公園では、移植したアマモにできた種子が周囲に散って芽を出し、平成18年から急速な拡大を遂げました。

 当初はパッチ状だったアマモ場はほぼ連続し、岸と平行な帯状となりました。我々は再生活動に取り組む前に、流れや光などの環境条件を調べてアマモ場の再生適地を割り出したのですが、現在できあがったアマモ場の形は、まさにそれと同じです。実際のアマモ場の広がり具合によって、適地選定調査の確かさが証明されたのです。

 次の段階として、再生されたアマモ場にどんな生き物が戻ってきたのかを調べる必要があります。そこで平成18年から、野島海岸のアマモ場で市民の方々とともに網をひく調査を毎月1回行っています。
 使う網は、幅と深さ2m、高さ1mの袋網に4.5mずつの袖網をつけたもので、背の立つ範囲を徒歩でひきます。 10人前後で力を合わせ50mの距離を3回ひくのですが、 網の目が細かいので水の抵抗でスピードは出ません。調査の常連の顔ぶれは決して若いとは言えず、1回ひいただけでへとへとになってしまいます。
 それでも、「少しでも多くの魚を!変わった魚を!」と気合を入れて最後まで頑張ってくれます。網が揚がると、子供たちも加わって採集物の選別が始まります。遊泳力がある魚などは容易に逃げてしまうので、網に残っているのは小さな生物ばかりです。多くのゴミや海藻をより分けながら、注意深く稚魚や甲殻類などをバケツに採り上げていきます。
 変わった生き物が見つかると歓声が上がり、小型水槽に入れてのミニ観察会に突入したりもします。

 丸4年続けられたこの調査によって、様々なことが分ってきました。まず注目されるのは、生物の多様性が向上したことです。
 魚の種数は、初めの年は48種でしたが、3年目には69種に達しました。そして、生物量も年を追って増加しました。魚の年間の総採集数と総重量は、初めの年に4,700尾と6.6kgでしたが、3年目には約5倍と2倍になりました。
 また、ある魚がある年に限って特異的に多く採れた事などがあり、年ごとの魚の発生状況や、東京湾への外洋水の影響などの環境変動をモニタリングする手段としても有効と思われます。

 そして、最も大きな成果は、年を追って豊かになっていくアマモ場の様子を、現場で多くの市民の方々とともに共有できている事です。
 土曜日の野島海岸で、網を囲んで盛り上がっている集団を見かけたら、是非とも仲間に加わってください。

 実り多きこの調査を、1年でも長く続けていければと思っています。

写真1 日頃の運動不足の解消とばかりに、毎回気合を入れて網をひく大人たち
写真2 網が上がると、興味津々の子供たちも獲物の選別に加わります
写真3 採集された全ての生物は、水産技術センターで詳細な同定と計測がなされます

葉山町漁協でも実地しました。詳しくはこちらをご覧ください。 

----------------------------------------------------------------

○チリ地震と津波

 現地時間2010年2月27日午前、日本時間27日午後にマグニチュード8.6(アメリカ地質調査所の発表ではM8.8)の大地震が南米のチリで発生しました。

 この地震により発生した津波が日本に到達するということで、翌28日に気象庁から「大津波警報」などが発表され、休日の日本列島は大騒ぎとなりました。
 チリの大地震による津波というと50年前のチリ大地震による大津波を思い浮かべた方もいらっしゃると思いますが、私もその一人でした。
  28日午後には岩手県などで1.2mの津波を観測したものの、幸いなことに人的被害が出なかったのは何よりでしたが、各地で浸水や養殖施設が流失するなど被害が出たとの報道があり、神奈川県でも海藻養殖施設が被害を被りました。

 さて、地球を半周して日本列島に到達した津波ですが、東京湾内の横浜でも40cmの津波を観測するなど神奈川県の沿岸でも津波が観測されました。
 当センターでは当センターがある城ヶ島地先海面(三崎瀬戸:城ヶ島と三浦半島の間の水路)の水温・塩分の連続観測を行っていますが、併せて潮位も観測しています。
 この潮位の観測記録に津波と思われる潮位の変動を観測しましたので、今回はこれをご紹介したいと思います。

