はじめに     県では、「かながわ健康プラン21」に8020運動を位置づけて、う蝕予防及び歯周疾患対策等に取り組んでおりますが、歯科分野においては、喫煙と歯周疾患の関係や、歯周疾患が糖尿病・心臓疾患・呼吸器疾患・早産など全身へ与える影響も解明され、歯周疾患に関する予防知識や技術の普及強化の必要性が改めて問われています。  生活習慣病である歯周疾患の予防には、早期からの予防意識やセルフケア技術が大切であり、また、思春期世代が自分の身体をどのように感じとらえるのかというイメージ(ボディイメージ)は、現在の保健行動や将来の健康との間に深い関係があるといわれていることから、特に若い世代への普及啓発は重要です。  そこで、県では、「健康増進事業実施者支援事業」に平成16年度から18年度まで3年間にわたって取り組み、体験学習を組み込んだ歯周疾患予防教育事業をモデル高校(及び中学校)において実施しました。  この「ガイドブック」は、本事業の中で、思春期世代の人々に、歯周疾患予防の体験学習を通して、自分の健康と向き合い解決していく力を身につけていただくための手法として検討した「思春期の歯ぐき健康づくりプログラム」を推進するために作成しました。  今後、思春期世代の歯周疾患予防対策に取り組み、健康な歯と歯ぐきづくりとともに8020運動の推進を図っていくために、このガイドブックが少しでも皆さまのお役にたてたら幸いです。     平成19年3月                      神奈川県保健福祉部健康増進課長 猿田克年 「思春期の歯ぐき健康づくりプログラム」の実際   1 口腔の健康教育や清掃指導項目とねらい一覧   この表は、授業計画の際に、ねらいに応じた項目を選択し、プログラムを組み立てるために参考としていただくものです。 セルフチェック教育編 項目    ア 歯肉の観察“じっくりと自分の歯や歯肉(健康)と向き合って見よう!” ねらい   ・歯肉の色、形、腫れを観察し、自分の歯肉の元気度(健康状況)を知る。         ・健康な歯肉と病的な歯肉の状態を知ることで、日ごろからのセルフチェックを認識する。         ・喫煙などの全身との関連についても考える機会とする。 所要時間  5分 必要物品  写真、手鏡   効力感   いつまでも美しい歯肉保てるよ!     項目    イ 歯垢・歯石の観察“舌で触って観察しよう” ねらい   ・歯垢、歯石の違いを知る。 ・付着しやすい部位を知る。 ・効果的な歯みがきができているかの評価や、みがき癖・歯並びによるウイークポイントを認識する。 ・舌を使い、付着部位の感覚を実感する。 所要時間  5分 必要物品 写真、顎模型、手鏡   効力感   ぬるぬる感がつるつる感に変わるよ!   項目    ウ 歯肉出血の観察“歯肉の出血にご用心!!歯周疾患がしのびよっているかも?”   ねらい   ・糸ようじや唾液の潜血検査紙を使って、普段、自覚症状の無い歯肉からの出血状態(部位や程度)を知る。         ・歯肉からの出血を意識し、口腔内への関心を持つ。         ・歯肉の健康な部位と出血した部位で、歯肉にデンタルフロスが当たった(歯肉溝に入った)感覚の違いを知り、フロスによるセルフチェック方法を知る。 所要時間  10分 必要物品  模型、手鏡、糸ようじ、(唾液の潜血検査紙)   効力感   血が止まる。さようなら歯周疾患!     項目    エ 舌の観察“舌の色で今日の体調も測れるよ!”   ねらい   ・体調等により舌苔の付着状況や舌の色に変化があることを知る。         ・多量の舌苔は口臭の大きな原因になることから、舌の清掃の必要性も知る。 所要時間  5分 必要物品  写真、手鏡   効力感   クリーンな舌でいい息しよう! 歯科疾患予防の知識普及編   項目    ア 歯や歯周疾患に関する○×クイズ  ねらい   ・口の中に関心を持つ。         ・歯肉炎、歯周疾患の症状・原因・予防・改善についての知識を持つ。  所要時間  10分 必要物品  軍手又は厚紙、解説書   効力感   知識は力!   項目    イ 歯肉模型を用いた教育“模型を見ながら、客観的に考えてみよう!”    ねらい   ・模型や写真から、健康な歯肉や歯肉炎の状況、歯周疾患の進行状況を知る。         ・自分の歯肉に関心を持ち、セルフチェックの目を持つ。         ・生活リズムや食事の乱れは、口の中の不潔に繋がりむし歯をつくるだけでなく、歯肉への悪影響となることを知る。 所要時間  10分 必要物品  歯肉模型、写真、手鏡   効力感   君の力で実現できる!”自満の歯肉” 口腔清掃実技編   項目    ア 歯みがき実習“間違いだらけの歯みがきしていませんか?”   ねらい   ・歯垢を効果的に落とし、歯肉炎を改善する歯みがき方法を知る。         ・口腔内の爽快感を体験する。         ・日常の「歯みがき」へのモチベーションを高める。 所要時間  15分 必要物品  顎模型、歯ブラシ、手鏡   効力感   歯ブラシで知る 一生つき合う 君の歯   項目    イ 糸ようじ実習“生徒の好感度NO1プログラム” ねらい   ・歯と歯の間の汚れを取るには、デンタルフロス(糸ようじ等)が効果的であることを知る。         ・歯と歯の間を清潔にした時の爽快感を体験する。 所要時間  15分 必要物品  模型、パネル、糸ようじ、手鏡   効力感   隙間の掃除効果大!   項目    ウ 舌みがき実習“息さわやか効果大!” ねらい   ・舌の汚れは体の赤信号。まず、よく休もう。         ・舌にやさしいの清掃方法を知る。 所要時間  5分 必要物品  写真、歯ブラシ、手鏡   効力感   舌の元気は君の元気! 2 セルフチェック方法教育編      各セルフチェックを通じて、自分の口の中とじっくり向き合い、その改善の可能性が今後の歯や歯肉の健康管理の原動力になるような体験学習にしましょう。  生徒を男女別の、6人から7人程度のグループ形式にして進めるとよいでしょう。  (1)歯肉の観察      授業のポイント     健康な歯肉(ピチピチ歯ぐき)、心配な歯肉(プクプク歯ぐき・お疲れ歯ぐき)の違いを知らせ、鏡を見ながら自分の歯肉の健康セルフチェックをさせましょう。     また、喫煙による悪影響は歯が着色するだけでなく、歯肉の色も黒ずみ、歯を早く失う歯周疾患につながることを知らせましょう。     効力感へのメッセージ      これからのケア次第で、若い君たちの歯肉は美しく蘇るんだよ!   ○ 用意するもの      歯肉の写真、記録用紙(資料編)、手鏡   ○ 実習の手順      ステップ1       内容 健康な歯肉の色・状態と心配な歯肉の症状の理解       手順 写真で健康な歯肉と心配な歯肉の色や形について、見分け方を説明。      ステップ2       内容 セルフチェックと記録        手順 (1)手鏡を持たせ、歯肉の色や形を観察させる。          (2)記録用紙に、気になる部位(腫れ・赤みが強い部分)を赤鉛筆で記入させる。