令和2年仕事始め式 知事メッセージ

掲載日:2020年1月6日

日時:令和2年1月6日(月曜) 9時30分から9時50分

場所:県庁本庁舎 大会議場


 明けましておめでとうございます。どのような新年を、皆さん迎えられたことでしょうか。
 昨年は色々な事がありましたけれども、今年の年末年始というものは、たっぷり時間があったので、少し流れを切り替える、それだけの時間的余裕があったのではないかと思っております。心機一転しっかりと頑張っていきたいと思うところであります。
 何と言っても今年は、待ちに待った東京オリンピック・パラリンピック、その本番の年であります。昨年もある意味本番でありました。ラグビーワールドカップ、これは本当に神奈川県と横浜がしっかりスクラムを組んだからこそ実現できた、そのような大会でありました。それに、皆さんと力を合わせて、過去最高の大会だったとワールドラグビーの会長からも絶賛されるような大会にできたといったことは、本当に誇らしいことだと思っています。われわれの成果だと言って良いと思います。
 この流れを、そしてこの自信を今年につなげていきたい、強くそう思うところであります。さまざまな準備は進めてきました。私は色々なインタビューを受けていますけれども、その中で「準備万端です」とあえて申し上げています。それくらいさまざまな分野で緻密な作業を、皆さんが積み重ねてきてくださった。そのことがきょうにつながっていると信じているところであります。
 だからこそ、最大限に本番が盛り上がって、また、過去最高のオリンピックだった、パラリンピックだったと言われるように、皆さんと力を合わせて頑張っていきたい、そう思う次第であります。
 また今年も、世界中の観光客がこの神奈川にも来られます。この皆さんのために、1,000通りものツアーも用意しております。それら用意したものがすべてうまく活きるように、皆さんと力を合わせて頑張りたい、改めてそう思う次第であります。
 ところで、昨年、われわれ自身が直面したさまざまな課題といったものもありました。振り返ってみますと私自身、特に後半でありますけれども、私自身が謝罪をするという、そういうシーンがたくさんありました。とても残念なことでもあったと思います。特に、ハードディスク流出問題といったもの、県民の皆様に大変なご心配とご不安をおかけしたこと。この場をお借りして、改めて心からお詫びを申し上げたい、そう思う次第であります。われわれ自身も、まさかそのようなことがと思っていましたが、しかし、まさかでは済まされないのが、われわれの仕事だということであります。われわれの仕事は、100パーセント完璧でなければならない、そのようなことを改めて実感をした。皆さんそうだったのではないでしょうか。
 しかし、幸いなことにハードディスクは一時流出をしましたが、無事に回収できて、情報が流出するといったことはなかったといったことは本当の救いでありました。しかし、二度とこういうことがないように全庁を挙げて再発防止にしっかりと取り組んでいきたい、そのように思うところであります。
 それとともに、昨年は、大きな台風がこの神奈川県も襲いました。台風15号、19号、われわれの想像以上の大きな被害が出ている。箱根そして相模原、川崎、この辺りの被害が非常に大きかったとわれわれは実感がありましたが、しかし、いろいろと各市町村の話を聞いてみると、それ以外のところでもさまざまな大きな被害が実は出ているといったことを聞いております。こういったことから立ち直るためには、ある程度時間もかかるだろうし、それなりの支援といったことも必要でしょう。そういったことにもしっかりと心を配りながら丁寧な作業をこれからも進めていくことが必要であると感じています。
 それとともに、この今の異常な気象状態。これは、もはや後戻り出来ない状況ではないでしょうか。南半球オーストラリアでは、巨大な山火事が各地で発生している。大変な高温・高熱になった地球温暖化の影響によって山が燃える。山が燃えることによって、どんどん二酸化炭素が空中に吐き出される。そのことによって、さらに地球温暖化が進むという悪循環。このような状況にまでなっているところであります。
 そういった中で、今年の台風は、去年と同じくらいの巨大な台風が、この日本を、神奈川を襲っても不思議ではない。そういうことが常態化するといったことも、まさかということではなくて、われわれは想定せざるを得ない。そのような状況に来ていると思います。
 これは、われわれ自身がそういう思いを持っても決して乗り越えることはできないと思います。われわれ自身がしっかりとそういった認識を共有する。これはとても大事なことですが、それとともに市町村の皆さんと同じ思いを共有する。そして、全ての県民の皆さんとも、その思いを共有する。そういった中でこそ、初めてさまざまな対応ができるものだと、私たちは信じています。そのための労を惜しまないでほしい、そのように考えています。
