神奈川県水産技術センター メルマガ384
神奈川県水産技術センターメルマガ VOL.384 2011-12-9
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/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン VOL.384 2011-12-9
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□研究員コラム
○ アワビのオスとメス (相模湾試験場 山本章太郎)
○ ガンガゼを考える (企画経営部 秋元清治)
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○ アワビのオスとメス (相模湾試験場 山本章太郎)
昨年9月の台風9号の豪雨により、酒匂川から大量の土砂や樹木等が相模湾に流れ込みました。そして、河口から8kmも離れている小田原市江之浦地先の海底では、岩礁の上に泥が多量に堆積しているのが確認され、魚介類や海藻類などに悪影響を及ぼすことが懸念されました。(昨年のメルマガ VOL.363 2011-02-18で紹介)。
特に、アワビとサザエは、漁業者にとって重要な磯根資源であり、これらの再生産が阻害されてしまうのではないかと心配されました。
こうしたことに対応して、今年度、相模湾試験場では「酒匂川漁業対策協議会(漁業者等により構成される協議会)」からの委託を受け、磯根に堆積した大量の泥や砂がアワビの再生産に及ぼす影響について調査をしています。
調査の内容は、アワビの再生産活動に焦点を合わせ、アワビ親貝の成熟の確認(潜水によりアワビの親貝を採捕して生殖腺の成熟度を調べる)、アワビ浮遊幼生の確認(プランクトンネットによるアワビ浮遊幼生の採集、測定を行う)アワビ稚貝の確認(付着基盤の設置によるアワビ着底稚貝の採集、潜水によるアワビ稚貝の採集を行う)を行うこととしています。また、その他にも磯根の海藻類や堆積物の状況も調べる予定です。
(写真1-4)は、採捕したアワビ親貝の生殖腺の成熟度を調べたときの写真です。「A」と記された写真のアワビは「オス」で白っぽい生殖腺が確認されました。「B」のアワビは「メス」で濃緑色の生殖腺が確認されました。みなさんはご存じでしたか?
私は海の中に潜ってアワビやサザエを見つけるのはとても得意なのですが、お恥ずかしいことに、その生態についてはあまり詳しくありませんでした。今回、調査を実施するにあたり、専門の担当者に色々と尋ねたりして、今更ながら勉強をしています。
特に生殖腺についてはオスの白っぽい生殖腺は今までも生殖腺として認識していましたが、メスの濃緑色の生殖腺については、その内側にある消化器官である中腸線と同じような色をしているため、生殖腺とは思っていませんでした。膨らんだメスの濃緑色の生殖腺を見て「このアワビはずいぶんと海藻を食べているな……。」などと思っていました。
これではあまりにも情けないので、「これから、今まで以上にたくさんのアワビを観察?して、もっと勉強?しなければといけないなぁ。」とあらためて思いました。
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○ ガンガゼを考える (企画経営部 秋元清治)
岩礁域で見られるカジメやアラメなどの有用海藻が極端に減って岩肌が露出してしまう磯焼けと呼ばれる現象が全国で見られています。磯焼けの原因としては水温の上昇、透明度の低下などの環境変化のほかに、北の海ではキタムラサキウニ、南の海ではアイゴ、ブダイなどの魚やガンガゼ、ムラサキウニが海藻を食べてしまうために起こると言われています。
本県において15年ぶりに沿岸の海藻の分布について調べたところ、磯焼けは確認されませんでしたが、相模湾の東岸域でカジメ(写真1)が減少している場所が多く見られました。減少の原因は幾つか考えられますが、これらの場所ではムサキウニやガンガゼがかなり増えていることから、これら生物の食害が一因となった可能性が考えられます。
危険生物でもあるガンガゼ(写真2)は一般によく知られていますが、本県の沿岸域においても水深3-15mの岩礁域に多く見られます。ムラサキウニが水深0-5mに多いのに対して、より深い所に生息していますが、その移動範囲は意外に広く、夜間になると海藻を食べに岩の上まで登ってきます。減少が見られたカジメはガンガゼとほぼ同じ水深帯に分布することから、ガンガゼの影響を受けやすいのかも知れません。
いずれにしてもアワビやサザエなどの餌となるカジメを守るためにはガンガゼはできるだけ少なくする方がよいがいいでしょう。本センターではガンガゼの駆除を兼ね、これを採集して有効利用できないか食味試験を行いました。しかし、ガンガゼは卵巣の色が悪く、味も苦みが強いなど、そのままで利用することは難しいという結論となりました。
ガンガゼは現状では駆除するしかない厄介者と言えますが、何とか知恵を出して有効利用ができないかを検討していきたいものです。
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