角丸四角形: かながわ自殺総合対策指針 

 


平成23年3月

 

神 奈 川 県


 

目 次

 

1 指針策定にあたって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

 

2 神奈川県における自殺をめぐる現状と課題・・・・・・・・・・・・ 2

(1)現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

  ア 統計からみた現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

  イ 県民ニーズ調査結果からみた現状・・・・・・・・・・・・・・ 2

  ウ これまでの取組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

(2)課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

 

3 自殺対策の基本的な考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

<自殺対策の基本認識>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

(1)「自殺は追い込まれた末の死」・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

(2)「自殺は、その多くが防ぐことのできる社会的な問題である」・・ 5

(3)「自殺を考えている人は悩みを抱え込みながらもサインを

発している」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

<基本的考え方>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

(1)社会的要因も踏まえ総合的に取り組む・・・・・・・・・・・・・ 5

(2)県民が主体となるよう取り組む ・・・・・・・・・・・・・・・ 6

(3)事前予防、危機対応、事後対応に取り組む・・・・・・・・・・・ 6

(4)あらゆる分野の関係者が連携して支える・・・・・・・・・・・・ 6

(5)地域の実態に合わせて取り組む・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

(6)中長期的視点に立って、継続的に進める・・・・・・・・・・・・ 6

 

4 今後の自殺対策の方向性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

(1)数値目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

(2)対策の方向性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

 ア 世代別の方向性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

(ア)青少年(30歳未満)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

(イ)中高年(30歳から64歳)・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

(ウ)高齢者(65歳以上)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

 イ 動機別の方向性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

(ア)健康問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

(イ)経済・生活問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

(ウ)勤務問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

(エ)家庭・学校問題等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

 

5 重点施策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

(1)地域の自殺の実態を分析する・・・・・・・・・・・・・・・・・10

(2)自殺対策に関する普及啓発を推進する・・・・・・・・・・・・・10

(3)早期対応の中心的役割を果たす人材(ゲートキーパー)を養成

する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

(4)あらゆる場面において、心の健康づくりを進める・・・・・・・・12

(5)うつ病の早期治療につなげるための取組み等うつ病対策を進める・13

(6)精神疾患等のハイリスク者対策を進める・・・・・・・・・・・・15

(7)社会的な取組み、環境整備を進める・・・・・・・・・・・・・・15

(8)自殺未遂者支援を進める・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17

(9)遺された人への支援を進める・・・・・・・・・・・・・・・・・18

10)様々な分野の関係機関・民間団体との連携を強化する・・・・・・18

 

6 推進体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

 

参考資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20


1 指針策定にあたって

 

全国の自殺者数は、平成10年以降12年連続して約3万人という深刻な状況であり、本県の自殺者数も平成10年に急増し、以降、毎年1,6001,900人台で推移している。

特に中高年の男性の自殺者が急増し、今後、この世代が高齢者層に移行するにつれ、問題が深刻化することが懸念されている。国は「自殺対策基本法」の制定(平成1810月施行)や「自殺総合対策大綱」を策定(平成19年6月)し、地方公共団体をはじめ医療機関、自殺の防止等に関する活動を行う民間団体等と密接な連携を図り、国を挙げて自殺対策を推進することとした。

県は、自殺対策を推進するため、様々な分野の関係機関・団体により構成される「かながわ自殺対策会議」を政令指定都市と共同設置し、県民に対する普及啓発、相談事業などの対策を実施してきたが、これまでの取組みを踏まえ、今後更に総合的に自殺対策を推進するため、自殺対策の基本的考え方、方向性、公民の役割などを内容とする「かながわ自殺総合対策指針」を作成した。

これにより、地域の多様な機関・団体等との連携・協力を確保しつつ、「健康で生きがいをもって暮らすことのできる社会」「孤立しない 地域づくり」を目指し、県民一人ひとりが主体となって取り組めるよう働きかけ、県全体で自殺対策を推進していく。

なお、この指針は、平成29年度までの中長期的な方向性を示すものであるが、社会経済情勢の変化や大綱等の見直しがあった場合は、必要に応じて見直しを行う。


2 神奈川県における自殺をめぐる現状と課題

(1)現状

ア 統計からみた現状

(ア)人口動態統計

(日本における日本人を対象 住所地を基に死亡時点で計上)

