神奈川県水産技術センター メルマガ356

掲載日:2014年1月21日

神奈川県水産技術センターメルマガ VOL.356 2010-11-12

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/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン  VOL.356 2010-11-12
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□研究員コラム

○ 相模湾に流れ込んだゴミや流木    (相模湾試験場 石戸谷 博範)

○ 2010年の猛暑と相模湾の海水温    (資源環境部 清水 顕太郎)

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○相模湾に流れ込んだゴミや流木

 去る2010(平成22)年9 月8 日に、台風9 号及び停滞前線の活動により、神奈川県、静岡県境付近を中心に豪雨が発生しました。雨量は、日雨量495mm、最大時間雨量70.5 mmに達し、いずれも1976 年の観測開始以来最高値を記録しました。

 この大雨により、酒匂川が大増水し、山崩れによって根こそぎ流れ出した樹木や境界を示す杭、河川敷のごみやベンチ、雑草、樹木が一挙に相模湾に流れ込みました。漁業者の皆さんは、ほぼ1週間、その回収に危険な重労働を余儀なくされました(写真1)。日頃から、河川敷には、大雑草原(写真2)が広がり、「増水した時には、これらの物が海に流れ出すのでは?」と言う流域の皆さんの心配が現実の事となってしまいました。

 相模湾は、箱根、丹沢、大山や各都市部に降った雨を、河川を通じて、全て受け入れています。畠山重篤さん(気仙沼の牡蠣漁師さん)の言葉「森は海の恋人」にありますように、海は森から豊かな養分をいただき、海は様々な産物(おさかなや海藻)、温暖な気候や降雨を山や都市に届けています。絶える事のない循環系がここにあります。

 集中豪雨は、川だけでなく、海や漁業の方にも大きな影響を与えます。 増水した濁流の中には、たくさんの土砂とともに流木、草木類、そして大小様々なゴミが河口から海に流れ出て広がります。

 川は循環を繋ぐ血管の役割を果たしています。日頃の血流が少なくなり、血管内壁に色々な物が溜まると、人間ならば成人病になってしまいます。

 今回の相模湾に流れ出したゴミや流木は、その事を我々に警告しているように思えます。

 

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○2010年の猛暑と相模湾の海水温

 今年の夏は暑かったですね。気象庁の発表によれば、気象庁の観測開始以来113年間で最も暑い夏だったということでした。同じく、気象庁によれば日本周辺海域の8月の海面水温も現在の観測方法をとった1985年以降最も高くなり、月平均海面水温の平年差は1.2℃高くなったとなったということでした。

 このような状況からでしょうか、当センターにマスコミから「○○(魚の名前)が今年は相模湾で(または日本近海で)不漁だそうですが、これは地球温暖化による今年の猛暑で海水温が上昇したためでしょうか」などという問い合わせがいくつかありました。問い合わせをしてくる方には今年の猛暑や高い海面水温が野菜などへの影響と同様に漁業にも影響があるのではないかと感じられたのだと思います。

 私は、海況を担当していますので、「海水温が・・・」という問い合わせがあると対応することになりますが、上のような問い合わせがあった時には「○○が不漁だったからといって、それが高水温のためであるとは限りませんし、そもそも相模湾の水温は平年より高かったですが、気温ほど極端ではなかったようですよ」と回答しています。

 とあるお魚が不漁になる原因は様々なことが考えられます。一般論ですが、例えば、何らかの原因で海の中の魚の量(資源量)がもともと少なかったとか、資源量は多いのだけれども、何らかの原因で相模湾に入って来なかったなどが考えられると思います。また、「何らかの原因」にはその魚の親が生んだ卵の量(産卵量)や孵化した後の生き残りの程度、海水温や塩分、黒潮、風、餌、他海域での漁獲などなど様々なものが考えられますし、実際にはこれらの要素が複雑に関係し合っているのだろうと思います。もちろん「何らかの原因」の1つが「猛暑」である可能性はありますが、不漁の原因を「これ」と断定するのは非常に難しいのが現状ですので、単純に「猛暑だから不漁」とはならないことをご説明しています。

 また、相模湾の今夏(ここでは7-9月)の水温の状況ですが、調査船「江の島丸」により月1回実施している海洋観測によれば、7・8月の海面水温は「平年並み-やや高め」、9月は「やや高め-高め」となりました。また相模湾沿岸のいくつかの地点で観測している水温(定地水温)の月平均水温は三崎・荒崎では7-9月で「高め」、平塚では7・8月は「高め」、9月は「やや高め」、大島では7-9月で「平年並み」でした。定地水温の方が調査船による海洋観測より若干高めの評価になっていますが、海洋観測が月1回であることや、定地水温の方が沿岸よりなので猛暑の影響を受けたことなどが原因ではないかと思われます。

 また、冒頭の「気象庁発表の8月の月平均海面水温の平年差・・・」について気象庁のウエブサイト(臨時診断表のページ)をみると、全般的に水温は平年より高くなっていますが、日本海と東北地方から北海道にかけての太平洋側の海域が特に高水温(平年より+2℃以上)であることがわかります。一方、相模湾はというと平年から+0.5℃どほどであり平年より高いものの、日本海などと比べその程度がずっと低いことや「平年差+1.2℃」というのが実は日本海などの水温が高かったために全体の平均水温が高めになったことがわかります。以上のように、今夏の相模湾の海面水温は平年よりは高かったものの、気温ほど極端ではなかったといえます。

 とはいえ、昨今の気象の異常ともいえる状況を見ていると、今夏の猛暑のような極端な現象がいつ相模湾や東京湾に発生してもおかしくないと思います。そのような状況になった時には、当センターが観測してきた過去の記録があって初めて「どのくらい異常なのか」がわかることになります。そこに地道ではありますが、継続的なモニタリングの重要性があるのだと思います。

 

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