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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.159

食品中のアルミニウム規制?
~食品添加物の使用基準規制に向けて~

2013年11月発行

アルミニウムは天然にも広く存在し、土壌などから吸収されたアルミニウムが野菜、穀類、魚介類等に微量含まれています。また、食品添加物にもアルミニウムが含まれています。平成25年6月に、厚生労働省がアルミニウムを含む食品添加物について、使用基準を定め規制する方針であるとの報道がありました。
なぜ、今、アルミニウムが問題になっているのでしょうか?

アルミニウムとは

アルミニウムは地殻を構成する元素の中で酸素、ケイ素に次いで3番目に多い元素です。自然界ではいろいろなアルミニウム化合物の形で、鉱物、土壌、水、空気、植物、動物等に含まれています。アルミニウムは、金属材料として容器や包装材、調理器具等に、化合物として食品添加物や医薬品、水道水の浄化剤等に使われています。アルミニウムは主に食品、特に食品添加物から摂取されます。摂取されたアルミニウムの約0.1%が吸収され、腎臓を通って尿中に排泄されます。残りの99%以上は吸収されずそのまま排泄されます。

アルミニウムの影響

動物実験で多量に投与した場合、腎臓や膀胱への影響、握力の低下等が報告されています。また、以前からアルツハイマー病とアルミニウムの関連が議論されていますが、この因果関係は証明されていません。食品の安全性を評価している国際機関のJECFAでは、人が一生涯摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される暫定的な許容量のPTWI(暫定耐容週間摂取量)を2mg/kg/体重/週(体重1kg一週間当たり2mg)としています。従来のPTWIは7mg/kg/体重/週でしたが、平成18年に1mg/kg/体重/週に引き下げられ、平成23年に再度2mg/kg/体重/週に変更されました。このような背景から、日本でも食品中のアルミニウムの規制に向けての検討が行われています。

アルミニウムを含む食品添加物

アルミニウムを含む食品添加物(表1)で、硫酸アルミニウムカリウムと硫酸アルミニウムアンモニウムはミョウバンとして知られています。膨脹剤はふくらし粉やベーキングパウダーと言われるもので、生地を膨らませ食感を向上させます(大部分のパンはパン生地を膨らませるためにパン酵母を使用し、膨脹剤は使用していません)。色止め剤は、ナスやシソなどに含まれる色素が漬物の製造時に色落ちを防ぐために使用されています。形状安定剤は、魚介類の甘露煮などを作る際に、煮崩れを防ぐためのもので、うに、クラゲなどの型くずれを防ぐためにも使用されています。品質安定剤は栗きんとんやきんぴらごぼうなどの煮物を作る際に使用し、歯切れ・歯ごたえを良くするものです。このように様々な用途に使用されていますが、現在、使用量の基準はありません。

表1 アルミニウムを含有する添加物

食品添加物の表示

食品添加物は使用した場合、すべて物質名を表示する原則がありますが、複数の組合せで効果を発揮することが多く、個々の成分まですべてを表示する必要性が低いものについては、一括名で表示することが認められています。硫酸アルミニウムカリウムと硫酸アルミニウムアンモニウムは、色止め剤、形状安定剤、品質安定剤として使用された場合は物質名が表示されます。一方、膨脹剤として使用された場合は、「膨脹剤」「ベーキングパウダー」「ふくらし粉」の一括名で表示し、物質名を表示しなくても良いとされています。膨脹剤にはアルミニウムを含まないものもあるため、現在の表示方法では、アルミニウムを含む食品添加物が使用されていることを、消費者が表示から判断することはできません。

アルミニウムの基準値作りに向けた摂取量調査

厚生労働省は平成23~24年度に加工食品と生鮮食品からの、アルミニウム摂取量の調査を行いました(表2)。平均的なアルミニウムの摂取量は、全ての年齢層においてJECFAの暫定耐容週間摂取量であるPTWIを下回りました(表3)。しかし、2群(穀類)と6群(菓子類)を多く摂取する小児では摂取量の多い5%が、PTWIを上回りました。アルミニウムの摂取量には穀類加工品や菓子類の影響が大きく、それらに膨脹剤として使用される硫酸アルミニウムアンモニウムや硫酸アルミニウムカリウムによるものと推察されました。摂取量の平均値ではPTWIを超えませんが、アルミニウムを含む食品を多量に摂取する一部の小児でPTWIを超える恐れがあるため、アルミニウム摂取の低減化に向けての検討が必要とされました。

表2 食品群別、年齢層別のアルミニウムの一日摂取量の推定(mg/人/日)

表3 年齢層別のアルミニウムの一日摂取量とPTWIとの比較

低減化への対応

平成25年6月21日開催の「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会」に、この調査結果が報告されました。国際的にもアルミニウムを含む食品添加物の基準値の策定や見直しが進められていることを踏まえ、今後の対応が検討されました。小児のアルミニウム摂取量への寄与が大きいパン及び菓子への膨脹剤の使用について、関係業界に自主的な低減の取組みを依頼し、今後、アルミニウムを含有する食品添加物の使用基準を設定することを検討することが了承されました。
その後、平成25年7月1日に関係業界団体(日本食品添加物協会、全日本菓子協会、日本パン工業界、日本プレミックス協会、全日本パン協同組合連合会)に対して、「硫酸アルミニウムカリウム及び硫酸アンモニウムを含有する膨脹剤の使用量の低減について(依頼)」の通知が出されました。
現在は関連業界でも対応が進み、食品添加物としてのアルミニウムを含まない製品が多くなっています。海外でも基準の見直しが行われ、輸入食品でもアルミニウムの含有量は減少すると予想されます。家庭用のベーキングパウダーもアルミニウムを含まない製品が販売されており、家庭で使用する場合はそのような商品を選択されると良いでしょう。

バランスの良い食生活

アルミニウムの摂取量の平均値はすべての年代で許容量を下回っていますが、2群(穀類)や6群(菓子類)の食品を好んで摂取する小児(1-6歳)で、摂取量が多くなる可能性があります。日常生活では、偏食をせずバランスの良い食生活をすることにより、アルミニウムの過剰な摂取を防ぐことができます。バランスの良い食生活は、健康的な生活をおくるための基本となるものです。毎日を健康に過ごすためにも、偏りのない食事を心がけましょう。

(参考リンク)
(理化学部 岸 弘子)
   
衛研ニュース No.159 平成25年11月発行
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