県内で広がる生涯学習

インタビュー

県内で広がる生涯学習についてお伝えします。
地域に根ざした取り組みなども生涯学習の一つです。

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学校や施設を回って演奏 「音楽の楽しさを伝えたい!」
楓響(ふうきょう)ウインドオーケストラ

今回のインタビューは、相模原市を中心に地域活動をしている「楓響(ふうきょう)ウインドオーケストラ」です。「音楽を通じてのボランティア活動」を目的に集まった、現役の高校生から60代までの、年齢もキャリアも様々なメンバー総勢65名による吹奏楽団。「音楽の楽しさを伝えたい!」と、無償で市内の学校や福祉施設を訪れ、演奏会を開催しています。団長の潟山(がたやま)さんにお話を伺いました。

練習風景(取材時の会場は、相模原総合学習センター)

好きで演奏するだけじゃなく、施設を回って音楽の楽しさを伝えたかった

初めに、「楓響ウインドオーケストラ」について、紹介していただけますか?

潟山:1997年4月に発足した吹奏楽団体です。相模原市内で、週1回の練習と毎月2回程度、学校や福祉施設等を回って演奏するのが主な活動。そして、年に1回、定期演奏会を開催しています。団員には、社会人も学生もいて、現在、メンバーは65人ぐらい。男女の内訳にあまり差はありませんが、多分6:4ぐらいで女性が多い感じかな。少し前にちょうど平均年齢を出したんです。45歳くらいでした。一番下は現役の高校生、上は確か67〜8歳くらいだったかと。高校生は、学校の部活との掛け持ちらしいんですけど、部活では、どうしても少人数向けの曲しかできないから、物足りないらしくて。お友達を誘ってくれて、高校生がもう一人増えて2人になる予定です。

潟山さんが、創設者でいらっしゃるのですか?

潟山:いえ、1997年(平成9年)創設で、私は2代目です。初代の団長は、高校時代吹奏楽部で、そのOBたちが集まって、「ボランティアで、いろんな施設を回って演奏活動できたらいいね」って、そんなコンセプトで立ち上げたそうです。立ち上げ当時のメンバーは、確か10人ぐらいだったと聞いています。私は、創設10年目ぐらいの時に入団しました。自分たちが、ただ好きで演奏会をしたり、発表したりするだけじゃなくて、施設を回りたい、音楽の楽しさを伝えたい。その想いは今も引き継がれています。

誰かに誘われたのでしょうか?

潟山:そうですね。私の担当はトランペットなんですけど、入団の経緯としてはちょっと特殊でして・・・。実は、楓響オーケストラには、他にもう一つ姉妹バンドがあるんですよ。初代団長の奥さんが、たしか、ちょうどお子さんができたタイミングに立ち上げたバンドで、活動は平日の午前中、「子どもを連れてきてもいいよ」という、お母さん向けのバンド。打楽器のような大きい楽器とか、譜面とかは楓響オーケストラと共有にして、なるべくお金がかからないよう、お互い工夫しながら運営しています。その姉妹バンドに、私の妻が入ったんです。妻もトランペットをやっていまして、同じ高校の吹奏楽部の同級生。その妻が先に姉妹バンドに入って、この楓響オーケストラの存在を知って、「トランペットがちょっと少ないからお手伝いに来てくれないか」って私にも声がかかって、手伝いに行ったのが始まりでした。私は、トランペットを小中高、大学までずっとやっていたのと、楽器もまだ手元にあったので、いつかまた演奏できるといいな、と思っていたところでした。
入団する時は、特に審査などもなくて、条件は「経験者」で、多少でも楽器ができればOK。あとは自分の楽器を持っていることだけでした。これは今も同じです。

音楽への想いを熱く語る、団長の潟山さん

団長は、いつごろ引き継がれたのですか?

