神奈川県水産技術センター メルマガ392

掲載日:2014年1月18日

神奈川県水産技術センターメルマガ VOL.392 2012-3-30

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/KN/ 神奈川県水産技術センターメールマガジン  VOL.392 2012-3-30
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□研究員コラム

○ 大正関東大震災による定置網の被害 (相模湾試験場 石戸谷博範)

○ 横浜駅から徒歩10分の新たな干潟 (栽培技術部 工藤孝浩)

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○ 大正関東大震災による定置網の被害 (相模湾試験場 石戸谷博範)

神奈川縣水産試験場は1923年(大正12年)9月1日に発生した大正関東地震による水産震災調査報告を翌1924年(大正13年)5月に発行した。その中に当時より本県の重要漁業の一つであった定置網漁業の被害状況の記述が見られるので、その特徴を述べる。

 

「当時免許漁場数は96ヶ所であるが、9月操業は夏網の10統であった。それらは、全て激震のため碇綱を切断され、津波の為網を流出若しくは沈没した。その沈没したものは三、四十日間放置せざるを得ず、網地が腐敗し僅かに綱類若干を回収できたのみ。いずれも多大なる損害を蒙りその漁業を終止せざるを得ない状況となった。」

代表的な被害例は、真鶴漁場では、「夏網2統沈没腐敗(損害25千円=現在価値6億円)、漁場事務所焼失、格納中の鰤網大謀網の網地を津波により流出及び焼失した。」岩・江之浦漁場では、「漁船3艘破壊、網1統流出、津波の為事務所、鰤網倉庫、船揚場破壊、損害多大。」米神漁場では、「夏網1統沈没(損害16千円=現在価値3億円)、漁民は山津波による埋死者の発掘等に従事中にして漁業従業するものなし。」小八幡漁場では、「夏網1統流出(損害13千円=現在価値3億円)、納屋3棟全潰(被害5千円=現在価値1億円)」である。

激震による碇綱の切断は、おそらく碇が固定されていた地盤の崩壊により碇が綱もろともに深部に転落し、大きな張力が作用するとともに、そこに沖からの津波の破壊力が加わった為と考えられる。また、当時の資材は、浮子は孟宗竹を束ねたものであり、地盤の崩落と津波による張力により竹浮子が海中に引き込まれた瞬間に大きな水圧がかかり、竹筒が潰れ浮力を失い、網全体が沈没したものと考えられる。

漁民は漁船の破壊に加えて、山津波による埋没死者の発掘や陸上の復旧作業に追われ、沈没した定置網には、手をかけられず、その間に、網地(綿、麻)が9-10月の海中(水深60mで18℃以上、表面では24℃)で腐敗したと見られる。

先輩が残されたこれらの記述を真摯に受け止め、人命を第一に、被害を最小限に食いとめる対策を早急に立てなければならない。

写真1:岩江鰤網漁場大漁之図 一網6万余尾 (大正5年1月24日)

写真2:孟宗竹を用いた定置網の台浮子(昭和29年)

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○ 横浜駅から徒歩10分の新たな干潟 (栽培技術部 工藤孝浩)

平成23年5月、横浜市西区みなとみらい地区の水辺に「高島水際線公園」がオープンしました。帷子川の河口に面し、貨物線をはさんだ背後には横浜Fマリノスの練習グラウンドがあります。

この公園のウリは、何と言っても潮入池とそれに続く干潟です。埋立地を掘り込み、岸壁2ヶ所に穴を開けて海水を引き込み、その池の一面はなだらかな傾斜になっており、美しい白砂が敷き込まれた干潟になっています。

その面積は約1,000平方メートル。これを狭いとみるか広いとみるかは評価が分かれるところですが、横浜駅から徒歩10分という一等地を海に戻したわけですから、コペルニクス的な大転換と言えるでしょう。海に戻した土地の価格は億円単位にのぼると言われていますが、こうした形で海の自然再生が実現した事は、日本社会の成熟度の表れと評価すべきだと思います。

実は、この干潟・潮入池の実現に至る道のりは波乱万丈で、公園の設計図から一時は干潟と池が消されるという危機にも直面しました。

この公園は、みなとみらい地区最後の大きな公共用地の整備事業として2004年から設計に入りました。横浜という情報発信力と河口に面した立地を活かし、海の再生の大胆な理念を具現化する干潟と潮入池は、当初から公園の目玉でした。設計と施工は(独)都市再生機構(略称UR)が担い、完成後は横浜市に引き渡されて維持・管理されます。

しかし、干潟と潮入池は理念が異なる設計・施工者と維持・管理者との間で8年間も揺れ動き、一時は図面から消される事態にも遭いました。それでも最終的に実現に漕ぎ着けた要因は、「子供たちを干潟や潮入池で遊ばせたい」との近隣のマンションに移り住んできた住民の声でした。

公園は震災後の自粛ムードの中でひっそりとオープンし、私が知る範囲ではマスコミに報じられる事はなかったようです。これほど交通至便で地価が高い場所を海に戻した事業は、おそらく全国でも前例が無いでしょうに、もったいない話です。さらに残念なのは、干潟と池の全周がステンレスの柵で囲われて、常時立入り禁止にされていることです。特に干潟から池に至る道のりは、3重の柵でガードされています。

しかし、柵の件は安全管理上の問題なので、それを解決すれば今後何とでもなるでしょう。子供を干潟で遊ばせたいと願う住民を中心に、この世で唯一の宝物を活かす方策を考えればよいと思います。

さて当センターは昨年、国交省国土技術政策総合研究所から委託を受けて、東京湾の人工・天然干潟の魚類の調査を行いました。その中で、完成間もないこの潮入池を調査する機会を得ました。その結果、潮入池は夏場に貧酸素化する帷子川河口の魚たちの避難所として機能している可能性が示唆されました。

この干潟と池は、造成費と維持・管理費をはるかに超える多面的な便益を我々にもたらす可能性を秘めていると考えられます。今後の利活用のやり方次第で、それを存分に引き出すことができるでしょう。

写真1:高島水際線公園内に造られた干潟(手前)と潮入池(奥)

写真2:潮入池における魚類の採集調査

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