2017.10.06

超高齢社会で安心して暮らすために見てみよう2050年の神奈川県未来への手がかり

超高齢社会で安心して暮らすために。見てみよう2050年の神奈川県未来への手がかり

現在までの人口推移とこれからの予測データを見れば、人口減少とさらなる高齢化は避けられない問題であることは明らかです。では、現在の状況が続き予測が現実となった場合、2050年はどのような社会になっているのでしょうか? まずは予測データに基づいた未来の社会を覗いてみましょう。未来に待っている課題と取るべき対策、そして私たちひとりひとりが考えなくてはならない問題のヒントが見えてくるかもしれません。

もしも、このままだと・・・

雇用や収入のダウン?

1965年 胴上げ型
65歳以上1人に対して20〜64歳は9.1人
2012年 騎馬戦型
65歳以上1人に対して20〜64歳は4.2人
2050年 肩車型
65歳以上1人に対して20〜64歳は1.2人(推定)

出典:神奈川県人口ビジョン

現在の神奈川県の名目県内総生産は約27兆円規模。米ドルに換算すると約2,759億ドルで、フィンランドの国民総生産である2,723億ドル(2014年)に迫る勢いです。これは県内就業者数(県外からの通勤者含む)約356万人によって生産されたものだと推計されます。この就業者人口が減少することは、生産力の低下に直結。さらに消費者数も減少することから県内の小売店やサービス業の利用者も減少し、結果的に経済規模が縮小。さらに医療・介護需要の増加により、就業世代への負担が増すことも考えられます。

社会システム崩壊の危険も?

神奈川県内の後期高齢者収容能力の乖離幅(2015-2050)

神奈川県の後期高齢者(75歳以上)当たりの介護保険施設・居住系サービス・サービス付き高齢者住宅等の定員数の全国平均との比較について、2015年時点では1.5万床以上のプラスだったものが、2025年には2.5万床以上のマイナスに転じ、2050年には3万床以上のマイナスになると予測されています。

出典:東京圏高齢化危機回避戦略より作成

総人口が減少し経済規模が縮小する一方、高齢者の割合が増加。これにより医療・介護需要が拡大することが予測されます。日本創成会議の試算によると、今後10年間で神奈川県における入院需要は約20%、介護需要は約50%増加。これにより医療・介護施設自体や人員の不足を招くことに。さらに社会保障費も大幅に増加し、財政に大きな影響を及ぼします。

地域社会の維持が困難に?

神奈川県内の空き家数・率の推移

神奈川県内の空き家数・率の推移
調査年 空家数 空家率
1973年 10.5万戸 5.8%
1978年 15.4万戸 7.2%
1983年 18.2万戸 7.7%
1988年 19.6万戸 7.2%
1993年 27.1万戸 8.8%
1998年 34.9万戸 10.2%
2003年 39.2万戸 10.4%
2008年 42.9万戸 10.5%
2013年 48.7万戸 11.2

出典:総務省「住宅・土地統計調査」より作成

現在、横浜市や川崎市などでは人口増加が続く一方、すでに人口減少が始まっている市町村もあります。これにより空き家の数が年々増加し、2013年時点の空き家数は48.7万戸。これは県内の総住宅数の11.2%にも上ります。空き家は今後も増加傾向にあり、適切な管理が行われなければ防災、衛生、景観など、生活環境にも影響を及ぼすかもしれません。
さらにそれだけではありません。人口減少が進むと学校などの公共施設も統廃合が進むでしょう。小売店舗や生活インフラなどの都市機能も維持できず、地域コミュニティの維持自体が困難になることも予測されるのです。

神奈川の取組み

ただやって来る未来を待っているだけでは、問題は解決しません。神奈川県では未来に向けて、すでにさまざまな取組みを進めています。人口減少に歯止めをかけること、そしてより長くなる人生を健康で豊かにすること。これらの取組みが、明るい未来を築く第一歩となることを目指して。

自然増への取り組み「合計特殊出生率」の向上

合計特殊出生率の推移

出典:厚労省人口動態調査より作成

ひとりの女性が生涯に生む子どもの数を示す「合計特殊出生率」。2014年時点で神奈川県は全国平均の1.42を下回る1.31という低い水準となっています。これは未婚化、晩婚化や結婚した夫婦が子どもを生みたいと希望する「希望出生率」自体の減少などが主な原因。さらに都市部では保育所不足により働く女性が安心して子どもを託せる場がないこと、長時間労働により男性が育児に参加しづらいことなどの原因も指摘されています。神奈川県では雇用環境の改善や安心して子育てできる環境づくりを通して、出生率減少の原因をひとつひとつ解消し、2050年には合計特殊出生率2.07の水準を目指します。

社会増の対策「マグネット力」の向上

社会増減の推移

出典:厚労省人口動態調査より作成

出生率が向上したとしても、生まれた子どもが成長し、経済・社会の担い手になるには一定の期間が必要です。そこで神奈川県では自然増への取組みと合わせて、転入数が転出数を上回る社会増への取組みも進めています。社会増への取組みの基本は「行ってみたい、住んでみたい、人を惹きつける魅力あふれる神奈川」を創ること。神奈川県には産業・科学技術など大きな潜在力があり、また「さがみロボット産業特区」「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区」「国家戦略特区」という3つの特区に指定されているなどの優位性もあります。さらに観光振興を通した外国人観光客の呼び込み、都会と田舎の良さを兼ね備えた地域の魅力発信で、人を惹き付ける「マグネット力」の向上を図り、年間1~2万人の社会増を将来的にも維持します。

超高齢社会への対策未病の改善による健康長寿社会の実現

神奈川県の平均寿命と健康寿命の

神奈川県の平均寿命と健康寿命(平成22年)
性別 平均寿命 健康寿命 平均寿命と健康寿命の差
男性 80.36歳 70.90歳 9.46歳
女性 86.74歳 74.36歳 12.38歳

出典:平成24年度厚生労働科学研究費補助金による「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」

このように人口減少に歯止めをかけるべく自然増、社会増への取組みが行われています。しかし、現在すでに進んでいる高齢化は変えようのない事実であり、これまでの社会システムでは超高齢社会を乗り越えられないおそれもあります。これに対し進めているのが「未病」の取組みです。これは病気になって初めて行動を起こすのではなく、日常の中で自身の「未病」の状態をチェックし、心身の状態の維持、改善を目指すことで、特定の疾患の予防・治療を促進し「健康寿命」の延伸につなげるという取組み。2015年10月には「未病サミット神奈川 2015 in 箱根」を開催。未病を基軸に新たなヘルスケア・社会システムについて議論し、「未病サミット神奈川宣言」を採択しました。今後はこの宣言をさらに具体化し、「未病」の取組みをさらに進めることで、超高齢社会を乗り越えていきます。

人口減少に歯止めをかける
超高齢社会を乗り越える

これら2つの課題を乗り越えることで、明るい未来の実現に取り組む神奈川県。目指す将来像は「行ってみたい、住んでみたい、人を惹きつける魅力あふれる神奈川」と「いのちが輝き、誰もが元気で長生きできる神奈川」です。

神奈川県の人口統計について詳しく知るなら