 

     全国の自殺者は、平成10年以降12年連続で約3万人という深刻な状況が続いている。本県においても、約1,600人から約1,900人の自殺者があり、自殺者数の年次推移は全国の状況と概ね同じ傾向となっている。平成21年の自殺者数は1,908人で、全国で3番目に多いが、自殺死亡率は21.6で全国40位となっており、昭和40年以降、概ね30位台後半から40位台と一貫して低位にある (自殺死亡率とは人口10万人に対する自殺者数の割合である)

     平成20年における死因別の自殺の状況を年齢階級別でみると、1539歳の死因の第1位は自殺となっており、4049歳では、悪性新生物に次いで自殺が第2位、また、5054歳では、悪性新生物、心疾患に次いで自殺が第3位となっている。これらの年代における自殺の順位は全国と同様であるが、構成割合は、40代を除き、全国よりやや高い結果となっている。

 

(イ)警察統計

(総人口(日本在住外国人含む)を対象 発見地を基に自殺死体発見時点で計上)

 

警察統計によると、平成21年の神奈川県の自殺者の状況は、男女の構成割合では概ね男性7割、女性3割となっている。

内訳としては、男性は団塊の世代を含む60歳代、50歳代が多く、原因・動機別では「健康問題」と「経済・生活問題」が上位を占めている。女性は30歳代、70歳代以上の順で多く、原因・動機別では「健康問題」次いで「家庭問題」の順となっている。(原因・動機のいずれも重複回答であり、「不詳」を除く。)

また、職業別の状況は、「無職者」(学生・主婦・年金生活者等を含む職についていない人)が半数以上を占めている。なお、男女の構成割合と職業別状況はほぼ全国と同様の結果である。

 

イ 県民ニーズ調査結果からみた現状

(平成22年度県民ニーズ調査【第1回課題調査】)

  自殺者数の認知度について、神奈川県で毎年多くの方が自殺で亡くなっていることを知っていた人は2割台で、自殺者が多いことは知っていたが、詳しくは知らなかった人が6割となった。

自殺やその対策についての意識では、「自殺対策は、社会全体で取り組む必要がある」 と思う人が8割を超えており、「自殺者を減らす取組みによって、暮らしやすい社会に変えていくことができる」と思う人は6割であった。また、「自殺は個人の自由な意思や選択の結果である」と思う人は2割弱、思わない人は約6割、次いで「自殺は本人の弱さから起こることである」と思う人は3割弱、思わない人が5割台となった。

    身近な人から「死にたい」と打ち明けられたときの対応については、    「よく話しを聴く」が6割台で最も多く、次いで「死にたい理由を尋ねる」が約2割であった。

  自殺対策として県などに充実させてもらいたいことは、「学校での『いのちの教育』」が5割台で最も多く、「高齢者の孤立を防ぐ対策」、「雇用・労働相談の実施」、「孤立化しやすい人を支える地域のネットワーク」が続いた。

この1年の間に「死にたい」と思うほどの悩みやストレスがあったかどうかについて、「全くなかった」が7割、「時々あった」と「よくあった」を合わせた「あった」は約1割であった。悩みやストレスの原因は、「家族との人間関係」、「生活費の問題」がともに3割台となり、「職場・学校での人間関係」が続いた。

心の悩みの相談先としては、「家族・親族」が6割台で最も多く、次いで「友人・知人」は5割台、「医療機関の専門家・カウンセラー」が2割台となった。また、「誰にも相談しない」は1割となった。

    心の健康に関する相談窓口の認知度、利用状況・意向については、「保健福祉事務所(保健所・福祉保健センターなど)」を「知っている」人は4割台で、「精神保健福祉センター(横浜市は『こころの健康相談センター』)」を「知っている」人は3割台となった。また、「保健福祉事務所(保健所・福祉保健センターなど)」を「利用したことがある・利用してみたい」人、「精神保健福祉センター(横浜市は『こころの健康相談センター』)」を「利用したことがある・利用してみたい」人はともに2割台であった。

