神奈川県水産技術センター メルマガ498

掲載日:2016年6月3日

神奈川県水産技術センターメールマガジン  498号    2016年6月3日号

□ 研究員コラム

1 試験場の珍客(内水面試験場 蓑宮 敦)

2 定置網(ていちあみ)漁業 その1(相模湾試験場 山本章太郎)

【お知らせ】平成28年度「かながわで漁師になろう」セミナーを開催します

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1 試験場の珍客(内水面試験場 蓑宮 敦)

 内水面試験場には、見学、相談および工事などで様々なお客さんが来場します。今回ご紹介するのは、これまでに前例がない珍客のお話です。
 それはゴールデンウィーク明けの5月9日のことでした。パソコンで調査データの分析をしていると、場長の声で「場内にイノシシが侵入したので、皆さん気をつけてください」との場内放送がありました。
そういえば、連休前に近所でイノシシを見たという情報があったことを思い出しながら、半信半疑でイノシシが確認されたところに行くと、体長1から1.5m程のイノシシが悠然と歩いています。こちらに気づいても逃げ出すどころか、近寄ってくる感じです。こちらも特に恐怖は感じず、不覚にも可愛いなぁなんて思ってしまいましたが、あちらこちらで土地が掘り返されたり、水辺ビオトープがヌタ場にされていたりなどの被害がありました。
 その後、相模原市役所に連絡し、警察、市職員および猟友会の方々による捕獲作戦が実施されました。捕獲は、網や板により追い込む作戦でしたが、想定外にイノシシのフットワークは軽く、あっという間に逃げられてしまいました。次回の捕獲作戦は、箱式と括り式の罠で実施するそうです。このメルマガが発行される頃には、捕獲できているかもしれません。
ちなみに、当試験場では見学者に受付簿への記入をお願いしていますが、自分で受付簿に記入できないイノシシの来場記録は、どうしたものでしょうねぇ…。

 写真1 来場したイノシシ

 写真1:来場したイノシシ

 写真2 捕獲の様子

写真2:捕獲の様子

  写真3 ビオトープに形成されたヌタ場

写真3 ビオトープに形成されたヌタ場

 写真4 捕獲用の檻(箱罠)

写真4:捕獲用の檻(箱罠)

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2 定置網(ていちあみ)漁業 その1(相模湾試験場 山本章太郎)

 「定置網(ていちあみ)漁業は、本県沿岸漁業の生産量の6割以上を生産している主要な漁業であり、県民に新鮮な地場産水産物を提供しています。」
 このフレーズは幾度となく、本県の水産行政や試験研究で使われている様々な資料に記されてきました。事実、平成25年の本県の漁業生産量は全体で約34,500トンで、その内訳は、沿岸漁業が約18,000トン、遠洋漁業が約16,000トン、沖合漁業は約900トンとなっています。そして、定置網漁業の漁獲量は約11,500トンで、沿岸漁業の約64%。県漁獲量全体の約33%を占めています(農林統計年報)。こうした数字が証明するように、定置網漁業が神奈川県の重要な漁業であることは明確な事実です。
では、この定置網漁業について皆さんはどれだけご存知でしょうか?相模湾試験場に見学に来られた県民の皆さんからは「神奈川県で漁業が行われている事を初めて知った。」とか、「定置網という漁具を初めて知った。」という感想をたくさんいただきます。そこで、今回から神奈川県の主要な漁業である定置網漁業について説明していきたいと思います。
【定置網の構造】
 まず、定置網の概観ですが、図1のように海上に沢山の浮きが並んでいるのを見かけたことはありませんか?これが定置網という漁具です。非常に大きな漁具で最大級のものは全長が400m以上もあります。図2、図3に定置網のなかでも落し網(おとしあみ)とよばれる網型の構造と各部の名称を示しました。定置網にはここで示す落し網のほかにも色々な網型があります。定置網の張り立て(はりたて)(海に定置網を設置すること)は、ロープと浮子(あば)(浮き)と金(かな)碇(いかり)あるいは土俵(どひょう)(サンドバッグ)を使って、海面から海底の間に「側張(がわばり)」という骨組みを組み立てます。次にその骨組みに垣網(かきあみ)、運動場(うんどうば)、昇網(のぼりあみ)、箱網(はこあみ)という網を取り付けて作られます。垣網は垣根のような長い網が海岸近くから沖へ延びて設置されています。垣網は長いものでは800m以上もあります。その沖側には運動場という周囲を網で囲まれた広い場所があります。昇網は底面が上り坂のようになっており、左右の網は先に進む程狭くなっています。昇網からつづく箱網は大きな箱のような形をした網です。垣網(かきあみ)、運動場(うんどうば)、昇網(のぼりあみ)、箱網(はこあみ)はそれぞれ構造も役割も異なります。それから、落し網の場合、運動場も昇網も箱網も上面(海面)に網はありません。天井(海面側)は開いているのです。定置網は海底に固定されています(固定式漁具)ので、魚が網に入って来るのを待って獲る漁法です。魚を追い掛け回して漁獲する漁法ではないので、資源にやさしい漁法と言えます。
【魚を獲る仕組み】
 図4に定置網で魚を獲る仕組みを示しています。魚は潮の流れに乗って海岸と平行に泳いで来ます。しかし、その進路を垣網に遮られてしまいます。すると魚は安全な沖の方向へ進路を変えます。(岸側は浅いので魚にとっては危険です)その先には運動場が待ち構えていて、魚の群れは運動場の中に導かれます。運動場はとても広い場所なので魚はその中を泳ぎ廻ることが出来ます。なかには入ってきたところから再び網の外へ出て行ってしまう魚もいます。定置網は網の入口をふさぐことはしません。網の入口は常に開いているのです。魚は運動場を泳ぎ回っているうちに昇網を通り、その奥にある箱網に向かいます。昇網の先端は漏斗(じょうご)口(ぐち)といわれ、箱網の中に突き出しています。その構造から、箱網に入った魚は外に出にくくなっています。この様にして定置網に入った魚は箱網に溜まっていくのです。
【水揚げの方法】
 漁師さんは毎朝、この箱網を締めて(網を揚げること)魚を獲ります。図5は漁師さんが箱網を締めて魚を獲っている様子です。毎朝、魚を獲るために網を揚げるのはこの箱網の部分だけです。決して巨大な定置網の全ての網を引き揚げているのではありません。図6に箱網を締める手順を示します。箱網の入口側、漏斗口のあるところから網を手繰り揚げて、魚を箱網の奥に追い込みます。引き揚げた網は漁船に揚げてしまうのではなく、再び海中に降ろします。網を手繰りながら徐々に漁船を箱網の奥へと移動します。そうして魚を箱網の奥へ追い込みます。図7は箱網の奥に追い込んだ魚を漁船に取り込んでいるところです。箱網の中でたくさんの魚が水しぶきをあげているのを見るととても興奮します。でも、本当は漁師さんは魚をあまり暴れさせないようにしています。魚を暴れさせてしまうと、その後の鮮度や品質に影響するからです。図8は漁船の魚槽(ぎょそう)に魚を入れているところですが、魚槽の中にはあらかじめ滅菌された冷たい海水と氷が入れられています。漁師さんは魚を魚槽へ入れるたびに氷を足して、攪拌し、魚と冷たい海水と氷が良く混ざるようにしています。こうすることで、素早く魚を冷却して、鮮度と品質を保っているのです。図9は県西地域の定置網で漁獲される魚の一例です。この他にもサバやマイワシ、カタクチイワシ、イサキ、カンパチ、ヒラマサ、スルメイカなど様々な魚が定置網で漁獲されます。(次回へつづく)
 