 それとともに、課題の一つとして触れざるを得ないのは、われわれはとても大切な仲間を失いました。その背景には、長時間労働やパワハラ、こういった問題があると指摘を受けて、裁判になっています。その亡くなったわれわれの仲間に対しては、本当に痛恨の思いでありまして、彼を守り切れなかったといったことについて無念でならない、そして改めて守れなかったことについて心からお詫びを申し上げたい、そう思っているところであります。それこそ二度とこういったことを起こしてはいけない。
 そのために、今、全庁を挙げて働き方改革に取り組んでいます。長時間労働をやめようといったことで、各部署で時間をしっかりと計りながら目標を立ててやっていますが、いまだに目標は達成できていません。彼の無念の思いに応えるためにも、われわれは長時間労働をなくすという目標を達成することを、全庁を挙げて取り組んでいきたい。そのように思うところであります。
 それと、パワーハラスメントといった問題。これも遅きに失したかもしれないけれども、今、必死に取り組んでいるところであります。全職員へのアンケート調査も行いました。パワハラというものは、かつては普通にあった当たり前なことだったかもしれない。私も30年間サラリーマンとして生活してきて、今言われているパワハラというものに当てはめてみると、パワハラばかりだったと思わざるを得ない。
 しかし、今はそのような時代ではない。パワハラというものはわれわれ自身の手で見つめて根絶をしていかなければならない重大なテーマであるといった認識を、皆さんと改めて共有したいとそのように思います。そして、自らもパワハラをしているのではないか、これがもしかしたらパワハラに当たるのではないか、そういった思いを常に繰り返しながら前に進んでいく。そういう動きを、全庁を挙げて皆さんとともにやっていきたい、そのように考えているところであります。
 そして、私がいつも申し上げてきました、「目線」といったこと。この年末年始ずっといろんなことを考えながら、やはり目線がどこにあるか、とても大きなことだと実感しているところであります。「県民目線で仕事をしよう」と言ってまいりました。公務員を目指した志、私はかつて「公務員魂」と呼びました。そういったものが皆さんの中に必ずあるはずです。もともと、若い時からその公務員魂をどこかに持っていた。それは何ですか。県民のために、わが人生を尽くして頑張ります。恐らく多くの方がそう口にしたことがあると思います。実に美しく素晴らしい言葉だと思います。
 しかし、私が今提起しているのは県民のためにではなくて県民目線で仕事をしてほしいということであります。目線を違えればどう違うのかといったこと。例えば、1,000通りの観光ツアーを用意した。では一番大事なことは、外国から来られるお客様の目からそれがどう見えるか、そこに行きたくなるか、それだと思います。つくる作業は一生懸命やったけれども、本当に皆さんの目を引き付けるお客様目線になっていたかどうかといったことをしっかりと検証していく必要があると思います。さまざまな民間企業は、消費者目線、そこにしっかりと立っている企業が成功を収めています。視聴者の気持ち、消費者の気持ちはどんどん移り変わります。しかし、企業側が用意するためにはそれなりの時間もかかるし、投資も必要です。そのような中で、どんどん変わる消費者の目線、視聴者の目線に合わせてモノを変えていこうということは、なかなか難しいことは事実です。しかし、その努力を怠った企業は大成功を収めても、必ず失敗をいたします。
 どれだけ消費者目線に立ち続けることができるか。私はかつてテレビ局に30年間勤めていましたけれども、視聴者目線といったことをいつも考えていた。視聴者にとってこれが見たい番組かどうなのか、見たくなるかどうか、それを第一に考えようということでずっとやってまいりました。しかし、これには一つ落とし穴もある。視聴者目線といったときに、それに徹底的にこだわりすぎることの弊害も、実はあります。「視聴率優先主義」、皆さん聞かれたことがあると思います。とても大事なテーマ、日本の将来、日本の国にとって、とても大事なことだけれども、これが今の視聴者に見たいと思われるかどうか。それよりも、こちらのテーマの方が面白いいということで、大事なことがどんどんメディアから消えていく。そして、面白ければ良い、くだらなくても笑えれば良い、そういったことで、テレビの質がどんどん低下してしまった。こういった側面があることは、一つの事実でもあります。私は、そうは言いながらも県民目線と言い続けた。本当は県民目線だけではだめなのです。県民目線に立つことは大事だけども、それだけでは本当はだめなのです。