 

  ウ これまでの取組み

県内では、これまで自殺の大きな要因となる、うつ病への理解や普及啓発を図ってきたが、平成18年の自殺対策基本法の制定を受け、自死遺族の支援を含めた総合的な自殺対策を推進してきた。

自殺の背景には、健康問題、勤務問題や、経済・生活問題など、様々な要因があることから、平成19年度には県内の様々な分野の関係機関・団体を構成員とする「かながわ自殺対策会議」を政令指定都市と共同設置し、自殺対策の効果的な推進体制を整備し、進行管理も行ってきた。

また、警察統計・人口動態統計の分析、ゲートキーパーなどの人材養成、自死遺族を対象とした集いや相談、自殺対策シンポジウム・講演会、街頭キャンペーンなどの普及啓発活動に取り組んできた。

  

(2)課題

神奈川県は33市町村から成り立ち、政令指定都市3市をはじめ人口規模の違いが大きく、地域の特性も都市部、山間部、農・漁村部と多様である。自殺の状況も地域により異なることから、年齢・性別をはじめとして、それぞれの地域の自殺の実態を踏まえた効果的な対策を実施していく必要がある。

また、自殺は複数の要因が関係しており、社会的要因を含めた様々な要因に対する対策が必要であるが、年代や性別に関わらず自殺の原因・動機別では「健康問題」が多く、中でもうつ病が多いという状況がある。

本人や周囲の人が自殺のサインに早期に気づき対応できるよう、普及啓発や人材養成を更に強化し、相談体制の整備・充実を図ることが課題である。

さらに、自死遺族や自殺未遂者への支援や、自殺が多く発生する場所における対策など、事後対応や危機介入を含め、より一層の取組みの推進が課題となっている。


3 自殺対策の基本的な考え方

 

<自殺対策の基本認識>

(1)「自殺は追い込まれた末の死」

   自殺は個人の自由な意思や選択と思われがちであるが、実際には、様々な要因が複雑に関係して、心理的に追い込まれた末の死といえる。

   自殺の直前にはうつ病などの精神疾患を発症していることが多い。

 

(2)「自殺は、その多くが防ぐことのできる社会的な問題である」

   制度・慣行の見直しや相談・支援体制の整備など社会的な取組みと、うつ病などの精神疾患への適切な治療により、自殺の多くは防ぐことができる。

 

(3)「自殺を考えている人は悩みを抱え込みながらもサインを発している」

   自殺を図った人が、精神科医などの専門家に相談している例は少ないと言われている。

   身近な人は、不眠、体調不良などの自殺の危険を示すサインに気づいていることもあり、この気づきを自殺予防につなげていくことが重要である。

 

<基本的考え方>

自殺には、健康問題、経済・生活問題、人間関係の問題、地域・職場環境、家族状況、死生観などの要因が複雑に関係しているので、県、市町村、関係機関、民間団体等が連携し、県民一人ひとりが主体となって、県全体で取り組む。

 

(1)社会的要因も踏まえ総合的に取り組む

角丸四角形: つらくなったら、誰かに相談できる社会をつくる
 

 


ア うつ病の早期発見、早期治療等うつ病対策を推進する。

 

イ 働き方の見直しなどを行い、失業や多重債務等の相談体制を充実させる。

 

  ウ 自殺や精神疾患に対する知識を普及啓発し、偏見をなくすよう取り組む。

  

  エ 適切な報道が行われるようマスメディアに協力を求めていく。

 

(2)県民が主体となるよう取り組む

角丸四角形: みんなで見守り、相談しやすい社会をつくる
 

 


ア 県民自身が心の健康問題の重要性を理解するよう普及啓発を図る。

 

  イ 気づき、見守り、相談や治療につなげられる地域社会をめざす。

 

ウ 県民一人ひとりが自殺予防の主体となるよう広報教育活動等に取り組む。

 

(3)事前予防、危機対応、事後対応に取り組む

角丸四角形: 相談を受けたら対応できる場所と人材をつくる
 


 

  ア 心身の健康の保持増進、自殺や精神疾患の知識の普及啓発を図る

(事前予防)。

 

