3  個別調査結果 1 施設の概要 問1 施設・事業所の種別・回収率 ○ 回収率は、82.2%であった。(特養235施設、老健123施設、療養型40施設、指定特定施設286施設、 GH402施設の計1,086施設) 問2 施設・事業所を運営している法人の種別 ○ 指定特定施設の87.1%、GHの60.4%が株式会社また有限会社の運営 問3 施設の開設時期 ○ 開設1年以内の施設は全体の5.3%であった。 問4 施設の所在地及び回収率 ○ 県西地区の回収率が最も低く73.8%であった。 問5・6 平成21年2月1日現在の定員数・利用者数 ○ 指定特定施設の稼働率が低い。 2 身体拘束の実態について  問1 身体拘束の有無等 ○ 身体拘束の状況を施設数でみると、回答があった1,086施設の28.7%に当たる312施設で身体拘束が  行われていた。 ○ 利用者数でみると、入所していた52,259人の2.5%に当たる1,328人に対して身体拘束が行われて  いた。 ◎ 施設の開設時期による身体拘束の有無 ○ 全施設のうち,設置1年以内の施設の拘束率は12.3%であった。                              ○ 介護保険施行後に開設された施設の方が、未実施率が高い。 ◎ 施設の所在地別による身体拘束の有無 ○ 川崎地区が他地区に比して拘束率が高い 問1−@ 日数別内訳(身体拘束を行った実人数について) ○ 日数別では、「毎日」が1,111人で最も多く、その割合は全体の83.7%を占めており、   次いで「10日未満」が118人で(8.9%)であった。 ○ 平成19年度に比べると、割合では「毎日」と「10日未満」が微増し、その他の項目は、   微減であった。 問1−A 1日当たりの時間別の人数内訳   ○ 老健、GHでは「夜間」、療養型、指定特定施設では「1日中」が最も多く、     特養では、その他が最多であった。 問1−B 行為別の延べ人数 ○ 身体拘束を行為別に見ると、一番多かったのは「Bベッドを柵で囲む」763人(35.8%)で次に「E車  いすにベルト等をつける」456人(21.4%)「Dミトン型の手袋をつける」が434人(20.4%)となっている。 ○ このうち、緊急やむを得ない理由で身体拘束を行っていた割合は、1554人で73.0%であった。 ○ 施設種別で見ると、特養、療養型、指定特定施設の上位3項目は、「Bベッドを柵で囲む」、「Dミトン型の  手袋をつける」、「E車いすにベルト等をつける」と共通しており、合計するとともに75%〜85%を占める。 ○ 老健は、上位3項目に「G介護衣を着せる」が含まれている。(「Bベッドを柵で囲む」と「Dミトン型の  手袋をつける」は特養等と共通している。) ○ GHは、「Bベッドを柵で囲む」が特に多く、約半数を占めている。次いで「E車いすにベルト等をつける」、  「J居室等に隔離する」、「Kその他」がそれぞれ12%となっている。) 問1−C 身体拘束廃止が困難な理由 ○ 「B安全のため家族が身体拘束を希望」が206件と最も多く、次いで「E職員が少なく余裕がない(92件)」、   「A身体拘束をしなかったために事故が起きた場合、家族の苦情や損害賠償請求が心配である(71件)」が   続いており、全体の約6割を占めている。  問2 身体拘束の「廃止」又は「減少」ができた理由             "○ 全体の中で、「ケアの工夫」「家族の理解」「管理者の決意」「職員の意思の統一」の4項目の割合が高く、          合計すると、86.4%(2,019件)であった。 ○ 身体拘束を行っていない施設が774施設であるのに対し、回答合計数が2,335件あり、1施設につき3個以上          の取組みをしていることがわかる。" 3 身体拘束の廃止に向けた取り組みについて 問1 施設・事業所の対応方針 ○ 「やむを得ない場合に一定の手続きの上、身体拘束を行う(49.8%)」が最も多く、次いで「一切行わない          (40.2%)」であり、2項目を合計すると90%を占める。 問2 身体拘束の手続きの有無 ○ 「チャート、マニュアルで検討・確認・記録・説明書等すべて定めている(57.0%)」が最も多く、次いで          「その都度協議するが、記録・説明書等は定めている(18.1%)」であり、2項目を合計すると、約75%となる。 問3 身体拘束を行うことによる弊害の認識・対応の有無 ○ ほとんどの施設(95.9%)が身体拘束を行うことによる弊害の認識・対応をしている。         問3−@ 実際に認識・対応している弊害 ○ 精神的苦痛・尊厳の侵害(15.0%)が最も多く、次いで身体機能の低下(13.2%)、認知症の進行(12.5%)   となっている。          ○ 各項目(その他を除く)について、満遍なく10%前後認識・対応している。          問4 身体拘束の廃止に向けた取組みを実践の有無 ○ ほとんどの施設(95.9%)が身体拘束の廃止に向けた取組みを実践している。         問4−@ 実際に有効な取組み ○ 「職場内外研修(28.1%)」、「業務中の伝達(27.8%)」がともに、30%弱の割合で有効とされており、   OJT、OFF-JTの重要性が伺える。 問5 リーダーシップをとり身体拘束の廃止を推進できる人の有無 ○ ほとんどの施設(94.0%)にリーダーシップをとり、身体拘束の廃止を推進できる人がいる。          問5−@ リーダーシップをとり身体拘束の廃止を推進できる人の役職・職務 ○ リーダーシップをとる人の役職・職務は、施設長・管理者が最も多い(44.7%)。         問6 「リスクマネジメント」「ヒヤリ・ハット」の取組みの有無 ○ ほとんどの施設(97.9%)が「リスクマネジメント」「ヒヤリ・ハット」の取組みをしている。       問6−@ 「リスクマネジメント」「ヒヤリ・ハット」の具体的な取組み     ○ 「ヒヤリ・ハット事例を施設内で共有(34.2%)」「事例等、情報分析して対処方法を定めている(28.1%)が          上位2項目であり、合計すると60%を超える。 