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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.195

HIV感染症/AIDS流行の終息を目指して
~HIV検査体制の変遷と現状~

2019年11月発行

HIV感染症/AIDSが報告された1983年当時AIDSは死に至る病でしたが、1986年に抗ウイルス薬が開発され、その後の抗ウイルス治療法(ART)が飛躍的に進歩し、ARTを早期に導入することで感染者の生命予後が著しく改善され、またパートナー等への二次感染の予防効果も明らかになってきました。
国連合同エイズ計画(UNAIDS)では2014年、HIVの流行を制御する戦略として2020年までに全感染者の90%が自らの感染を知り(診断率)、そのうちの90%がARTを受け(治療率)、そのうちの90%で体内のウイルスを抑制させる(治療成功率)という目標「90-90-90」を達成し2030年までに公衆衛生学的脅威としてのAIDS流行を終息させることを宣言しました。
日本では感染が判明した場合の治療率、治療成功率は高いですが、全感染者における診断率については見極めが難しい状況にあります。診断率を上げるには感染者の多くがHIV検査を受ける必要があります。今回はHIV感染症の流行状況とともに全国自治体が実施している保健所等でのHIV検査について解説します。

世界のHIV感染症/AIDS

UNAIDSによると2018年末での世界のHIV感染者(AIDS患者含む)数は3,790万人と推定されており、その54%はサハラ砂漠以南アフリカに集中し、アジア太平洋地域では16%を占めています。年間の新たなHIV感染者の推計値は170万人と漸減傾向にあり、過去最高の1996年に比べるとほぼ半減していますが、「90-90-90」の目標には遠く及びません。

日本のHIV感染症/AIDS

日本では1985年からエイズ発生動向委員会によってHIV感染者数とAIDS患者数が別々に報告されています。2018年のHIV感染者940名、AIDS患者377名、合計1,317名、これまでの累積HIV/AIDSは30,149名と報告されました。感染経路は85%以上が性的接触、このうちの78%は男性同性間で、全報告数の85%が日本国籍男性です。



図1 日本のHIV感染者/AIDS報告数と保健所検査でのHIV陽性数の年次推移

年次推移を見てみると、HIV感染者は1990年ごろから急増し、2007年には1,000名を超え、2008年には1,126名とピークとなり、その後は漸減傾向ですが、毎年1,000名程度報告されています。AIDS患者数は2006年以降400名を超え、全報告数に占めるAIDS患者数の割合は毎年30%程度で推移しています(図1)。個人の健康だけでなく感染拡大を防御するため、これらAIDS患者を発症前の早期に検査に導くことが重要な課題です。

全国保健所等における無料匿名HIV検査体制



図2 全国保健所等無料HIV検査の検査数と陽性数の年次推移

全国の保健所等でのHIV検査は1987年に有料のHIV-1抗体検査として始まり、1993年から無料化され、来日外国人のHIV-2感染が報告されたことから、同年8月からはHIV-2抗体検査も加わりました。当初はマスコミ等の報道によって国民の関心も高まり検査数は13万件を超えましたが、その後減少し、1997年には46,237件まで落ち込みました。しかし、HIV感染症/AIDS報告数は増加し続け、保健所検査での陽性数も増加したため、検査体制の強化が重要な課題となり、全国自治体では保健所で平日行われている通常検査の他、夜間検査受付、土日の特設検査所の開設・増設、即日検査が順次導入されました。その結果、検査数は増加し2008年には177,156件、陽性数も501件(陽性率0.28%)まで増加しました。しかし、その後、2009年の新型インフルエンザ大流行の影響等により検査数は減少し、2010年以降は13万件前後で推移していましたが、2010年から2017年までの陽性率は0.35%前後でほとんど変わっていません(図2)。

HIV感染症報告数に占める保健所等検査での陽性者数の割合は、2004年に40%を超え2017年まで45%前後で推移しており、保健所等での検査は未発症HIV感染症の診断に重要な役割を果たしていると考えられました(図1)。しかしながら、2018年の検査数は前年までとほぼ同様ですが、陽性率は0.29%、全HIV感染症報告者数に占める保健所検査での陽性割合が40%に減少しています。新規感染者が本当に減少しているのか、さらなる検査体制の強化が必要なのか、注視していく必要があります。

HIV検査法の進歩

HIV検査はスクリーニング検査と確認検査の2段階で実施されます。スクリーニング検査の進歩は著しく、1985年にHIV-1抗体検査法が販売され、1991年にはHIV-2抗体も同時に検出できるHIV-1/2抗体検査法が、1999年にはHIV-1/2抗体に加え、HIV-1抗原も検出できる抗原抗体同時検査法が販売されました。これらの方法には2時間程度の検査時間が必要でしたが、1998年には検査後15分でHIV-1/2抗体の有無が判明できる迅速検査法が、2008年にはHIV-1/2抗体に加えHIV-1抗原も検出できる迅速検査法が市販されています。 
確認検査にはHIV-1とHIV-2のウエスタンブロット法(WB)またはHIV-1核酸検査法(NAT)を実施します。抗体確認検査のWBは保健所検査の始まった1987年から現在までほとんど改良されていませんが、2018年11月WBの改良法Geenius HIV-1/2(Geenius)が体外診断用医薬品として承認されました。当研究所でGeeniusについて検討した結果、WBに比べ感度、特異性、HIV-1とHIV-2の鑑別能ともに優れ、HIVの早期診断に有効であることが分かり、できるだけ早く確認検査に導入したいと考えています。

神奈川県でのHIV検査体制

神奈川県域では現在4か所の保健所(平塚、鎌倉、小田原、厚木)とHIV即日検査センターで迅速検査を、大和センターで酵素標識蛍光抗体法(ELFA)による抗原抗体同時検査を実施しています(図3)。
衛生研究所では、県庁健康危機管理課や各保健福祉事務所等関連機関と協力し、より効果的なHIV検査体制の充実に努め、診断率の向上に貢献していきます。



図3 神奈川県域におけるHIV検査体制

(参考資料及び参考リンク)

(微生物部 近藤真規子)

   
衛研ニュース No.195 令和元年11月発行
発行所 神奈川県衛生研究所(企画情報部)
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