  イ 自殺の危険に介入し、自殺を防ぐ(危機対応)。

 

  ウ 未遂者や遺族への支援を行う(事後対応)。

 

(4)あらゆる分野の関係者が連携して支える

角丸四角形: 相談できる場所はたくさんあることを知らせる
 

 


ア 様々な分野の人々や組織が密接に連携して、包括的に支援する。

 

(5)地域の実態に合わせて取り組む

 

ア 自殺の実態解明のための調査研究を行い、地域分析を進める。

 

イ これまでの調査研究、知見を基に、地域の実態に合わせた施策を行う。

  

(6)中長期的視点に立って、継続的に進める

 

ア 施策の評価をしつつ、継続的に取組みを進める。


4 今後の自殺対策の方向性

  自殺総合対策大綱で示された国の数値目標を踏まえ、県としては、「かながわ健康プラン21(改定計画)」(平成203月策定)で示された到達目標を達成できるよう努めるとともに、一人でも多くの自殺を考えている人を救うことができるよう、世代別、動機別などの対策の方向性について、共通認識をもち、推進していく。

 

(1)数値目標

   かながわ健康プラン21(改定計画)で示された到達目標

   平成29年度までに平成17年の自殺者数を20%以上減少させる。

自殺総合対策大綱の数値目標

       平成28年までに平成17年の自殺死亡率を20%以上減少させる。

 

(2)対策の方向性

  ア 世代別の方向性

(ア)青少年(30歳未満)

    青少年の自殺者数は少ないものの、15歳以上の青少年の死因の第1位は自殺であることからも深刻な状況である。思春期は精神的な安定を損ないやすく、青年期は進学、就職などの環境の変化などから大きなストレスを受けている。また、いじめを苦にした子どもの自殺が発生するなど、青少年の自殺対策は大きな課題である。

    児童生徒に対する自殺予防に資する教育と教職員に対する対応方法の普及啓発等の取組みを充実させるほか、自殺未遂や自殺が発生した場合の児童生徒等への心理的ケアの体制づくりを行う必要がある。

    また、ひきこもり、就職難、就職後の不適応など困難を抱える青少年や若い親の子育てへの支援と、18歳未満の青少年がインターネット上の自殺勧誘等の有害情報を閲覧することを防止するためのフィルタリングの普及などの社会的な取組みが必要である。

 

(イ)中高年(30歳〜64歳)

   中高年は、家庭、職場などで、様々な困難を抱える時期である。出産、子育て、子の独立、退職、更年期、親の介護・死別など心理的にも社会的にも負担を抱えることが多い。自殺者数、自殺率ともに高い傾向である。うつ病やアルコール依存症、身体的疾患にもかかりやすい年代でもあり、ハイリスク者対策の充実を進める必要がある。

また、この年代は労働者が多く、職場のメンタルヘルス対策が重要である。長時間労働、失業などの対策の推進と、趣味や地域活動への参加などワークライフバランスの考え方、取組みの普及も推進していく必要がある。

 

(ウ)高齢者(65歳以上)

     高齢者は、慢性疾患や健康不安、介護疲れ、近親者の喪失体験、孤独などの課題を抱えて生活していることが多い。核家族化、顔の見える地域社会の崩壊などから、高齢者の単身世帯、高齢者が介護をせざるを得ない世帯などが増えている。高齢者の抱える様々なストレスから、うつ病になることも多い。身体疾患による通院機会が多いことから、かかりつけ医と精神科医との連携強化によるうつ病の早期発見、治療を進めることが重要である。

また、地域の在宅介護者への支援、孤立をさせない見守りや交流機会の創出など、地域に根ざした高齢者支援体制の充実が必要である。

 

  イ 動機別の方向性

(ア)健康問題

     うつ病対策の一層の推進

     『かながわ健康づくり10か条』に基づく目標に向けた取組みの推進

     アルコール関連問題対策の推進

地域、学校、職場におけるメンタルヘルス対策の推進

     ライフステージに合わせたメンタルヘルス対策の推進

 

