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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.178

家庭用品に使われる化学物質

2017年1月発行

衣服や接着剤、スプレーなどの家庭用品には様々な化学物質が使用されています。これらの化学物質は、衣類のしわ防止や燃えにくいカーテンなど、生活を便利に、そして安全にするために用いられています。一方で、用いられた化学物質が健康被害の原因になってしまう可能性もあります。そうしたことを防ぐため、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」(以下「家庭用品規制法」といいます。)により、様々な化学物質が規制されています。今回はこの「家庭用品規制法」について概略をご説明します。

家庭用品規制法制定の経緯

昭和40年代、化学工業が急速に発展していく中で、より便利な製品を作るために様々な化学物質が用いられるようになりました。当時は人への毒性を考えずに化学物質を使用していたケースがあったことから、家庭用品による健康被害が多発し、社会問題になりました。そこで、主婦連合会、学者、地方消費生活センター等が調査を行った結果、多くの健康被害例が明らかとなり、その後の厚生省(現:厚生労働省)による調査で様々な家庭用品と健康被害の関係が明らかになりました。もともと、化学物質の規制は「食品衛生法」、「薬事法(現:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」、「毒物及び劇物取締法」などで行われてきましたが、この問題はこれらの法律で規制しきれないものでした。そこで、この空白部分を補うために、日常生活で使用する家庭用品の安全についての法律として、昭和48年に家庭用品規制法が制定されました。

家庭用品規制法の規制について

家庭用品規制法では対象となる家庭用品について、21種類の化学物質が規制されています(表)。これらの化学物質には基準が定められており、この基準を超えた家庭用品は販売等が禁止されています。逆に、規制されていなければどんな化学物質も使ってもいいかというと、そうではありません。家庭用品規制法は事業者に対し、家庭用品に含まれる化学物質が健康に与える影響を把握することと、その化学物質による健康被害発生を防止することを義務づけています。したがって、規制されていない化学物質であっても、それが原因で重大な健康被害を起こしてしまった場合は、家庭用品規制法違反となります。
ちなみに、おもちゃは赤ちゃんが口に入れる可能性があることから家庭用品規制法ではなく、「食品衛生法」の規制対象となります。おもちゃ以外にも既に他の法律で規制されている製品があり、こういった製品は二重の規制を避けるために家庭用品規制法では規制対象外としています。

新たに「アゾ化合物」が規制されました

平成28年4月1日から新たに「アゾ化合物」が家庭用品規制法により規制されることになりました。「アゾ化合物」は、主に色素として用いられるもので、種類が豊富で安価なことから、繊維製品などに世界中で広く用いられています。一部のアゾ化合物は腸内細菌や皮膚表面、肝臓などで分解され、発がん性のある芳香族アミン(以下「特定芳香族アミン」といいます。)を生成するといわれています(図)。今回導入された規制は「アゾ化合物」のすべてを規制するわけではなく、発がん性のある特定芳香族アミンを生成する可能性のある「アゾ化合物」のみを対象としています。したがって、検査では「アゾ化合物」そのものを測定するのではなく、家庭用品に含まれる「アゾ化合物」を化学的に分解し、生成された特定芳香族アミンが基準値以上であるかどうかを確認しています。

間違った使い方をしていませんか?

例年、家庭用品を不適切な方法で使用してしまったがために起こる健康被害が数多く報告されています。例えば、換気の悪い場所で防水スプレーを使ってしまったことによる呼吸困難や、「まぜるな危険」と書かれた塩素系洗浄剤と酸性物質(酸性の洗浄剤、お酢など)を混ぜてしまったことによる有毒ガス発生などが挙げられます。家庭用品に用いられる化学物質は生活を便利にする反面、健康被害の危険性をはらんでいるものもあります。家庭用品による健康被害を防ぐためには、法律での規制はもとより、各家庭で家庭用品を正しく安全に使用することが大切です。

さいごに

当所では家庭用品による健康被害を防ぐための検査を実施しています。また、法律で規制されていない未知の化学物質についても、その分析法を検討するとともに、安全性を確かめる研究を行っています。今後も家庭用品の安全性を確保するため、検査及び研究を継続していきます。

 

参考資料および参考リンク

(理化学部 西 以和貴)

   
衛研ニュース No.178 平成29年 1月発行
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