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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.192

乱用薬物の危険性と最近の状況

2019年5月発行

覚醒剤、大麻、コカイン、MDMA、危険ドラッグなど、乱用薬物による犯罪は後を絶ちません。近年、インターネットやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の急速な普及に伴い、乱用薬物など有害な情報に接しやすくなっています。そのため、乱用薬物に関わる犯罪に巻き込まれる危険性も増しています。
今回は乱用薬物の中でも危険ドラッグや大麻を中心に、その危険性と最近の状況についてご説明いたします。(図1)


図1 危険ドラッグ(左3図)と大麻(右図)
(厚生労働省 薬物乱用防止読本より)

乱用薬物の危険性

乱用薬物は使用者の精神面や身体面に対して様々な有害作用を引き起こすだけでなく、社会的にも悪影響を及ぼすことがあります。
危険ドラッグは以前、合法ドラッグや脱法ドラッグと呼ばれ、お香、アロマ、バスソルト等と称して様々な形状の製品として販売されていました。しかし、その実態は、覚醒剤や大麻と類似の作用を持つにも関わらず、規制薬物と一部化学構造が異なるために規制されない化学物質を含む薬物でした。そのため、中枢神経系への影響など危険性については未知であることが多く、乱用による交通事故の発生や使用者の死亡事例も多数報告されています。
大麻の使用は中枢神経系を抑制し、無気力、集中力の低下などを引き起こすことが知られております。また、色彩や音の感覚を変化させる作用、さらに、長期間の乱用により依存症に陥り、使用の中止により易怒性や不安及び大麻に対する渇望を生じることも報告されています。

危険ドラッグと大麻の最近の状況

危険ドラッグの乱用に伴う交通事故の発生のほか、健康被害が多発したことから、平成26年に国は緊急対策を実施し、検査命令対象物の拡大やインターネット対策等の法規制の強化をしました。それにより、現在では店舗販売は無くなり事件事故などは激減しておりますが、インターネットを通じてまだ販売されています。
また、危険ドラッグの規制強化により、もともと大麻を使用し一時的に危険ドラッグを使用していた乱用者は、大麻に回帰したとも言われています。さらに、インターネットやSNSなど匿名化アプリの増加や、乱用薬物の中では安価なことも相まって青少年の大麻の使用者及び検挙者が増加しております。加えて、タバコより害が少ないなど誤った情報がインターネットに流れていることも大麻乱用の原因の1つと考えられます。(図2)


図2 大麻事犯の検挙者の推移(厚生労働省より)
※「比率」は「大麻事犯検挙者」における「20歳代及び未成年者」の占める割合

近年の乱用薬物が含まれる製品は形を変えて流通しているものもあります。大麻は通常、葉や花穂の乾燥品やチョコレートなどと呼ばれる大麻樹脂などが使用されますが、その含有成分であるカンナビノイドを濃縮した大麻リキッドや大麻ワックスといった形で流通しているものもあります。これらの製品は厚生労働省でも注意喚起されております。(図3)


図3 使用形態が変化した大麻
(厚生労働省第五次薬物乱用防止五か年戦略 別添3より抜粋)

神奈川県における検査結果

県では、危険ドラッグの乱用による健康被害を未然に防ぐとともに流通実態を把握するため、インターネット等で危険ドラッグの疑いのある製品を試買し、成分検査を実施しています。検査には、高速液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ質量分析計など様々な機器を用いる他、尿中薬物検査キットなども活用し多角的に分析を進めております。
検査の結果、平成28年度から現在までの間に分析した危険ドラッグの疑いのある88製品のうち、21製品から麻薬、指定薬物及び医薬品成分が検出されております。

乱用薬物から身を守るために

危険ドラッグは日本だけでなく世界的にも問題とされ、その脅威は衰えておりません。しかし、国内では危険ドラッグ関連の事件・事故が減少し、メディアで報道される機会が減ったことから、青少年を中心に危険ドラッグに対する警戒心が低下した可能性が指摘されております。また、大麻の有害性についても正しく知られていないことから、青少年に対して薬物乱用防止の啓発活動をより一層強化する必要があると考えられます。

今回は危険ドラッグや大麻を中心に説明しましたが、これ以外にも、コカインの検挙者数の増加や、睡眠薬等の向精神薬による昏睡強盗事件の発生など、薬物乱用に関する問題は数多くあり、それらは決して私たちと関係ない世界で起こっている話ではありません。私たちが乱用薬物に対して、自分は関係ないと油断していると、いつの間にかその魔の手にかかってしまう可能性があります。忍び寄る魔の手から自分や大切な家族を守るため、正しい知識を身につけ、乱用薬物には近づかないよう注意してください。

【参考リンク及び文献】

注:リンクは掲載当時のものです。リンクが切れた場合はリンク名のみ記載しています。

(理化学部 外舘 史祥)

   
衛研ニュース No.192 令和元年5月発行
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