神奈川県水産技術センター メルマガ504
神奈川県水産技術センターメールマガジン 504号 2016年12月2日号
□ 研究員コラム
1 種苗生産を担当して(栽培推進部 工藤孝浩)
2 再び芦ノ湖のワカサギについて (内水面試験場 安藤 隆)
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1 種苗生産を担当して(栽培推進部 工藤孝浩)
正直申しまして、途方にくれましたよ。あの時は。
それは昨年の5月末のこと。サザエとナマコの種苗生産を担当するよう申しつかったのです。県に入って30年目、当センターの勤務暦25年目にして初めての「種苗生産」。魚介類の親から卵をとり、人工授精させてふ化させ、繊細でか弱い幼生や仔稚魚の世話をし、海の中で自活できる大きさに育て上げて放流する仕事です。
学生時代からフィールド調査一筋に歩んで来た私にとって、それはまったくの未知の領域でしたが、ずぼらでアバウトな自分に務まるとは思えない高度に専門的で繊細な仕事である事は分かっていました。
私が知る種苗生産の担当者は、朝は誰よりも早く出勤しており、夜は遅くまで残っていました。土日もなく、時おり職場に泊り込むこともあり、自己の都合を排除して生き物のサイクルに合わせて生活しているようでした。
驚かされたのは、生き物が発する「もっと餌を!」、「水を替えて!」、「お産が始まる!」などの訴えをキャッチする能力です。来る日も来る日も、朝から晩まで生き物と暮らすうちに、物言わぬ水中の住人の「声なき声」を聞き取ることができるようになったのでしょう。それは脅威の技術、神業としか思えませんでした。
とにかく今は、自分があの種苗生産の担当になったのです。定年まで残り少ない年月で神業を体得できるとは思えませんが、やれる事はやらなければなりません。そこでまずやった事は、サザエやナマコとできるだけ長い時間向き合うことでした。
私はこれまで魚を専門としてきており、サザエもナマコも飼うのは初めてです。でも、日々世話をしているうちに、どちらもとても可愛く思えるようになりました。愛着が湧けばしめたもので、どんなに大変な作業等もつらいとは感じなくなりました。
また、種苗生産はチームで取り組む仕事です。スタッフには長年にわたって飼育を手がけてきたベテランの現業職員や非常勤職員がいます。これは大変な救いで、これらの方々に支えられて、何とかつまずくことなく仕事を軌道に乗せることができました。
この1年余りの経験から、種苗生産は私一人の力でどうこうなる仕事ではないことがはっきりと分かりました。今後、種苗生産チームとして力を発揮し、漁業界や行政のニーズに応えていきたいと思っています。
写真1 ズラリと並ぶサザエの飼育水槽
写真2 放流のために水槽から取り上げたナマコの種苗
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2 再び芦ノ湖のワカサギについて (内水面試験場 安藤 隆)
これまで2回ワカサギについて書きましたが、今回も芦ノ湖のワカサギに関してお話したいと思います。
前回、芦ノ湖のワカサギ資源が豊かなのは、芦之湖漁業協同組合の努力によるところが大変大きいとお伝えしました。
芦之湖漁協はワカサギ資源を維持するため、親魚を採捕して水槽内で自然に産卵させ、卵を孵化筒(直径15cmほどの円筒形の塩ビパイプ)に入れて孵化させ放流しています。芦之湖漁協は、これらの技術を関係機関と協力しながら自前で開発してきました。
そして、芦之湖漁協は、これらのノウハウを求められるままに、全国のワカサギ増殖を行う漁協などに伝えています。そうした中、これまでの経緯や成果を組合の職員さんがをまとめて、「芦ノ湖におけるワカサギ増殖の軌跡と将来について」と題し、今月出版された「海洋と生物226号」に投稿されています。興味のある方は是非ご覧ください。
これを読むと、これまでの様々な苦労や努力がよくわかり、着眼点に感心し、私たち内水面試験場職員ももっともっと頑張らないとなーという気持ちにさせられます。
この年末には全国のワカサギ研究者や漁協関係者などが集まり毎年恒例の「ワカサギに学ぶ会」が横浜で行われます。そこでも芦之湖漁協からワカサギ増殖の技術開発について発表が予定されています。
写真1 ワカサギ
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【重要なお知らせ】
日ごろよりご愛読いただきましてありがとうございます。
これまでメールマガジンにより情報をお届けしてきましたが、県庁の情報システムの変更にともない、平成29年3月からメールマガジンの配信ができなくなる予定です。
なお、平成29年3月以降はこちらのページ(http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f450011/)で「水産技術センターコラム」として情報発信は引き続き行ってまいりますので、これからもご愛読よろしくお願いします。
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