神奈川県水産技術センター メルマガ357

掲載日:2014年1月21日

神奈川県水産技術センターメルマガ VOL.357 2010-11-26

-- Fish-mag >゜)))< ------------------------
/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン  VOL.357 2010-11-26
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
□研究員コラム

○ マダイの囲い網試験    (栽培技術部 工藤 孝浩)

○ 酸素量0<ゼロ>の衝撃    (企画経営部 一色 竜也)

----------------------------------------------------------------

○マダイの囲い網試験

 アマモ場は、「海のゆりかご」とも呼ばれていますが、実際にどれだけの魚を育んでいるのかを数値化した研究はほとんどありません。そこで、天然のアマモ場を網で囲い込み、その中へマダイの稚魚を放して餌をやらずに育て、どれだけ成長したかを調べてみようと考えました。

 なぜマダイかというと、理由は二つあります。一つは、我々の職場の先輩が、三浦半島相模湾側にある小田和湾のアマモ場が、マダイの稚魚の育成場になっていることを明らかにしたこと。もう一つは、職場の隣にある神奈川県栽培漁業協会が、マダイの種苗生産を行っており、稚魚が容易に手に入るからです。

 小田和湾で研究が行われたのは1970年代の事ですが、現在は新たな研究手法が使えます。その一つが、炭素と窒素の安定同位体比を用いた「食う-食われる」関係の解析です。魚の体の炭素と窒素の安定同位体の比は、食べる餌によって変化するので、それを調べる事により、どんな餌を食べて育ったのかが推定できるのです。さらに、餌となる生物の同位体比も同時に明らかにすれば、その推定は確たるものになります。

 我が職場では同位体比を調べる事ができないので、中央水産研究所浅海増殖部に協力していただき、去る7月に三浦市小網代湾のアマモ場で囲い網試験を実施しました。現場には4m四方の網を2基設置して、片方はアマモが生えていない対象区としました。

 マダイの稚魚を放して3週間後に、網からマダイを取り上げました。すると、アマモが生えている方の網からは、シロギス、ゴンズイ、アミメハギなどの同居人たちがザクザクと揚がってきました。中には、マダイの捕食が疑われるコチやアナゴの仲間もおり、実際にマダイの数は減っていました。

 狭い網の中でこれだけ多くの魚たちと暮らしていたとなると、マダイの成長ぶりを正しく評価できるのか不安になりましたが、アマモ場の豊かさを改めて実感した出来事でもありました。現在、同位体比は分析中ですが、どんな結果が出るのかが楽しみです。

(写真1)小網代湾のアマモ場に設置された2基の囲い網

(写真2)網の中でマダイと暮らしていた魚の一部

----------------------------------------------------------------

○酸素量0<ゼロ>の衝撃

 東京湾、それも観音崎と洲崎より内側の内湾は特に夏場、貧酸素水塊が発生して海底に生息する生物に大きなダメージを与えることが知られています。本県東京湾の漁業者はこの貧酸素水塊の動きを自ら調べるために、6-10月にかけて月に2回船を出して、湾内10点で溶存酸素調査を行っています。

 私も普及指導員として、この調査に同行し、溶存酸素測定器の操作やデータの記帳のお手伝いを行って参りました。今年の調査を振り返ってみると、最も衝撃的な印象として残っているのは、8月末に川崎沖の調査点で低層の溶存酸素量が0に近い値が記録されたことです。貧酸素水塊については私もある程度知っていましたが、目の前に0に近い測定値が示されると、さすがに最初は何が起こったのか分からなくなり、測定計が故障したのではないかと思いました。

 酸素量0とは、その水塊に取り囲まれたら、まずほとんどの生き物は命がないということです。特に海底であまり移動しないような生き物はほぼ全て死滅してしまうわけですから恐ろしいものです。

 さらに貧酸素水塊が厄介な点は、短期間に分布が大きく変化することです。水産技術センターでは独自に貧酸素調査を行っておりますが、時々時化などで漁業者の調査と1日2日違いで実施することがあります。その双方の結果をみると、その短期間に貧酸素水塊が大幅に拡大していたことがあります。貧酸素水塊の消長は漁場の分布と密接な関係がありますので、適切な漁場選択のためには、貧酸素水塊をモニターする回数をなるべく増やしたいのですが、現場に行って測定器で測らないと溶存酸素のデータを得ることはできません。漁業者が自らの船を出して調査を行っているのも、モニターの機会を多くし、貧酸素水塊の分布を把握し、適切な漁場選択を行いたいとの意向があるからです。

 こうした厳しい状況で美味しい江戸前の魚を安定的に水揚げするために、操業の重要な情報となる溶存酸素調査は、これからも重要性は変わらないといえるでしょう。

 

----------------------------------------------------------------

■水技Cメールマガジン(隔週金曜日発行)
■メルマガの配信の変更、解除、ご意見やお問い合わせはこちらのメルマガお問い合わせフォームからお願いいたします。

発行:神奈川県水産技術センター 企画経営部
住所:〒238-0237 神奈川県三浦市三崎町城ヶ島養老子
電話:046(882)2312

-----------------------------------------------------------------

メルマガTOPへ

神奈川県

このページの所管所属は 水産技術センター です。