 グラフは、2010年2月26日から3月1日までの潮位変化を日ごとに表したものです。私は津波の専門家ではありませんし、観測装置も験潮所のような専門の設備ではないので正確なことは言えないのですが、2月28日のグラフ(赤線)を見ると、気象庁が発表した津波の到達予想時刻の14時30分(グラフ中縦の一点鎖線)以降3月1日の0時までにおそらく6-7個の津波(グラフ中丸数字)が三崎瀬戸に到達していたと思われます。
 また、津波の高さは通常の潮位からどのくらい海面が上がったかで表します。通常の潮位がどのくらいになるのか計算していないのでこれまた正確にはわかりませんが、おおよそ30cmほどであったと思われます。

 28日に発表された津波警報は時間の経過とともに徐々に津波注意報などに変更され、3月1日10時頃には注意報・警報は全て解除されましたが、3月1日の潮位の観測記録(緑線)をみると、注意報・警報解除以降も地震発生前の2月26日や27日の潮位変化と比べると明らかにゆらぎがみられ、津波の影響が残っていることが伺えます。
 まさに『太平洋の海水全部が振動した』ということであり、その影響は簡単には消えないということなのでしょう。

 ちなみに、津波の速さは水深と波高で決まり、水深が深いところほど、また波高が高いほど速さは早くなるそうです。外洋(波高に対して水深が十分に大きいので、波高は無視できる)の水深1000mではおおよそ時速360km、太平洋の平均水深である水深4000mでは時速720kmほどになります。
 JALのホームページによれば、ジェット機の巡航速度はだいたい時速850kmほどですから、太平洋を伝播する津波の速さはジェット機より若干遅い程度(それでも猛烈な速さですが)となります。

 また、沿岸域では、仮に水深10mで高さ3mの津波の場合ですと津波の速さは約時速40.6kmとなります。100m走の世界記録の9.58秒を時速に直すと約時速37.6kmですから、津波が来てから走って逃げるのは到底不可能です。
 海岸で地震を感じたときや津波に関する情報が発表されたときは、速やかに高いところに避難し、海岸などには近づかないようにしましょう。また、市町村によっては防災情報(津波、台風情報など)をメールで携帯電話やパソコンに配信するサービスを行っているところがありますので、このサービスを利用するのもよいと思います。
 私も三浦市のサービスを利用させていただいていますが、今回のようなときに携帯電話に情報が入るので特に出かけていてテレビなどから情報が得られないときに重宝しています。

----------------------------------------------------------------

○前号(VOL336号)の訂正                 

 前号(VOL336号)3月5日(金曜日)掲載の「チリ地震による津波」の中の以下の(1)のところについて、記載に誤りがありましたので、(2)のとおり訂正するとともに、お詫び申し上げます。
(1) (訂正前)
『当日の午前9時33分に気象庁から津波に関する警報等の発表があり、「東京湾内湾、相模湾・三浦半島」では、その日の午後2時に津波が到達し、その高さは2メートルになるとの予想でした。』
(2) (訂正後)
  『当日の午前9時33分に気象庁から津波に関する警報等の発表があり、「東京湾内湾、相模湾・三浦半島」では、高いところで津波が2メートル程度との予想でした。』

----------------------------------------------------------------

■水技Cメールマガジン(毎週金曜日発行)
■メルマガの配信の変更、解除、ご意見やお問い合わせはこちらのメルマガお問い合わせフォームからお願いいたします。

発行:神奈川県水産技術センター 企画経営部
住所:〒238-0237 神奈川県三浦市三崎町城ヶ島養老子
電話:046(882)2311

-----------------------------------------------------------------

メルマガTOPへ

神奈川県

このページの所管所属は 水産技術センター です。