神奈川県水産技術センター メルマガ492

掲載日:2016年2月19日

神奈川県水産技術センターメールマガジン  492号    2016年2月19日号

□ 研究員コラム

1 ナンヨウツバメウオ(栽培推進部 岡部久)

2 東京湾でのホタテガイ養殖試験(企画資源部 石井洋)

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1 ナンヨウツバメウオ(栽培推進部 岡部久)

 九州大学名誉教授、故内田恵太郎先生の名著「稚魚を求めて(岩波新書535)」の冒頭の口絵に、浮遊落葉擬態をするツバメウオの写真があります。内田先生は明治末期の城ヶ島でご幼少のころを過ごされ、そこで出会った魚類、特に稚魚の形態や生態の面白さに魅せられて、魚類の初期生活史研究の道に進まれた先人です。

 先生がツバメウオとされた魚は、現在ではナンヨウツバメウオと呼ばれるものの幼魚だと思われますが、まるで枯れ落ちた広葉樹の葉のような姿をしています。「稚魚を求めて」では、鹿児島県の松ヶ浦で見事な擬態を観察されたエピソードが紹介されていますが、内田先生ゆかりの城ヶ島でも、夏から秋にかけてこの魚に出会うことがあります。昨年の8月、島内の岸壁から水面を覗くと、落ち葉がたくさん浮いていました。その中に、体を斜めに倒して水面を漂うナンヨウツバメウオの幼魚を発見し、早速すくい獲りました。体長は3から4cmほどですが、体は茶褐色で、背鰭と臀鰭が長く突き出しており、枯葉のような姿を演出しています。内田先生の母校である三崎小学校の遠い後輩に当たる次女(中1)が、夏休みの宿題として募集があった写真コンテストへ出品するため、「稚魚を求めて」の口絵を生きた魚で再現するような写真を撮りました(写真1)。結果は落選でしたが、被写体となった魚は今、「枯葉君」と名前を付けられ、我が家の水槽で元気に泳いでいます。1月初旬での体長は獲った時の3倍近く、以前に飼ったハリセンボンと同様、大食らいで成長も早いです。 

 写真1 ナンヨウツバメウオはどれでしょう?(ヒント:細長くない)

 写真:ナンヨウツバメウオはどれでしょう?(ヒント:細長くない) 

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2 東京湾でのホタテガイ養殖試験(企画資源部 石井洋)

 江戸前で知られる小柴のシャコやマコガレイなどの水産資源は、平成17年以降漁業者による禁漁などの取り組みにもかかわらず低迷が続いています。貧酸素水塊(注)や底質の改善が進まないことが資源低迷の要因のひとつと考えています。東京湾では汚濁負荷量の総量を削減する計画により窒素や燐などの栄養塩は減ってきていますが、干潟や浅瀬が埋め立てられ、浮遊懸濁物やプランクトンを濾過してくれる二枚貝類の生息場所が激減し、懸濁物が海底に堆積しヘドロ化していると思われます。

 そこで、干潟や浅瀬の造成は無理でも二枚貝の養殖を普及させれば、水揚げ量の増加と懸濁物の削減につながるのではと考え取り組み始めました。しかしながら、東京湾では夏季に大量の付着生物により養殖が困難になることもあり、その除去が課題であることもわかってきました。(写真1)

 それなら夏を外せばよいと考え、秋から春にかけての短期間で成長させ出荷できるもので、10℃を下回る(東京湾横浜沖)水温でも成長する二枚貝で養殖されているものを探しました。東北地方ではホタテガイ、マガキ、アズマニシキ、エゾイシガケガイ、トリガイなどの養殖種がありますが、半年間で製品サイズまで成長が可能で、かついろいろなサイズの貝の入手ができる種となると、ホタテガイくらいしか思い浮かびませんでした。

 早速、東北地方の養殖技術を学び、平成25年11月下旬に、青森県の漁業協同組合からホタテガイ(殻長約80ミリメートル)を入手して、垂下養殖試験を始めました。翌年の5月上旬に取り上げるまで網の汚れを1回取った以外は何もしませんでしたが、ホタテガイは、想定通りの成長し、ホタテガイを送ってくださった青森県の漁協の養殖ホタテガイの成長とそん色ありませんでした。写真2、3のとおり、殻長で3センチメートル以上成長した個体もあり、貝柱も立派な大きさです。また、東京湾の水にあったのか、ほとんどへい死することなく9割以上が生存していました。

 養殖試験も3年目となった平成27年度は、養殖枚数を大きく増やしたことで活ホタテの販売や食堂の旬のメニューとして扱われています。ぜひ、横浜市漁協の小柴名産直売所と小柴のどんぶりやで「江戸前そだち」のホタテガイを食べてみてください。 

 「小柴のどんぶりや」のブログ http://kosibanodonburiya.blog.fc2.com

 (注)貧酸素水塊:溶存酸素濃度が極度に低下した水塊。海域の底層において、富栄養化により増殖したプランクトンの死骸や海域に流入する有機物を分解する際に微生物が酸素を大量に消費することで、溶存酸素濃度が極端に低下する。水生生物が長時間接することで死滅する等の被害が出ることがある。 「総合海洋政策本部用語集」より

 写真1 付着生物で覆われた二枚貝の養殖かご

 写真:付着生物で覆われた二枚貝の養殖かご

 写真2 成長したホタテガイ

 写真:成長したホタテガイ

 写真3 成長したホタテガイ(貝殻中ほどの茶色の帯より外側が東京湾で成長した部分)

 写真:成長したホタテガイ(貝殻中ほどの茶色の帯より外側が東京湾で成長した部分)

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