(イ)経済・生活問題

     多重債務問題への対策の推進

     失業者対策の推進

     ワンストップ相談会の推進

     法テラス神奈川の活用の推進

 

(ウ)勤務問題

    職場のメンタルヘルス対策の推進

    神奈川産業保健推進センター、地域産業保健センター、労働基準監

督署の活用

    職場のハラスメントをなくす啓発活動の推進と相談体制の充実

     ワークライフバランスの推進

 

(エ)家庭・学校問題等

     育児、いじめ、青少年のひきこもり、家庭内暴力、家庭内不和、配偶者等からの暴力、介護、社会的孤立等の問題に関する相談体制の充実


 

5 重点施策

  現在実施している施策の中で更に推進すべき重点施策及び今後重点的に取り組むべき施策について設定する。

 

(1)地域の自殺の実態を分析する

自殺の実態解明に関する調査研究を行うとともに、国や専門機関の調査結果を把握し、地域の自殺対策に反映できるよう、情報提供を推進する。

 

  ア 地域に即した調査・分析の推進

   ・ 精神保健福祉センター及び自殺予防情報センターにおいて、自殺の 実態解明に関する調査研究及び統計分析を行う。

 市町村と情報を共有し、協力して調査研究を行う。

 

  イ 情報収集提供体制の充実

 国、市町村、関係機関、団体と連携を図り、情報の収集・提供を行い、相互に活用する。

・ かながわ自殺対策会議において、警察本部の協力を得て、自殺統計の分析を行い、関係機関への情報提供を進める。

  

  ウ 関係機関、団体との連携により、自殺未遂者、遺族の実態及び支援について、調査研究を進める。

 

  エ 児童生徒の自殺予防についての調査を推進する。

 

(2)自殺対策に関する普及啓発を推進する

県民の自殺対策の重要性に対する関心と理解が深まるよう、普及啓発活動を推進する。

 

  ア 県民に対する普及啓発事業の実施

   ・ 自殺予防週間(9月10日からの一週間)に合わせて、街頭キャンペーンなどの普及啓発事業を実施する。

・ 自殺対策強化月間(9月に実施する九都県市自殺対策キャンペーン)に統一標語「気づいてください!体と心の限界サイン」を掲げ、シンポジウム、講演会などの普及啓発事業を実施する。

   ・ 自殺予防及び自死遺族への理解と支援を広めるため、県民にわかりやすいシンボルとしてカラーリボンを活用し普及啓発を推進する。

 

  イ 児童生徒の自殺予防に資する教育の実施

 自分の大切さとともに他の人の大切さを認めることができるよう、学校における教育活動全般を通じて取り組む。

 「いのち」を大切にする心をはぐくむ教育を実施する。

   ・ 違法、有害情報対策を推進する。

 学校向け自殺対策冊子による普及啓発を推進する。

 

(3)早期対応の中心的役割を果たす人材(ゲートキーパー)を養成する

自殺の危険性の高い人の早期発見、早期対応を図るため、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応を図る「ゲートキーパー」の役割を担う人材を養成する。

 

ア かかりつけの医師等のうつ病等の精神疾患の診断・治療技術の向上

 うつ病等の精神疾患の患者は、身体症状を伴うことが多く、かかりつけの医師等を初めに受診することが多いことから、適切なうつ病等の診断・治療技術及び精神科医や地域の相談機関との連携方法等を習得するための研修を実施する。

 

  イ 教職員に対する研修の実施

 教職員を対象とした学校における自殺対策等に関する「出前講座」を実施する。また、既存の教職員対象の研修カリキュラムに、自殺対策及びメンタルヘルスに関するカリキュラムを増やす。

 

  ウ 地域保健や産業保健関係職員の資質の向上

 自殺対策にかかわる保健福祉事務所や市町村職員等に対する研修を実施する。

 職場におけるメンタルヘルス対策を推進するため、産業保健関係職員の資質向上のための研修を実施する。

 

  エ 地域での自殺対策に関する指導者養成研修の実施

 保健福祉事務所等の職員を対象に、地域で開催する人材養成研修の講師を担う指導者養成研修等を実施する。

 

