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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.212

食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度

2022年9月発行

スーパーやコンビニエンスストアに立ち寄ると、美味しそうにパッケージングされた食品がたくさんありますよね。ついつい誘惑に駆られ余計なものまで買ってしまったり…。そんな普段、何気なく買っている食品をよく見てみると、いろいろな容器や包装が使われていることに気づくと思います。今回はそのような食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度についてご紹介します。

食品用器具・容器包装って何?

食品用器具・容器包装は、食品衛生法第4条で、次のように定義されています。

器具
飲食器、割ぽう具その他食品又は添加物の採取、製造、加工、調理、貯蔵、運搬、陳列、授受又は摂取の用に供され、かつ、食品又は添加物に直接接触する機械、器具その他の物をいう。ただし、農業及び水産業における食品の採取の用に供される機械、器具その他の物は、これを含まない。

容器包装
食品又は添加物を入れ、又は包んでいる物で、食品又は添加物を授受する場合そのままで引き渡すものをいう。

例えば、器具はお箸やスプーン、茶わん、コップ、まな板や包丁、製造機械類、貯蔵庫、運搬具や陳列ケースなど、また容器包装はビンやペットボトル、トレイなど、いずれも食品又は添加物に直接接触して使用するものを指します。



図1 器具及び容器包装の例

ポジティブリスト制度って何?

原則使用を禁止した上で、安全性を評価した物質(使用を認める物質)をリスト化する仕組みのことです。これとは逆に原則使用を認めたうえで、使用を制限する物質をリスト化する仕組みはネガティブリスト制度といわれています。

食品用器具・容器包装の衛生規制

日本ではこれまでネガティブリスト制度によって規制されていましたが、食品用器具・容器包装の安全性や規制の国際整合性の確保のため、規格が定まっていない原材料を使用した器具・容器包装の販売の禁止等を行い、安全性を評価したもののみ使用できるポジティブリスト制度が令和2年6月1日から新たに導入されました。これには5年の経過措置期間が設けられており、経過措置期間が終了する令和7年5月31日までは、施行日より前に製造等の実績のある器具・容器包装に使用されていた物質に対し、使用されていた範囲内で使用する場合に限り、ポジティブリスト適合とみなすことができます。

どんな材質のものが対象になっているのか?

ポジティブリスト制度の対象となる材質は合成樹脂です。これは、①様々な器具及び容器包装に幅広く使用され公衆衛生に与える影響を考慮すべきこと、②欧米等の諸外国においてポジティブリスト制度の対象とされていること、③事業者団体による自主管理の取組の実績があることを理由として定められました。

食品衛生法施行令(昭和28年政令第229号)
(法第18条第3項の材質)
第1条 食品衛生法第18条第3項の政令で定める材質は、合成樹脂とする。

その対象範囲は、「合成樹脂製の器具・容器包装」及び「他の材質の器具・容器包装であって食品接触面に合成樹脂の層が形成されている場合の合成樹脂」(例えば、牛乳パック等)とされています。図2に合成樹脂の分類を示しましたが、ポジティブリスト制度の対象となる合成樹脂には熱可塑性(ねつかそせい)を持たない弾性体であるゴム(熱硬化性エラストマー)は含まれません。
*熱可塑性…加熱することで軟化し変形させることができ、冷やすと再び固くなる性質。



図2 合成樹脂の分類概要
(ポジティブリスト制度のQ&Aについて;厚生労働省資料から抜粋)

なお、合成樹脂の器具・容器包装の食品に接触しない部分については、人の健康を損なうおそれのない量として定める量(0.01mg/kg)を超えて溶出や浸出して食品に混和しないように加工されている場合、ポジティブリストに収載された物質以外のものも使用可能とされています。

ポジティブリストの内容は?

ポジティブリストでは食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の別表第1において、合成樹脂の基本を成すもの(基ポリマー)及び添加剤等についてその規格が規定されており、基ポリマーのリストには使用可能な食品や使用可能な最高温度が設定されています(図3)。また、基ポリマーをその物理化学的性質や使用実態を踏まえて、樹脂を7つの区分に分類し、区分に応じて添加剤の添加量等を定めています(図4)。



図3 基ポリマーのポジティブリストの例
(食品、添加物等の規格基準 別表第1 第1表から抜粋)




図4 添加剤のポジティブリストの例
(食品、添加物等の規格基準 別表第1 第2表から抜粋)

おわりに

今回は食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度についてご紹介しました。食品用器具・容器包装の衛生規制としては、この他にも、製造管理基準の設定、事業者間でのポジティブリストに適合していることが確認できる情報の伝達および製造事業者の届け出制度などが規定されています。このように、普段目にする食品用の器具や容器包装についても、食の安全・安心のための衛生規制がされていることを知っていただけたら幸いです。
 
当所では規格基準が定められた食品用器具・容器包装の検査の実施や、試験法に関する共同研究に参画しています。食の安全・安心に貢献するため、今後も食品用器具・容器包装の検査を実施するとともに、試験法等に関する情報収集や研究に努めて参ります。

【参考リンク及び参考資料】

(理化学部 内山 陽介)

   
衛研ニュース No.212 令和4年9月発行
発行所 神奈川県衛生研究所(企画情報部)
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