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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.172

ミネラルウォーター類の安全性について

2016年1月発行

スーパーやコンビニエンスストアではたくさんの種類のミネラルウォーター類が販売されています。私たちはこれらを購入することで、日本各地、外国産などいろいろな水を気軽に利用することができます。今回はミネラルウォーター類の安全性を守るための法規制についてご説明します。また、平成26年12月に施行されたミネラルウォーター類の規格基準改正についても簡単にご紹介します。

ミネラルウォーター類とは?

ミネラルウォーター類は、食品衛生法では水のみを原料とする清涼飲料水と規定され、二酸化炭素を注入したもの、カルシウム等を添加したものも含みます。  
ミネラルウォーター類の品質表示ガイドラインでは、原水(製造に使用された原料の水)の種類と製造過程での処理方法により、ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、ミネラルウォーター、ボトルドウォーター(または飲用水)と、さらに4種類に分類されています(表1)。ミネラルウォーターと聞くと、自然豊かな山間部で特定の水源から汲み上げられた地下水を容器に充填したものといったイメージを思い浮かべる方が多いと思います。このような製品の多くは、ナチュラルミネラルウォーターに分類されます。また、最近、全国各地の水道事業体が水道水のおいしさのPRや防災備蓄用に、浄水場で処理した水をペットボトルなどに詰めたものを販売しています。このような製品はボトルドウォーターに分類されます。これらの名称は製品のラベルに表示されています(図1)。

表1.ミネラルウォーター類の名称分類

図1.品質表示の例

図1.品質表示の例

清涼飲料水の規格基準(食品衛生法)

清涼飲料水と聞くと、清涼感のある炭酸飲料やジュースなどを想像する方もいるかもしれませんが、ミネラルウォーター類は清涼飲料水の一つに分類されます(図2)。
食品衛生法では流通する食品の安全な品質を確保するため、「食品、添加物等の規格基準」の中で、食品別に規格基準を定めています。規格基準とは、さまざまな食品について、成分規格(製品の品質についての基準)や製造、加工、調理及び保存に関する基準を定めたものです。ミネラルウォーター類は、清涼飲料水の規格基準の中に成分規格や製造基準などが定められ、これらに従って製造された安全な製品が市場に流通しています。

図2.清涼飲料水の分類(食品衛生法)

規格基準の改正

平成26年12月22日に食品、添加物等の規格基準の一部が改正され、清涼飲料水の規格基準の内容に変更がありました。この背景として、改正前のミネラルウォーター類の規格基準は、水道法で規定される水道水質基準注1)等と乖離(かいり)が生じていました。そこでコーデックス委員会注2)においてナチュラルミネラルウォーター等の規格が設定されたことや水道法の水質基準改正の動きを受け、厚生労働省が規格基準の見直しを行いました。
改正の主な内容として、ミネラルウォーター類の規格基準は、製造工程における殺菌・除菌の有無により、「ミネラルウォーター類(殺菌・除菌有)」と「ミネラルウォーター類(殺菌・除菌無)」に明確に区分けされました。これらの区分ごとに以前の規格基準値は見直され、新しい規格基準が定められました。食品衛生法ではミネラルウォーター類は原則、殺菌・除菌が必要であると規定されており、主に日本の製品はこちらに該当します。一方、殺菌・除菌が不要なものは原水の水質や水源周辺の環境保全などについてより厳しい基準に適合する必要があり、主にヨーロッパから輸入される製品にはこれに該当するものがあります。
新しい成分規格を表2~4に示します。市場に流通する製品は清涼飲料水の一般規格(表2)及びミネラルウォーター類個別の成分規格(表3又は4)に適合している必要があります。この新しい規格基準は現在の水道法やコーデックス委員会が設定した国際規格との整合性がとられ、高感度の測定方法が検査法として採用されています。

表2.清涼飲料水の成分規格(一般規格)

表3.ミネラルウォーター類(殺菌・除菌有)の成分規格

表4.ミネラルウォーター類(殺菌・除菌無)の成分規格

 
ミネラルウォーター類を
安心して飲むために

当所では、県内に流通するミネラルウォーター類が成分規格に適合していることを確認するため、検査を実施しています。新しくなった規格基準についても、信頼性の高い検査を実施するため、検査法等の標準実施作業書の整備及び妥当性評価を行っています。今後もミネラルウォーター類の安全性を確保できるよう、検査・調査研究を進めてまいります。

注1)水道水質基準
水道水は水道法により水質基準等が定められています。水道水質基準には生涯にわたり飲用しても健康に影響のない基準(健康関連項目)と生活用水として支障がない基準(生活上支障関連項目)があり、現在51項目の基準があります。衛研ニュースNo.166参照

注2)コーデックス委員会
消費者の健康の保護、食品の公正な貿易の確保等を目的として、1963年に国際連合食糧農業機関(FAO)及び世界保健機関(WHO)により設置された国際的な政府間機関で、国際食品規格の策定等を行っています。日本は1966年より加盟しています。

 
 
(参考資料および参考リンク)

(理化学部 仲野富美)

         
 
衛研ニュース No.172 平成28年1月発行
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