2001年に遺伝子組換え食品の表示制度が施行されてから20年近くが経過し、この間に、遺伝子組換え作物(Genetically Modified Organism、以下、GMO)の世界の作付面積は大幅に増加しました。神奈川県では、消費者の食品を選択する権利を守るために、県内で流通している食品について、遺伝子組換え表示が正しく行われているか、安全性が未審査の遺伝子組換え食品が流通していないか、を確認しています。今回は、遺伝子組換え表示制度を説明し、現在、衛生研究所で実施している遺伝子組換え食品検査を紹介します。
GMOの安全性審査と遺伝子組換え表示制度日本の表示制度では、内閣府による安全性の審査を経て流通が認められた8農産物(大豆、とうもろこし、ばれいしょ、なたね、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤ)及び33加工食品群(豆腐・油揚げ類、納豆、豆乳類、みそ、コーンスナック菓子、コーンスターチ、ポップコーン、ポテトスナック菓子、乾燥及び冷凍ばれいしょ等)について、表示義務の対象としています。
しかし、この「意図せざる混入」の混入率については、GMOが最大5%混入しているにもかかわらず、「遺伝子組換えでない」と表示できるため、消費者の誤解を招くのではないかとの意見が、消費者庁の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」においてありました。そのため、新たな動きとして、「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件を、現行制度の「5%以下」から引き下げることが適当であると考えられました。そして、2023年4月には、消費者庁から改正された食品表示基準が施行され、GMOの混入が認められない場合に限り、「遺伝子組換えでない」等の表示が認められるようになります。
神奈川県における検査状況当所で現在、実施している検査方法には、PCR法・電気泳動法(定性試験)とリアルタイムPCR法(定性及び定量試験)があります(図)。近年、技術の進歩や分析法の改良等により、PCR法・電気泳動法からリアルタイムPCR法への移行が進んでいます。
当所では、表示が義務付けられた2001年から検査を実施しており、現在まで違反事例はありません。過去5年間の検査結果では、大豆加工食品の定性試験において、組換え遺伝子が検出された検体(豆腐、厚揚げ)がありました(表2)。食品衛生監視員が、表示の確認や原材料の大豆に関するIPハンドリング等を調査したところ、表示違反となる検体はありませんでした。しかし、大豆加工食品である豆腐や厚揚げが微量のGMOを含有(意図せざる混入)していることが明らかになりました。 表2 遺伝子組換え食品の検査結果(2015年度~2019年度) 神奈川県衛生研究所での取り組み当所では、新たな検査にも対応できるように、検査体制の整備を進めています。2019年度からは、2016年に定められた安全性が未審査のばれいしょ加工食品の検査を開始し、また、新たに定められた検査方法(サケ等)についても検討を行っています。今後も、適切な表示の確認と消費者の食品を選択する権利を守るために、引き続き検査を実施していきます。 (参考資料および参考リンク)(理化学部 垣田 雅史)
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