7 事例検証 (1) 事例検証の目的 ・死亡事例等の検証は、発生してしまった事例について、地域包括支援センター、市町 村等の関係者との発生後の情報共有のあり方や、関係機関との連携の再構築を目的と します。 ・高齢者虐待を原因とする死亡事例等があったと判断してしまうと、関係者が適正に関 っていないということを認めてしまうことになるとの印象を持つかもしれませんが、 事例検証が必要な事例は、適正に関わっていたとしても発生することがあります。そ のため、事例検証は関係者の責任追及ではなく、事例検証から得られる情報等を、次 の支援に生かすことを目的とします。 (2) 検証事例の選出 ・検証事例は、発生した事例を、各市町村や地域包括支援センターが、次のような内容 について着目し、検証の必要性を検討します。 例) ○高齢者本人・養護者等が死亡・自殺、心中等の重篤な状況となった事例 ○新聞報道等が行われ、市町村が情報収集を必要と判断した事例 ○市町村・地域包括支援センター等の関係機関が、養護者・関係者から訴訟、情報 開示請求、継続的な攻撃的言動等を受けた事例 ○その他、検討が必要と思われる事例 「東京都高齢者権利擁護推進事業 高齢者虐待事例分析検討委員会報告書(平成25 年 3月東京都保健福祉局)」を参考に作成。 ・なお、市町村が高齢者虐待を原因として事例が発生したと判断していない事例であっ たとしても、事例によっては検証の必要がある場合があります。 ・各市町村で客観的に検証する事例の必要性を判断できるチェック項目を作ることによ り、客観的判断することができます。 (3) 検証手順 ・事例検証は、第三者性と専門性を担保した人選による委員会を設置するなどして、複 数の関係機関で行います。 ・また、学識経験者や弁護士等の専門家にも参加を依頼することで、検証の客観性を保 つことも有効です。 ・検証の手順は、事例によって、また市町村の体制によっても変わります。必要な手順、 検証に参加する関係職員の範囲等をあらかじめ内規等で決めておくことにより、事例 発生時にスムーズに対応することができます。 ・次ページに、「地方公共団体における児童虐待による死亡事例等の検証について」 (平成20 年3月14 日付雇児総発第0314002 号本職通知)を基に作成した手順の流れ の例を記載します。 ※検証は、個人情報の取扱に充分注意し、検証を行うための会議の委員に対しても、守 秘義務の確認を必ず行います。 検証の進め方の例 会議での検討内容等 市町村等事務局業務 事前準備 ・関係機関から事例に関す る情報収集し、事例検証 に必要な概要資料作成 ・会議に出席を依頼する者 の選定、依頼文の発送 初回会議 ・検証の目的の確認 ・検証の方法、スケジュールの確認 ・事例の概要把握 会議を複数回開催 ・地域包括支援センター、市町村内 の関係部署、その他関係機関や関 係者からのヒアリング ・問題点・課題の抽出 ・問題点・課題に対する提言等の検 討 ・報告書素案検討 ・報告書の周知範囲の検討 ・ヒアリング結果資料作成 (事例の概要を詳細化) ・報告書素案作成 最終の会議 ・報告書とりまとめ 報告書取りまとめ後 ・提言を基に再発防止策を 講ずる ・必要に応じて報告書の周 知 検証は、下記の進め方を参考に、市町村や事例ごとに変更します。 ・検証に必要な情報は、高齢者虐待で対応していた事例であれば、既に収集をしている ものを中心に活用します。高齢者虐待で対応していない事例は、地域包括支援センタ ーや介護保険事業所に協力を依頼し、情報を収集します。 ・検証時の個人情報の取扱についても、内規等で定めておくことにより、収集する際に 協力を得やすくなる場合もあります。 ・裁判に関する記録(判決記録)等の活用も有効的ですが、検証目的であっても、収集 が困難です。裁判に関わった弁護士に協力を依頼することで、個人情報を削除した上 で、提供してくれる場合もあります。 ・検証行うために必要な情報は、次のような内容が考えられます。 例) ○高齢者の状況(介護保険、医療サービス等の利用状況) ○高齢者及び家族の構成 ○高齢者及び家族の生活状況 ○事例発生時点における家族関係 ○過去の家族状況 ○高齢者及び家族の経済状況 ○事例発生(死亡等)に至った経緯 ○市町村・地域包括支援センター等の関与状況 ○地域住民(民生委員等)の関与状況 ○刑事事件であれば、裁判関連記録 ○新聞報道等の記録 ・関係者の聴き取りを行う必要がある場合は、責任追及ではなく、対応の改善点等の検 討を目的としていることを認識し、客観的に聴き取りを行います。 ・報告書の原案は事務局が作成し、会議で内容の修正、承認を行うが、次のような内容 を記載することが考えられます。 例) ○検証の目的 ○検証の方法 ○事例の概要 ○明らかとなった問題点・課題 ○問題点・課題に対する提案(提言) ○今後の課題 ○会議開催経過 ○検証組織の委員名簿 ・検証実施の法的根拠がないため、報告書の内容に、個人を特定できる情報を記載をし ないなど、報告書の取扱いにも十分配慮を行う必要があります。