 図1 定置網の概観

 図1:定置網の概観

 図2 定置網の構造と各部の名称(海面上)

 図2 定置網の構造と各部の名称(海面上)

図3 定置網の構造と各部の名称(海中の立体図)

図3:定置網の構造と各部の名称(海中の立体図)
 
 図4 定置網に魚が入る仕組み

図4:定置網に魚が入る仕組み

 図5 定置網に入った魚を水揚げする(箱網を締める)
 図5:定置網に入った魚を水揚げする(箱網を締める)

 図6 定置網の箱網を締める手順(海面の図、漁船の移動)

  図6:定置網の箱網を締める手順(海面の図、漁船の移動)

 図7 定置網の箱網を締める手順(海中の図、網の操作)

図7:定置網の箱網を締める手順(海中の図、網の操作)

 図8 定置網に入った魚を水揚げする(魚を漁船に取り込む)

図8:定置網に入った魚を水揚げする(魚を漁船に取り込む)

 図9 定置網に入った魚を水揚げする(魚を漁船に取り込む)

 図9:定置網に入った魚を水揚げする(魚を漁船に取り込む)

 図10 定置網で漁獲される魚(県西地域の定置網の例)

図10:定置網で漁獲される魚(県西地域の定置網の例)

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【お知らせ】平成28年度「かながわで漁師になろう」セミナーを開催します
 神奈川県ではどんな漁業が行われているのか?先輩漁師たちはどのように漁師になり、毎日どんな仕事をしているのか?漁師になるにはどうしたらよいのか?セミナーで神奈川県の漁業や漁師の仕事について知識を得ましょう。
  ・日時 平成28年6月11日(土曜日)14:00から16:30まで(13:30受付開始)
  ・場所 万国橋会議センター 4階401会議室 (横浜市中区海岸通4-23)
   (会場のHP:http://www.y-port-kousei.or.jp/6-1bannkokubasi.html
   <アクセス>
    みなとみらい線「馬車道」駅6番出口から徒歩4分または、市営地下鉄「桜木町」駅から徒歩10分
    ※駐車場はございませんので、公共交通機関をご利用ください。お車の方は近隣の コインパーキングをご利用下さい。
  ・対象 高校生や若者向けの内容ですがどなたでも参加可能です。(県外の方も可です)
  ・定員 50名
  ・参加費 無料
  ・内容:第1部
    ○神奈川の漁業の概要について
    ○若手漁師の体験談1
    ○若手漁師の体験談2
    ○ベテラン漁師からの話(新企画)
    ○漁業者になる方法等について
   第2部
    ○漁師さんとの座談会(新企画)
   ※今年から新たに「ベテラン漁師からの話」と「漁師さんとの座談会」を企画しました。 漁師さんと直接お話ができる貴重な機会です。奮って御参加ください。第1部だけ、第2部だけの御参加も可能です。
  ・申し込み方法 県HPの申し込みフォーム又はお電話によりお申し込みください。
  ・県HP申し込みフォームURL(https://cgi.pref.kanagawa.jp/ques/questionnaire.php?openid=2000001717&check
  ・お電話での申し込み先 045-210-4542(直通)水産課水産企画グループ
   ※お電話での受付は平日8:30から17:15までとなります。(申し込みフォームは24時間受付です)
   ※前日(6月10日)までにお申し込みください。当日、会場での受付も可能ですが、資料や会場の準備の都合上、なるべく事前申し込みをお願いします

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