オ 介護支援専門員等への研修の実施

 介護支援専門員等への研修、情報提供を通じて、高齢者の自殺予防に関する知識、理解の普及を図る。

 

  カ 民生委員・児童委員、健康普及員等への研修の実施

 民生委員・児童委員、健康普及員に対し、心の健康づくりや自殺予防等に関する研修を行い、身近な地域の「気づき」「つなぎ」「見守り」を進める。

※ 市町村では「こころサポーター」の名称で養成していることが多い。

 

  キ 社会的要因に関連する相談員の資質の向上

 多重債務相談窓口、商工会議所等の経営相談窓口等の相談員に対して、メンタルヘルス及び自殺対策に関する知識と理解の普及を図る。

 

  ク 遺族等に対応する公的機関の職員の資質の向上

 警察官、消防職員等に対して、適切な遺族への対応等に関する知識と理解の普及を図る。

 

  ケ 研修用テキストの更新及び普及、新たな対象者向けテキスト作成

 こころといのちのサポート(自殺対策)テキスト、「こころサポーター」養成研修テキスト、「わたしのこころサポート講座」テキスト等を適宜更新し、普及を図る。

   ・ 様々な対象者向けの研修用テキストを作成する。

 

  コ 自殺対策従事者への心のケア対策の推進

   ・ 公的機関、民間団体等関係機関の自殺対策に従事する関係職員の心のケア対策を推進する。

 

(4)あらゆる場面において、心の健康づくりを進める

心の健康の保持・増進のための職場、地域、学校等における体制整備を更に推進する。

  

ア 職場におけるメンタルヘルス対策の推進

 事業主の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づくメンタルヘルス対策の取組みを促進するとともに、『職場における自殺の予防と対応』等を活用し、自殺対策の知識の普及と啓発を図る。

 メンタルヘルス対策支援センターの活用を促進する。

 従業員へのメンタルヘルスのみならず、中間管理職、監督者等に対するメンタルヘルス対策も充実させる。

 

  イ 地域における心の健康づくり推進体制の整備

 保健福祉事務所、保健所、市町村保健センター等における心の健康問題に関する相談機能を充実させ、地域保健、産業保健との連携を強化する。

   ・ 高齢者や女性等様々な対象、課題に対する相談・支援機関との連携体制を強化する。

 憩いや交流の場等の生活環境づくりを推進する。

 精神保健福祉ボランティアグループ等県民による身近な地域の支え合いの活動を推進する。

 

  ウ 学校における心の健康づくり推進体制の整備

 スクールカウンセラーを活用し、教育相談コーディネーターを核とした相談体制の強化を図る。

 地域の保健、医療、福祉等関係機関との連携を強化し、地域ぐるみで児童生徒の心の健康づくりを推進する。

 児童生徒のメンタルヘルスの保持増進及び自殺対策の取組みを推進するとともに、教職員のメンタルヘルス対策も推進する。

 

(5)うつ病の早期治療につなげるための取組み等うつ病対策を進める

自殺を図った人の多くは、直前にうつ病等の精神疾患にかかっており、中でもうつ病の割合が高いことから、うつ病等の早期発見、早期治療を図るための取組みを進める。

 

 ア うつ病の知識と理解を進め、偏見をなくすための普及啓発活動の推進

 睡眠キャンペーンや講演会等の普及啓発活動やチラシ配布、ホームページ等の広報媒体の活用による普及活動を推進する。

 

  イ 精神科医療体制の充実

 地域の精神科医療機関を含めた保健、医療、福祉等のネットワーク体制を充実する。

 

  ウ かかりつけの医師等のうつ病等の精神疾患の診断・治療技術の向上【再掲】

 適切なうつ病等の診断・治療技術及び精神科医や地域の相談機関との連携方法等を習得するための研修を実施する。

 

  エ かかりつけ医師等と精神科医師との連携体制強化

 かかりつけ医師等がうつ病と診断した人を精神科医につなげるための地域の日常的な連携体制を構築し強化する。

 

  オ 小児科医師と精神科医師との連携体制強化

 かかりつけの小児科医師と精神科医との地域の連携体制を構築し強化する。

 

