神奈川県水産技術センター メルマガ351

掲載日:2014年1月21日

神奈川県水産技術センターメルマガ VOL.351 2010-09-03

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/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン  VOL.351 2010-09-03
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□研究員コラム

○ 「焼くと無くなる魚とは?!」    (企画経営部 臼井一茂)

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○「焼くと無くなる魚とは?!」

 先日、漁獲調査のために炎天下の中出ていった研究員から、面白い魚を一匹頂いたところからこの話は始まります。

 8月になっても容赦ない日差しとうだるような気温の中、大きなクーラーボックスにたっぷりの氷を用意して、ごつい釣り道具を持って勇んで出陣する研究員、乗っていったトラックはアスファルトの上で小さくなり、ゆらゆらと陽炎の中に消えてきました。とうてい私には耐えられないミッションですが、真っ黒になりつつも頑張って、そして、できれば実験に使いたいソウダカツオやシイラを混獲してきてと祈って見送りました。

 お昼も過ぎて、西日が差し込み始めた頃、ガラス器具等の洗い物をしていたところに、大きなクーラーを積載したトラックと研究員が無事に帰ってきました。更に真っ黒になった研究員が、あのクーラーボックスを両腕の上腕二頭筋の筋力を誇示するように、腰をきしませながらリフティングして加工の実験室に持ってきました。

 その重そうな感じからは大漁かなと思ったところ、寄港の連絡を受けていた他の研究員も駆けつけ、「一匹しか持って来れなかったって、さぞデカイんだろう-」、と勢いよく声をかけていました。ということは、ソウダガツオは該当せず、シイラの可能性も少ないなぁーとひとり気が抜けてしまったところ、真っ黒になった研究員が慎重にクーラーボックスの3つの留め金をはずして、ゆっくりと蓋を開けたのです。 みんなで「おおっ-↑」と歓喜の声を揚げ始めてから「○っ↓」と声のトーンが下がり、部屋も冷えたようになってしまったところで、小さな小さな真っ黒の魚を持って、「ミズウオのみです。すみません!!」と。

 この魚はまぐろ延縄漁業で混獲されることは知っていたのですが、実際に見るとダツのような尖った牙をもつ大きな口と、バショウカジキをも上回る大きな帆のような背びれで、とにかく真っ黒なのが印象的でした。

 ミズウオは、ヒメ目ミズウオ科に属する硬骨魚類であり、北海道以南から北太平洋、インド洋、大西洋、地中海と世界中の大部分の水域に分布し、長も大きくなると3mにも達します。また、水深900-1,500mという光の届かない深海に生息していますが、銀色の光沢の肌にはウロコが無く、深海魚によく見られる発光器はもっていないのです。

 この魚の特徴としてはとても貪欲な肉食性で、口に入るものは何でも手当り次第丸呑みすることなのです。特に世界中に分布しているこの魚は、その胃内容物から様々なものが見つかっており、プラスチックゴミなども見つかる(環境的に問題ですよね)ことが多いようで、そしてイカの権威として有名な奥谷先生らも報告していますが、深海性の新たなイカやタコを丸飲みしているため、実に理にかなった採取道具として活用されています。このミズウオからも数センチ程の大きさのイカなどが、形もそのままで大量に出てきましたよ。

 さてさて、私としては、名前の由来となっている、焼いたりすると身が無くなってしまうということなので、干物にはできなくとも、つけ塩にしてから焦げない温度の230℃ほどでオーブンで焼いてみました。結果はバッチリでしたが何せ魚体が小さく、内臓を取ったら針のようなサヨリと見間違うほどのスマートな状態でした。ではではと早速中骨から身をはずして頂くと、ほんのり甘みとコクを感じる、口の中でふっと消えていく、まるでムツの煮付けの腹の中の脂のような、トロトロに煮込まれた背脂のような、独特の快感を覚えるものでした。これは、脂ではなくシラスのように脆弱な状態の、そう、ズワイガニの生の刺身の様な柔らかいタンパク質の塊でした。以前にもボウズコンニャクアジとか、シロゲンゲ、キャビアの代用品にも使われるランプフィッシュやホテイウオにも、こんな食感と味わいがあったと思います。ただし、ミズウオは煮たりしたら完全に無くなってしまいそうですよ。

 無くなると言えば、マグロやカジキを使った漬け魚、つまり味噌漬けや粕漬けなどですが、一般消費者の方からこんな問い合わせがあります。「焼いてたら無くなっちゃった」というのです。たとえば脂身の多いお肉なら、焼いているうちに溶けて網から落ちてしまうなど、想像できますよね。でも、シーチキンを見ても分かるように、しっかりとした身を持った魚です。どうやっても溶けて無くなるとは想像できませんよね。でも、あるのです。粘液胞子虫という顕微鏡で確認する大きさの微生物が筋肉内で増殖し、それらがもたらす酵素によって魚肉タンパク質の分解が進み、ジェリーミートといわれる柔らかい状態になっていると、焼くと無くなってしまうのです。特に輸入冷凍白身のメルルーサやカレイ類などでよく見られますが、たまにマグロやカジキでも溶けてしまうことが発生します。やっぱり自然の生き物ですから、魚の体調や風邪みたいに病気になって弱った筋肉もあるんですね。

 これらについて関心のある方は、築地にあるおさかな普及センター資料館のおさかなQ&A、東京都保健福祉局の食品衛生の窓にある食品の寄生虫予防メモ(知って安心-トピックス-内) 農林水産消費安全技術センターの食のQ&A(63号 カレイミリン漬けについて)などのHPに詳しく記載されていますのでご確認ください。

 さて、真っ黒に焼けた研究員、今度こそ?漁獲調査での成果を!!そして、また面白い魚を釣ってきてくださいね。加工して食べてみますからね。

(写真)ミズウオの調理前・調理後

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