皆さんは、検査と聞いて何を思い浮かべますか。食品に関する検査だけでも、食品メーカーが出荷の可否を判定する際などに行う検査、商取引における品質証明のための検査、食品の規格への適合を判定するための検査など様々な検査があります。
法令で定められた食品の規格への適合を確認する収去検査1)の場合、もし、その食品が規格から外れていれば市場から速やかに排除しなければなりません。そのように社会に少なからず影響を与える可能性がある検査の結果が正しくなかったら大変です。
神奈川県では、平成9年に食品衛生法に基づく収去検査を行う機関に食品GLP2) を導入し、以来20年以上、検査の信頼性確保に努めています。
今回は、収去検査における検査結果の信頼性確保に向けて神奈川県衛生研究所(以下、当所)に設置している信頼性確保部門の取組みについてご紹介します。
1) | 収去検査:食品衛生法などの法令に基づき、食品の製造施設や小売店などから食品※)を採取し検査すること |
2) | 食品GLP(Good Laboratory Practice(業務管理基準)):食品衛生に関する試験検査に関して、手順や記録方法などの具体的な管理基準を定め、それらの有効性や実施状況を第三者が検証することにより信頼性を確保するシステム |
※) | 食品以外に食品添加物、直接食品に触れる器具や容器なども含みます。 |
神奈川県における食品GLP体制神奈川県では、現在、図のような食品GLP体制を敷いています。食品の採取を行う「収去部門」、実際に検査を行う「検査部門」、そして、検査結果の信頼性を確保するための「信頼性確保部門」の3つの部門があり、それぞれが独立した立場で収去検査に関わることによって公正で信頼性の高い検査結果を出せる組織体制となっています。食品の採取を行う収去部門は、県庁生活衛生課(専門監視担当)、保健福祉事務所及びセンター(以下、保健所)並びに食肉衛生検査所(衛生監視課)、検査部門は、当所微生物部、理化学部及び地域調査部の3部と食肉衛生検査所(精密検査課)、信頼性確保部門は、当所企画情報部に設置されています。
収去検査の流れ大まかな収去検査の流れは、図の赤字部分のとおりとなります。 信頼性確保部門の業務○内部点検信頼性確保部門では、収去部門、検査部門に対して定期的に内部点検を実施しています。第三者的な立場として信頼性確保部門による内部点検を実施することにより、収去検査の信頼性を確保するという目的がありますが、それぞれの部門が持つ問題点等を明確にし、改善につなげていくことも重要な目的となっています。 ○精度管理検査部門では、検査の精度を保つために、計画的に精度管理を行っています。 ○外部精度管理調査収去検査の信頼性を確保するために外すことができないのが、外部精度管理調査への参加です。外部精度管理調査とは全国の収去検査などの食品検査を行う機関が参加し、同じ条件の検体を検査することにより、かたよりやばらつき4)の度合いについて全体からのずれがないかを確認する大切な調査です。 信頼性確保部門では、そのほかに、各部門の標準作業書写しの保存、各部門における研修計画立案にあたっての協議、食品衛生監視員を対象とした科学的統計学的考えに基づき収去検査を行うための研修なども行っています。
おわりに食品は、私たちの毎日の生活に欠かせないとても大切なものであり、その安全性は確保されている必要があります。食の安全を確保するしくみについては、法令により食品ごとの成分の規格や製造、加工、流通、販売等における守るべき具体的な基準が定められています。また、定められた基準に則って食品が製造等されているかについて、全国の食品衛生監視員による食品関係営業施設への立入検査の実施や、製造や小売りされている食品の収去検査を実施するなどのチェック体制が築かれています。このように日本では安全を確保するしくみが構築されていますが、食品は毎日口にするものであるため、「安全」という要素だけではなく、「安心」を得る(消費者の皆さんに安心してもらえる)ことが非常に重要といえます。 (企画情報部 芝 顕三)
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