問7 「身体拘束」か「身体拘束でない」かの線引きが難しいと思われる項目の有無 ○ 「難しいと思われる項目がある」と回答した施設と「その他」と回答した施設を合わせると全体の4割弱であ          る。 問7−@ 「身体拘束」か「身体拘束でない」かの線引きが難しいと思われる具体的項目 ○ 上位3項目は、「自分で降りられないようにベッドを柵で囲む」、「行動制限をするためミトン型手袋をつ          ける」「ずり落ち防止のため、Y字型拘束帯等を使う」であり、これらは、施設が実際に行っている身体拘束の          全体の割合の上位3項目と同じである。 ◎線引きに苦慮している主な具体例 ● 『徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。』行為について ● 『転落しないように、ベッドに体幹やししをひも等で縛る』行為について ● 『自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。』行為について ● 『点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る』行為について ● 『点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限     するミトン型の手袋等をつける』行為について ● 『車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車いすテーブル をつける』行為について ● 『立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する』行為について ● 『脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる』行為について ● 『他人への迷惑行為を防ぐためにベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る』行為について ● 『行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる』行為について ● 『自分の意志で開けることのできない居室等に隔離する』行為について 問8 上記11項目以外で「拘束」若しくは「権利擁護を尊重すべき点」として取組んでいる項目   ・    目に見えない拘束を廃止する。 ・    言葉による拘束や虐待を予防するため、「言葉・行動マニュアル」を作成し、組織で徹底する。 ・    決められたタイムテーブルによる生活(時間的拘束)をできる限り、止める(減らす)等。 4 身体拘束廃止推進モデル施設について 問1 身体拘束廃止推進モデル施設(以下、「推進モデル施設」という)を知っているか ○ 推進モデル施設の認知度は、6割強である。         問1−@ 推進モデル施設をどのように知りましたか ○ 県のホームページにより、推進モデル施設を知ったという回答が最も多く、全体の4割弱を占めている。        問1−A 推進モデル施設の活用の有無  ○「相談した」、「見学した」及び「推進モデル施設が実施した研修会等に参加」を合計すると37.3%である。        5 身体拘束に関する意見・要望等、自由意見 特養 ・    ヒヤリハットや事故の発生の危険と身体拘束廃止との狭間で悩みながらサービスを提供している。 常に「これは身体拘束ではないか」「どうにかして拘束しないですむ方法はないか」と模索し、検討、 工夫しようとする姿勢こそが施設の共通認識として必要であり、大切なことであると考える。 身体拘束に留まらず精神的な拘束(言葉、環境整備等)についても考えを広げる事のできる職員育成、 施設作りに努める。 ・    職員一人ひとりのケアの質を上げることにより利用者の尊厳が守られると思う等。 老健 ・    転倒等のリスクと比較した際、どうしても行動の制限をしてしまう。まだまだ身体拘束廃止へ向けた     意識付けが全職員に対し不十分であり、今後も施設内勉強会、外部講習会への参加を通じ取組んでいく     必要性がある。 ・    開設して1年間は4点柵を中止することが出来なかったが、離床センサー等を導入し、職員の不安(転落     による怪我等)を取り除く努力をしたことと、何かあったら管理者が責任を取る姿勢を見せることにより     4点柵を中止することが出来た。先ずは職員の不安感を取り除くことが大切だと思う等。 療養型 ・    身体拘束「ゼロ」を目標にスタッフ一同カンファレンスを頻繁に重ねて取組んでいる。患者の安全、安楽     を考慮し1人でも1時間でも解除できるよう取組んでいきたい。 ・ 「身体拘束ゼロ」を目指して院内外の研修を実施している。今後、身体拘束 廃止の取組みをしている     他施設への見学等をしたいと考えている等。 指定特定施設 ・    継続的に職員同士が互いに初心に戻ること、人としてどうしてほしいかに立ち返ること(業務優先の頭を     外すこと)を確認し合う事が必要だと思う。 ・    身体拘束は人間としての尊厳を失わせ傷つけてしまうことのように感じる。以前、病院で身体拘束をされて     いた入居者が、その辛さからか、退院後、施設では険しい表情でベッド柵を1つすることさえも、拒否する     ことがあった。今では表情も穏やかになり人間らしさを取り戻したように感じる等。 GH ・    昨年、田舎で父を亡くした。1ヶ月程度の入院期間だったが、つなぎ服を着せられ四肢を抑制されていた。     「これを外して」と訴える父に、家族として何もしてやれなかった。私自身、父の人生はなんだったのか?     人としての尊厳とは何なのか?今でもその時の事が頭から離れません。拘束は家族も深く傷つくことを     忘れてはならない。 ・    身体拘束はケアする側の未熟さを反映していると思う。心(人格)と頭(知識)、手(技術)の研鑽に励む     べきだと思っている。高齢者への尊厳と愛の実践は、人生修行そのものと思う等。