神奈川県衛生研究所

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[2010.2.3掲載]

  最近、ソフトコンタクトレンズを使用していると重篤な角膜炎を起こして、失明することがあるというニュース報道がありました。
  この原因は、微生物のアカントアメーバと呼ばれるアメーバの1種で、このアメーバによる角膜炎をアメーバ性角膜炎といいます。アカントアメーバという耳慣れない名前ですが、このアメーバ(原虫の一種)はごく身近な生き物です。重症化すると失明に繋がる恐れもあるので、日頃からコンタクトレンズの取り扱いには、十分注意が必要です。
  平成21年12月に国民生活センターが「ソフトコンタクトレンズ用消毒剤のアカントアメーバに対する消毒性能」について調査した結果を公表しました。発表資料によると、回収したソフトコンタクトレンズケア用品全体の10%にアカントアメーバ汚染の痕跡があり、アカントアメーバ角膜感染症を発症する可能性がありました。
一口知識: アカントアメーバとは アメーバ性角膜炎とは
おかしいと思ったらすぐに受診しましょう
アメーバ性角膜炎の予防に向けて
コンタクトレンズの取り扱い上の注意について


アカントアメーバとは

  アカントアメーバは、世界中の土壌、湖沼、池、河川などの自然あるいは噴水などの人工の水環境中に広く生息している、自由生活性アメーバと呼ばれるアメーバの1種です。アメーバには、盛んに増殖してアメーバ運動を行う時期の「栄養体」と、強固な殻に覆われて休眠状態となっている時期の「嚢子(シスト)」の2つの形態があります。
  アメーバは栄養体のときに、細菌を捕食して栄養源とし、2分裂により数を増やします。細菌がいなくなったり乾燥した状態など、生息場所の環境が悪くなると、殻をかぶって嚢子になります。
  嚢子は、殻があるために乾燥にも強く、消毒薬も効果がありません。さらに嚢子は、ほこりなどと一緒に空中を舞い、広がっていくこともできます。そのため、レンズケースなどに入って増えないように、日頃から注意が必要となります。

(微分干渉像)
ギムザ染色像
(ギムザ染色像)
 
アメーバ性角膜炎とは?

  アメーバ性角膜炎は、アカントアメーバが偶発的に角膜で増えることにより起こります。1974年に英国で発生した症例が、世界で初めて報告されており、その後もしばらくの間は、わらくずなどが目に入り、角膜を傷つけることで発生するなど、非常にまれな疾病でした。
  ところが、1980年代に入り、コンタクトレンズの普及とともに、アメーバ性角膜炎の患者が増加しました。日本では、1988年に最初のアメーバ性角膜炎の症例が報告され、以後も患者は増える傾向にあります。
  アカントアメーバが目に入った場合、角膜に小さな傷などがあると、そこから角膜に深く侵入して増殖し、アメーバ性角膜炎を引き起こします。
  感染すると、目の激しい痛み、赤目、流涙、強い光を見たときの痛み、視力障害(見たものがかすむ)などが症状として現れます。角膜は炎症のために白濁して視力が低下し、最悪の場合には失明することもあります。

 
おかしいと思ったらすぐに受診しましょう!!

  コンタクトレンズを使用していて、このような症状や、眩しい、ゴロゴロ感がある、といった異常を感じたら、できるだけ早く眼科を受診しましょう。
  治療が遅れるほど完治が難しくなり、失明に繋がる危険性もあります。

 
アメーバ性角膜炎の予防に向けて!

  目をこすって角膜などを傷つけると、アメーバや細菌などが、角膜の奥まで侵入しやすくなり、角膜炎などの炎症を起こしやすくなりますので、目にゴミなどが入った場合でも、目をこすらないように注意しましょう。
  いっぽう、コンタクトレンズを使用する場合には、ほこりなどといっしょに細菌やアメーバがコンタクトレンズの保存液や精製水などに侵入しないよう気をつけるとともに、ケースなどにアメーバや細菌が付着しないよう注意しましょう。
  また、コンタクトレンズの保存液などの中で、これらアメーバなどが増えないように注意することも大切です。日頃から、コンタクトレンズの取り扱いに注意しましょう。

 (微生物部 黒木俊郎)
~ コンタクトレンズの取り扱い上の注意 ~
☆  石鹸と流水(水道水)で手を洗い、汚れた手でコンタクトレンズや保存液、精製水を扱わないようにしましょう。
コンタクトレンズの洗浄は、説明書に従って正しく行いましょう。
保存液の調整には、水道水や井戸水を使わないようにしましょう。
精製水や保存液を汚さないように保管し、できるだけ早めに使い切るようにしましょう。
容器などの蓋を開けたままにしておくと、アメーバや細菌が容器に入る可能性がありますので、必ず蓋をしておきましょう。
コンタクトレンズを装着したまま入浴、水泳、水遊びをしないようにしましょう
コンタクトレンズケースをいつも清潔にし、使わないときは乾燥させておきましょう。