 でも、あえて県民目線と言い続けたのは、やはり皆さんの中であまりその発想がないと思ったからこそ、あえて強調をしてまいりました。しかし、これから先は、さらに高いレベルを目指していただきたいと思っています。
 県民目線というのをしっかりと持つ自分と、県民のためにという目線を持つ自分と、うまくバランスをとってほしいということであります。皆さん、映像の業界でスイッチングという言葉があるのをご存じでしょうか。皆さんが普通にご覧になっている映画とかテレビとか、あれは何台ものカメラでつくりあげた映像です。例えば二人が話をしていると。この人の顔をこちらから側のカメラで撮っている。この人の顔をこちら側のカメラで撮っていると。この二人がしゃべっているところを遠くからカメラで撮っている。全部目線が違うのです。スイッチングというのは、それをパッパッと切り替えていくのです。ですから、これがうまくできる人間といったものは、私は本当のプロフェッショナルだと思っています。徹底的に県民の目線に立ちながら、ふっと俯瞰をしてみて、これは県全体でどういう意味があるのか、国民全体としてはどういう意味があるのかといったことがパッとスイッチングしながら、しかしパッとまたその県民目線といったことに切り替える。それができるかどうかということです。
 私はかつてナースのドキュメンタリー番組を長くつくっていました。「感動の看護婦最前線」というドキュメンタリー番組で、2時間ゴールデンタイム。亡くなられた日野原重明先生にずっとお付き合いをしていただいて12年間続いた番組でありました。ナースの世界にカメラが入ると、素晴らしいナースというものはこういうものなのだなと、まさに一人で目線のスイッチングができる。そのようなナースです。つまり、患者さんがここにいる、患者さんをこちらから見ている、ところがこの目だけではだめなのです。この人、天井に目が付いているのではないか。病室、病棟全体がどうなっているのか俯瞰して見ている目がある。こちらに行きながら、パッと俯瞰してさっとこちらを見る。これがうまくできる人が素晴らしいナースだといったことを痛感したことがあります。ですから、行政の仕事も目線をパッパッと切り替えていくことができる行政職員になってほしいと思います。
 そして今、われわれが抱えている課題の大きな一つとして、津久井やまゆり園の再生の問題があります。今週から被告の裁判が始まります。もうすでにメディアではこの事件について、改めてさまざまな形で論じられ始めています。そのような中で、私は去年の暮れに大きな決断をいたしました。指定管理者である、かながわ共同会を続けるといった方針を見直すといったことでありました。これに対してさまざまな議論も巻き起こっている。そのような中で私が痛切に感じ、繰り返しお話ししているのは利用者目線の障害者福祉のあり方をつくっていこうではないかということです。
 これまでは、利用者さんのためになるような障害者福祉のあり方をやっていこうと、現場の皆さんも努力をされたに違いないと思いますが、この利用者のためにという視点と利用者の目線に立った障害者福祉は必ずしも同じではないと思わざるを得ない。この人のために、安全のために、拘束をしておこう。この人の安全のために部屋に閉じ込めておこう。こういうことも、実はかつてあったということは間違いない。しかし、今の福祉の流れはそうではない。
 今、われわれが全国に先駆けてやっているのは、利用者お一人お一人に問いかけて「あなたはどこにお住みになりたいですか」、その意思をしっかり確認して決定していくという大変地道だけれども、粘り強い作業を進めているところであります。その中で、今まで、この人の思いを聞くことはできないのではないかと思っていたけれども、しかし、しっかりとその人の思いを確認することができるということをわれわれは感じ始めているわけであります。
 ですから、利用者の意思をしっかり尊重し、じっくり時間をかけてでも、意思を確認して、この人の目線に立った福祉のあり方をつくっていく。これが、大きな今年の課題になってくると思います。これまで、そうでなかった部分がたくさんあった。こういったものを変えていこうとすると、われわれ自身、乗り越えなければいけない。ある程度、かつての自分達を、切り刻まないといけないかもしれない。しかし、新しいステージに持っていくためには、そのわが身を切る痛みを伴った、それでも改革を目指してやっていくのだという、そういう強い思いで神奈川から新しい福祉のあり方が始まった、後世からそう言われるように全庁を挙げて取り組んでいきたいと考えているところであります。
 最後に言葉を一つだけ。県民のための行政ではなくて、県民目線、そしてその目線をさまざまにスイッチングできるプロフェッショナルな行政職員、今年一年皆さんとともに目指していきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いいたします。
 本日はありがとうございました。