  カ 精神医療関係者への研修の充実

   ・ 精神科医師、看護師等精神医療関係者へ、診療等の質の向上のための研修を実施し、認知行動療法等先進的療法の普及を図る。

 

  キ 地域保健機関、産業保健機関、介護予防事業者等でのうつ病の早期発見と早期治療へつなげるための体制整備

 地域の保健福祉事務所、保健所、市町村保健センター、地域産業保健センター、介護予防事業者等での訪問活動、住民健診、健康相談の機会を活用し、うつ病の早期発見、治療につなげる。

 

  ク うつ病家族セミナー・うつ病当事者セミナー等の当事者支援の充実

   ・ うつ病の方の家族を対象に、うつ病の治療、対応について学ぶ家族セミナーの開催を推進する。

 うつ病で休職している方を対象に療養生活と復職にむけての適切な支援、再発防止を目的とした当事者セミナーの開催を推進する。

ケ うつ病等の職場復帰プログラムに関する情報提供の充実

   ・ うつ病で休職している方に、うつ病等の職場復帰プログラムを実施している医療機関や関係機関の情報へのアクセスの向上を図る。

 

(6)精神疾患等のハイリスク者対策を進める

   精神疾患をもつ方が適切な医療を受けられるような体制整備を図るとともに、支援に当たる関係者の資質の向上を図る。また、失業者や生活困窮者、独居者等の支援を充実する。

 

  ア 統合失調症、アルコール依存症、薬物依存症、自傷行為者、思春期・青年期の精神的問題を抱える者等に対する支援体制の整備推進

 継続的な治療・支援を行うための体制を整備し、自助活動に対する支援を行う。

 精神科医療関係者、回復支援にかかわる民間団体職員に対して、資質及び対応力向上のための研修を行う。

 

  イ 失業者や生活困窮者への支援の充実

 ハローワークの総合相談及び地域の労働、福祉、保健、医療関係機関の連携体制の充実により、失業者や生活困窮者への相談を包括的に行う。

 

  ウ 行方不明者の発見活動

 自殺のおそれのある行方不明者の発見活動を実施する。

 

  エ 慢性疾患患者等に対する支援体制の整備

 重篤な慢性疾患に苦しむ患者等からの相談に対し、適切な心理的ケアが実施できる医療体制の整備を行う。

 

(7)社会的な取組み、環境整備を進める

自殺の要因の背景となるような制度、慣行を見直し、相談支援体制の整備・充実を図るとともに、ハイリスク地対策等を推進する。

 

  ア 地域における相談体制の充実

 育児、青少年のひきこもり、配偶者等からの暴力等の家庭の相談、学校、職場、生活、健康等についての住民向け相談窓口一覧を掲載したパンフレット等の配布・周知を図る。

 関係機関の連携により、ワンストップ相談会を定期的に開催する。

 「人権・子どもホットライン」、「子ども・家庭110番」等の子どもにかかわる相談窓口の周知を図る。

 

  イ 経済的問題・法的問題に対する相談支援の充実

 多重債務者及び失業者に対する相談窓口体制を充実する。

 現状の社会資源を活用した中小企業経営者向けの相談を充実する。

 法テラス神奈川、横浜弁護士会及び神奈川県司法書士会の行う多様な法律相談等の法的問題解決のための情報提供を充実する。

 

  ウ ハイリスク地対策の推進

 自殺多発地域や高層建築物、鉄道駅等における安全確保対策を推進する。

 自殺多発地域の効果的な取組みのあり方について検討する。

 危険な薬品等の規制を遵守するよう周知を徹底する。

 

  エ インターネット上の自殺関連情報対策の推進

 インターネット上の自殺予告事案に対する迅速、適切な対応を実施する。

 インターネット利用者からの違法、有害情報に関する通報を受けつけ、サイト管理者に削除を依頼するインターネットホットラインセンターの周知を行う。

 18歳未満の青少年に対し、自殺勧誘等の有害情報の閲覧を防止するため、フィルタリングの普及や、インターネットの適切な利用に関する教育及び啓発活動を推進する。

 

