シミュレーションでみえてくる 超高齢社会ってどんな世界?

2017.10.06
全国一、二を争うスピードで高齢化が進む神奈川県。2010年時点で20.2%だった高齢化率は年を追う毎に上昇し、2050年には36.4%に達する見込み。高齢社会を越えた超高齢社会は、ますます深刻な状態に。このままだと医療・介護費の高騰や社会システムの崩壊など、さまざまな問題が起こることが予想されます。さらに国や自治体レベルの問題だけではなく、身近な社会生活にも影響はいろいろ。ここでは人口データを元に、実際に超高齢社会でどんな変化が起きるのかシミュレートしてみましょう。

人口減少で街が
廃墟に?

CASE01
2011年時点で、神奈川県内の住居の10軒に1軒以上が空き家になっています。もちろん空き家の増加は防災、衛生、景観など、さまざまな点で問題です。しかし空き家の増加は問題の序曲に過ぎません。空き家が増えて住民が減ると、まず顧客減少に見切りをつけた民間事業者の撤退がはじまります。これにより必要な商品を入手するのに苦労するばかりでなく、雇用も減少。人口の減少にさらに拍車をかけることになります。

さらに学校や図書館は統廃合され、病院も数を減らすことでしょう。留まることのない人口減少は税収の減少にもつながる一方、高齢化で社会保障費の増加も。地方財政は逼迫し、それまで受けられていた行政サービスも縮小されるかもしれません。バスの路線廃止、鉄道の運行本数縮小で利便性は低下、さらに町内会や自治会といった住民組織の担い手が不足し共助機能も低下。結果、さらに人口減少が加速するという負のスパイラルに突入します。やがて、町は人気のない廃墟のようになってしまうのです。現在、神奈川県内の9の市町村が、将来的に存続が危ぶまれる消滅可能性都市とされています。

老老サービス・
ビジネスの増加?

CASE02
存続自体が危ぶまれる地域部から、都市部に人口が流入。都市の高齢化がさらに進む場合、日常生活も様変わりします。とりわけ考えられるのが、就労年齢の上昇。これは社会保障費の高騰や就労人口減少などによる「働く必要性」と、健康寿命の延伸による「働ける可能性」という正負両面の結果です。小売店やサービス業のカウンターに高齢者が立ち、高齢者を相手に接客をする。「老老介護」ならぬ「老老サービス」が当たり前の光景になるのです。さらに商品やサービス内容にも変化が。従来は若者がメインターゲットであったファストフード店やカフェチェーンに高齢者向けメニューが登場する、高齢者向けの娯楽施設が増加するなど、拡大するシニア世代需要に合わせたサービス・商品が増加するかもしれません。

ロボットやパーソ
ナルモビリティの
普及

CASE03
生活支援ロボットとは、人と同じ空間で、福祉、清掃などさまざまな用途に使用されるロボットのこと。かつては夢物語でしたが、技術は日々目覚ましい発展を遂げています。神奈川県では「さがみロボット産業特区」を中心に、生活支援ロボットの実用化を推進。空気圧を利用して安全に運動を補助するパワーアシストや離れた場所からカメラやモニターを使って自動で行う健康状態診断から、話し相手となるコミュニケーションロボットまで、幅広い分野での活躍が期待されています。

介護従事者の減少の流れを受け、介護やサービスの現場も、ロボットに任される日が来るかもしれません。さらに自動運転車や個人向けモビリティの普及は、公共交通機関が縮小する地域部で力を発揮することでしょう。労働や医療から、心のケアまで。人口減少に伴って生まれる社会の隙間を、ロボットが埋めてくれるのかもしれません。

未来のために、今から準備を

これらはあくまでシミュレーション、データを元にしたフィクションです。明るい未来、悲観的な未来。どんな未来がやって来るのかは正確に予測することはできません。しかし、どちらであろうと、他人事ではありません。高齢化は確実に進行し、超高齢社会はすでに始まっているのです。神奈川県では、「未病」対策をはじめとしたヘルスケア意識の改善、高齢者の積極的な社会参加、地域の活性化、選択と集中による投資の重点化など、多角的な超高齢社会対策を実施しています。しかし一人ひとりが超高齢社会について考え、できる準備を進めておくこともまた大切です。

神奈川県の人口統計について詳しく知るなら