参考資料 身体拘束の廃止について  (参考:厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き」より) 1 身体拘束が省令基準により禁止されている施設 @ 特別養護老人ホーム A 介護老人保健施設 B 介護療養型医療施設 C 短期入所生活介護事業所 D 短期入所療養介護事業所 E 特定施設入居者生活介護事業所(有料老人ホーム、養護老人ホーム及び軽費老人ホームのうち指定を受けた施設) F 認知症高齢者グループホーム 2 身体拘束の問題点 (1)身体拘束の弊害 身体拘束は、人権擁護の観点から問題があるだけでなく、高齢者のQOL(生活の質)を根本から損なう危険性を有しており、 @ 身体的弊害(関節の拘縮、筋力低下、食欲の低下等) A 精神的弊害(人間の尊厳の侵害、認知症の進行、家族の罪悪感、職員の士気の低下等) B 社会的弊害(介護保険施設等に対する社会的な不信・偏見、医療の増加による経済的損失等) を招く恐れがある。 (2)身体拘束による悪循環   体力が弱っている人や認知症の人に拘束対応した場合、縛られることにより2次的な弊害(より体力が消耗し萎縮等により転倒)   や問題行動(認知症の状態が進み幻覚・妄想)が出現する。   その問題行動に対して、治療と称して薬の増加、副作用の状態が見られる。   さらにその行為を押さえる理由として安全確保・治療遂行とし、当初は「一時的」として始めた拘束が対応の正当性を主張し、   「常時」の拘束となり状況によっては、「身体機能」の低下と共に高齢者の「死期」を早める結果にもつながりかねない。 (3)身体拘束の対象となる具体的な行為 @ 徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。 A 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。 B 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。 C 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。 D 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。 E 車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y宇型抑制帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。  F 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。    G 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。 H 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。 I 行動を落ち着かせるために、向精紳薬を過剰に服用させる。 J 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。 3 身体拘束の廃止にむけて (1)身体拘束廃止に向けた5つの方針 @ トップが決意し、施設や病院が一丸となって取り組む。 A みんなで議論し、共通の意識をもつ。 B まず身体拘束を必要としない状態の実現をめざす C 事故の起きない環境を整備し、柔軟な応援態勢を確保する。 D 常に代替的な方法を考え、身体拘束するケースは極めて限定的に考える。 (2)身体拘束をせずに行うケア(三つの原則) @ 身体拘束を誘発する原因を探り、除去する。 A 5つの基本的ケアを徹底する(起きる、食べる、排せつする、清潔にする、活動する)。 B 拘束廃止をきっかけに「よりよいケア」の実現を。 (3)緊急やむを得ない場合の対応 @3つの要件をすべて満たすこと 【切迫性】 利用者本人又は他の利用者の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと 【非代替性】身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと 【一時性】 身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること A手続きの面でも慎重な取り扱いであること ・担当のスタッフ個人(あるいは数名)では行わず、施設全体としての判断を行う ・利用者本人や家族に対して、身体拘束の内容、目的、理由、拘束の時間、時間帯、期間等をできる限り詳細に説明し、  十分な理解を得るよう努める。 ・「緊急やむを得ない場合」に該当するかどうかを常に観察、再検討し、要件に該当しなくなった場合は直ちに解除する。 B拘束に関する記録をすること ・身体拘束の態様及び時間、 ・その際の利用者の心身の状況、 ・緊急やむを得なかった理由を記録しなければならない。 (平成15年4月1日の省令基準の改正で、制度上規定された) (4)転倒事故等の法的責任について @身体拘束をしなかった理由による事故責任について  拘束をすることで事故防止をはかるより、ケアのマネジメントによって事故防止を図る事が大切。「拘束」をしなかった  事のみを理由に法的責任を問うことは通常想定されておらず、むしろ施設として利用者のアセスメントの中でケアの  マネジメント過程において「身体拘束」以外の事故防止のための対策を尽くしたか否かが重要な判断基準となる。 A身体拘束をした理由による事故責任について  身体拘束そのものによって利用者に精神的苦痛を与えたり、身体機能を低下させた結果、転倒、転落等の事故が起きた場合  「身体拘束をしたことを理由に損害賠償等の責任を問われる事もある」事を留意しなければいけない。