  オ 介護者への支援の充実

 地域包括支援センター等と地域関係機関との協力体制の充実を図る。

 介護者のセルフヘルプグループ活動の促進を図る。

  カ いじめを苦にした子どもの自殺の予防

 「いじめ110番」「ユーステレホン」等の相談を周知し、いじめを早期に発見する地域の体制整備を充実する。

  

キ マスメディアへのはたらきかけ

 世界保健機関の「自殺予防 メディア関係者の手引き」の報道関係機関に対する周知を図る。

  

ク 制度・慣行の見直し

    自殺の要因ともなっている制度、慣行について、問題提起し検討して必要な提言を行っていく。

 

(8)自殺未遂者支援を進める

   自殺未遂を図った人は、自殺の危険が高いことから、未遂者への支援を進めていく必要がある。

 

  ア 救急医と精神科医との連携強化

 自殺未遂者が自殺を図り救急搬送された際に、再び自殺企図を繰り返すことがないよう、救急医と精神科医との連携体制整備を行う。

 

  イ 精神科救急医療体制の充実

 症状に応じた迅速で適切な医療を身近な場所で受けられるよう、精神科救急医療体制の充実を図る。

 

  ウ 自殺未遂者のケア等の研修

 精神科救急医療従事者等に対する自殺未遂者ケアに関する研修を実施する。

 

  エ 自殺未遂者の相談支援体制の充実

 自殺未遂者支援に携わる職員の研修を実施し、地域の関係機関の連携による相談支援体制の充実を図る。

 身近な人の見守りを支援し、継続的なケアを行うための地域ネットワーク体制を整備する。

 

(9)遺された人への支援を進める

遺された人へのケアを行うとともに、遺族のための集いや自助グループ支援等を民間団体と連携して行う。遺族の集いなどは、居住地では参加しづらいという方もいることから、参加しやすい環境に配慮して、包括的広域的に支援を進めていく。

 

  ア 遺族のための集いの機会の提供及び自助グループへの支援

 精神保健福祉センターなどが開催する遺族のための集いの開催や、地域の民間団体が開催する自助グループの活動を支援する。

 

  イ 遺族を対象とした相談体制の充実

   ・ 遺族が相談しやすい相談体制を充実する。

 

  ウ 学校、職場での事後対応の促進

 学校、職場での自殺や自殺未遂の発生直後の周りの人々に対する心理的ケアが的確に行われるよう、対応マニュアルやパンフレットを作成し、提供する。

 

  エ 遺族への関連情報の提供の推進

   ・ 遺族のための相談窓口一覧や民間団体の連絡先を掲載したパンフレットを作成・配布し、情報が届くよう、様々な媒体で提供を行う。

 

10)様々な分野の関係機関・民間団体との連携を強化する

自殺は、様々な要因が複雑に関係して起きるので、関係機関の連携が重要である。また、民間団体との連携も推進していく。

 

  ア 地域における連携体制の整備、強化

   ・ 地域における公的機関、関係機関、民間団体、ボランティア団体との連携体制を整備、強化する。

 

  イ 民間団体との連携強化

 人材育成に関する相互の協力を行うとともに、民間団体の実施する先駆的な自殺対策を支援する。

 自死遺族等の集いの開催やグループ活動支援などの取組みを、民間団体との連携により推進していく。


6 推進体制

県内の司法、報道、保健、医療、労働、経済、福祉、教育などの様々な関係機関や民間団体、行政機関で構成された「かながわ自殺対策会議」により、情報共有、連携強化を図り、自殺対策を総合的に推進する。また、同部会では、自殺対策に関する普及啓発事業について検討を行い、県民一人ひとりに伝わる普及啓発活動を牽引する。

県、横浜市、川崎市、相模原市は、「かながわ自殺対策会議」を共同設置し、協力して県全体の自殺対策を総合的に推進する。県及び政令指定都市は、広域調整及び広域専門領域の自殺対策を行い、市町村等への協力を行う。

市町村は、身近な地域の住民向けの普及啓発や人材養成等の自殺対策を行い、庁内連携を図り、地域住民の「気づき」「つなぎ」「見守り」を促す。

 

テキスト ボックス: 住 民