神奈川県水産技術センター メルマガ346

掲載日:2014年1月21日

神奈川県水産技術センターメルマガ VOL.346 2010-06-25

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/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン  VOL.346 2010-06-25
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□研究員コラム

○ タカアシガニ    (企画経営部 前川 千尋)

○ 「歯は命」     (栽培技術部 長谷川 理)

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○タカシガニ

 今回は、「漁港の話」は、お休みにして「タカアシガニ」の話をします。私の所属する企画経営部の中で、当センターの展示コーナーに設置してある「タカアシガニ」(写真1)の年齢が話題になりました。タカアシガニは、日本特産種の世界最大のカニとして知られており、当センターの標本も両足を広げた幅が3.2メートル、重さ約35キログラムもありましす。20年以上前にタカアシガニの標識放流を行ったことを思い出しましたので、その時の結果について紹介したいと思います。

 当時、私は、小田原市早川の相模湾支所(現相模湾試験場)に研究員として勤務していました。小田原の漁業者がある日試験場にカアシガニに標識を付けて放流したいとの相談来られ、私が対応しました。タカアシガニは、当時市場価格で一杯五千円以上しており、せっかく漁獲した高価なカニを放流する理由を漁業者の方に尋ねました。そうすると、小田原の市場に水揚げしても、直ぐに値崩れするので今までも沢山タカアシガニが獲れたときは、海に帰していた。ただ帰すのは、もったいないので標識付けて海に帰したいとのことでした。

 魚と違いエビやカニなどの甲殻類は、成長するために脱皮をするので、甲羅に標識を付けても脱ぎ捨てられる甲羅を一緒に標識も脱落します。文献を調べてみると、脱落しにくい標識の装着方法もあるようでしたが、漁労作業の合間に迅速に標識を付けて放流するのは難しいと考え、プラスチック製のプレートを、タカアシガニの甲羅の後縁部に千枚通しで穴を開け、ナイロンのテグスで縛り付けることにしました。このような方法で、300尾以上に標識を付けて放流しました。

 このような方法では、長期間の追跡調査は出来ませんので、標識を付けたタカアシガニは、放流場所周辺の小田原近辺でしか漁獲されないだろうと思っていました。ところが、標識放流をしてから2箇月後には、駿河湾の戸田沖から標識を付けたタカアシガニが漁獲されたとの報告がありしました。僅か2箇月間で相模湾から伊豆半島を一回りして駿河湾まで移動したスピード、距離にビックリしました。さらに、標識放流から9箇月後には、三重県の尾鷲に標識を着けたタカアシガニが水揚げされという報告がありました。放流場所の付近で再び漁獲されたものもありましたが、駿河湾からの報告が多数寄せられました。 海底を歩いて移動するタカアシガニが、これほどの長距離を短期間でしかも西に移動することを初めて確認することが出来ました。

 一杯数千円もするカニに標識を付けて300尾以上も放流することは、試験場の研究予算で行うことは、とても出来ませんので、漁業者の方の自主的取組があって初めて出来た調査だと思います。このような調査が出来たことに漁業者に方に感謝しています。

 最後に当センターに展示してあるタカアシガニの年齢は、よく分からないというのが結論です。甲殻類は、先に書きましたように脱皮しますので、魚類の鱗の年輪のような年齢を推定する手かがりがありませんので、なかなか年齢が分からないというのが実態です。見学者の方からはよく出る質問なので、説明担当者は、よくわかないが多分30年位ではないかと説明しています。

 

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○「歯は命」

 ヒラメの栽培漁業が開始された当初は、多くの稚魚を効率的に安価で生産するための技術開発に主眼を置いた研究が行われてきました。その結果、神奈川県では、15万尾以上のヒラメの稚魚を安定的に生産する技術を確立しました。

 一方、近頃はコストや種苗生産数だけでなく、遺伝的多様性に配慮した種苗が求められるようになってきました。この遺伝的多様性への配慮とは、ヒラメの栽培漁業の場合では、差しあたり「地先の親魚を使用し、遺伝的にバラエティーのある種苗を生産して、地先に放流する」というような事になるのでしょうか。

 そこで、当技術センターでは、以前にも「VOL309 ヒラメのリハビリ」でもご紹介したように、放流種苗の遺伝的多様性を確保するために、相模湾と東京湾で漁獲された天然ヒラメの親魚への養成飼育試験に取り組んでいます。これまでも、優れたヒラメを開発するために、ヒラメの育種に取り組み、耐病性や成長性などの形質が優れた経済効率の高いヒラメを作出し、継代飼育してきましたが、天然魚の性質はこれらの継代魚とは似て非なる感があります。

 天然魚を飼育した感想ですが、体型、体色、性格は千差万別で、従来の継代魚と比較すると、とても飼育が難しい感じです。読者の方のなかには、同じヒラメでそんなに違うものかと思われる方もいらっしゃると思いますが、例えば、一例を挙げると写真2、3のように歯の状態は天然と継代で歯がこんなにも違うものかと思うほど異なっています。継代魚は、毎日、時間になれば、何の苦もなく餌にあり付くことができます。一方、腕の良いハンターと成らなければ、厳しい自然界をいき抜くことがことができない天然魚にとって、歯の鋭さは死活問題です。この歯の相違については先天的なものか、後天的なものか、現段階では不明ですが、今後も、遺伝的多様性に配慮しながら、少しでも天然魚に近い良質な種苗を放流できるように、技術開発に取り組んでいきたいと思っております。

 

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