トピック 神奈川県ロゴ
トップページ >メラミン等による健康影響  
[2008.10.27掲載]

メラミン等による健康影響
   
1.
食品等への メラミン混入について
 

  2007年3月に米国で、中国産の原料を用いたペットフードを与えたイヌやネコが尿路結石を伴った腎不全により死亡する事件が起き、ペットフードの原料である小麦グルテンから メラミンとメラミンの類似化合物のシアヌル酸 が検出されました。死因としては腎臓でメラミンとシアヌル酸が結合したため結晶が生じ、腎臓の機能が障害を受けた可能性が疑われました。
  さらに、 2008年9月には、中国においてメラミンが混入された粉ミルクが原因と思われる、乳幼児の腎結石等の被害が生じています。
  現在、我が国をはじめ諸外国においても、中国産の乳製品を原材料として製造された食品からメラミンが検出されています。
  世界保健機関 (WHO)の情報では、中国では見かけ上のたん白含有量を増やす目的で、工業用に使用されるメラミンが数か月間にわたり、生乳に故意に添加されていたことが判明しています。中国では乳製品等のたん白含有量を、食品中の窒素をもとに算出しており、希釈された牛乳のたん白質量を高く見せるために、窒素含量の多いメラミンが添加されたと見られます。
  食品中のたんぱく質量 (g/100g)=食品中の窒素量(g/100g)×窒素-タンパク換算係数
        窒素 -タンパク換算係数:牛乳では6.38

   
2.
メラミン及びシアヌル酸の概要
 

(1)  メラミンは、メラミン樹脂 (メラミンとホルムアルデヒドを主体として縮合した合成樹脂)の原料となる他、工業用に幅広く用いられています。
  メラミンは殺虫剤であるシロマジンの代謝物であるほか、海外では肥料にも用いられています(日本国内では、肥料として登録されたことはありません)。
  メラミン樹脂は、食品と接する食器や容器等の原料としても使用されていることなどから、食品から微量のメラミンが検出される場合があります。しかし、食器や容器等から食品に移行するメラミンは非常に微量であり、今回の中国の乳幼児でみられたような健康被害が発生する量ではありません。

 

(2)  シアヌル酸はメラミンの類似化合物で、メラミンの不純物として検出されることがあります。飼料添加物の成分としても認めている国がある他、プール等の消毒に用いるジクロロイソシアヌル酸の解離生成物としてプール水からも検出されることがあります。

メラミン
シアヌル酸
3.
メラミン及びシアヌル酸の毒性は?
 

(1)  メラミン、シアヌル酸の単体での毒性
 メラミン等の単体での急性毒性は低く、毒性の指標である耐容一日摂取量 (TDI*1 ) は米国食品医薬品庁(FDA)では、メラミン0.63mg/kg体重/日、シアヌル酸1.5 mg/kg体重/日としています。欧州食品安全機関(EFSA)ではメラミン及び関連化合物(アンメリン、アンメリド、シアヌル酸)全体のTDIとして0.5 mg/kg体重/日と定めています。また、メラミン、シアヌル酸とも遺伝毒性*2 の報告はありません。

 

(2)  メラミン及びシアヌル酸の複合影響
  メラミン及びシアヌル酸を、両者を同時に摂取した場合に腎臓に対し障害を起こすことが報告されています。汚染ペットフードを摂取した動物の腎臓から、メラミンとシアヌル酸が結合したメラミンシアヌレートが検出されました。このメラミンシアヌレートの水への溶解度は極めて低く、腎臓中で結晶が形成されることから、腎機能障害を起こすものと考えられています。

4.

行政の対応

 

  現在、日本では食品中から メラミンが 2.5mg/kgを超えて検出された場合には、該当する食品を自主回収するよう求めています。乳児用に使用される食品については、メラミンが検出されてはならないものとしています。
  厚生労働省では、原材料に使用された乳及び乳製品にメラミンが混入していないか、モニタリング検査を実施するよう検疫所に指示しています。また、日本では中国産の乳及び乳製品を、加工食品の原材料として使用することが多いことから、関連する食品を取り扱う業者に対し、中国から輸入される乳及び乳製品、これらを原材料とする加工食品について、輸入時にはメラミン混入に対し検査を実施するよう命じています。
  これらの国の動きに対応して、神奈川県衛生研究所では、乳および乳製品を含む中国からの輸入食品に対しメラミンの検査を実施しましたが、現在のところメラミンを検出したものはありませんでした。

   
 

  *1  耐容一日摂取量: ヒトがある物質を生涯にわたって継続的に摂取した際に、健康に悪影響を及ぼすおそれがないと推定される 1日当たりの摂取量のこと。
TDI(Tolerable Daily Intake)と略される。
1日および体重1kg当たりの化学物質の質量で表される。

 

  *2   遺伝毒性: 放射線(物理的要因)や化学物質(化学的要因)が遺伝形質情報を担う DNA や染色体に作用し、形質の変化( DNA遺伝子 の突然変異)や染色体の異常(染色体の数量的変化と形態的変化)を誘発させる能力のこと。

 
理化学部  甲斐 茂美
  参考:

 


 トップページへ戻るこのページのトップへ


お問い合せは
トップページ:お問い合わせ から

本ホームページの著作権は神奈川県衛生研究所に帰属します。
Copyright© 2004 Kanagawa Prefectural Institute of Public Health. All rights reserved.