潟山:入団5年目ぐらいでしたか、副団長に指名されましてね。多分、いつも休まず参加していたので、出席率が良かったっていうのが一番の理由だと思います(笑)。子育てもちょうど一段落した時だったので、暇で、本当によく参加していたんですよ。その後、副団長になってから6〜7年経った頃、初代の団長が仕事で転勤することになってしまったんです。海上自衛隊横須賀音楽隊の方だったんですけど、佐世保に行くことになってしまって。仕方なく(笑)、代わりに私が繰り上がり、団長になりました。

団長になると業務の負担も大きくなるのではないですか?

潟山:そうですね。やることはやっぱり増えますね。普通は仕事をしておりますので、大変といえば大変です。練習日はいつにしよう、会場をどこにしよう、会場を押さえないと、みたいな細かいことや、演奏依頼が来た時の打合せとか。ただ、その辺りは、それぞれ係がいて、振り分けてお願いしているので助かっています。主に、広報係が演奏依頼を受け、企画係が演奏する曲を決め、あとは、お金を管理する会計係です。
演奏会は無償のボランティアなので、入ってくるお金はないのですが、団員から団費(一般2,500円、学生1,000円)を預かって、会場代などの経費をはじめ、いつ、どのように使ったかをしっかり管理しています。

定期演奏会を間近に控え、練習に力が入ります

定期演奏会の指揮は、プロの方にお願いしています

演奏会は、やってほしいとオファーがくるのですか。それとも、こちらから声をかけているのでしょうか?

潟山:演奏する機会が少なかった時代は、結構アピールして回って、「演奏させていただけませんか」って、営業みたいなことをしていたんですけど、ありがたいことに依頼が増えてきたので、最近は、ほとんどがオファーしていただいた演奏会で、年間びっしり予定が埋まってしまいます。それだけ人気というか、安定してきた感じがありますね。やっぱり評判でしょうか。「また次も」、「来年もお願いしますね」と言っていただけるので、今はもう、すっかり営業は必要なくなりました。

涙を流してくれたり、
一緒に歌ってくれたり、
間近で反応を見られるのが何よりも嬉しい

活動されている中で、やりがいや喜びを感じるのは、どのような時ですか?

潟山:施設によっても色々違うんですけど、一番は、やっぱり聴き手の反応ですね。私たちの演奏を聴いて、昔を思い出して涙してくれたりとか、お子さんが一緒に歌ってくれたりとか、そういった反応を間近で見られるのは嬉しいし、何よりも楽しいですね。
以前、老人ホームにうかがった時、認知症の方がいらして、身体も全然動かないし、普段は何も反応がないような状態の方が、昔の懐かしい音楽を演奏したら、一緒に歌ってくれたんです。職員の方もびっくりされていました。やっぱり、そういうことがあると、やっていて良かったなと感じます。

手ごたえがあると、もっと頑張ろう!続けて行こう!と思いますよね。では逆に、ご苦労とか、困ることはありますか?

潟山:そうですね、団員の人数が多くなってきたので、メンバーの皆さんのやりたいことも多くなって、それを一つにまとめるのが、団長個人としては大変かな。いろんな方向性があって、やりたい音楽も皆さん違いますからね。
ただ、こんな曲をやりたいとか、あんな曲をやりたいとか、言ってきたりすることはありますけど、もめるほどでもない。割と皆さん、選曲には素直です。人間関係も良好で、本当に仲良くやっています。個々では、多少のことはあるのかもしれないし、大勢になればなるほど、本当は色々あるのかもしれませんが、大きないざこざとか、あまり記憶にないです。団長としては、皆さんが気持ちよく演奏できれば、活動も楽しくできるだろう、と思っています。

潟山さんの担当はトランペット。ホルンの方と交代で指揮をすることもあるそうです。
(写真中央が潟山さん)

活動しているうちに、
裏側の、目には見えない努力が見えるようになってきた

喜びもご苦労もある中で、活動から得た「学び」や「気づき」がありましたら、お聞かせください。

潟山:自分が何かしてもらう側の立場になった時、関わってくれるすべての人の「裏の努力」に気づけるようになりました。演奏にうかがう先で、事前の準備や当日の、表面には見えてこない、裏側でやってくださっている部分が見えるんです。見えるっていうか、考えるようになったって感じですかね。練習している会場も、訪れた施設も、いろんな人が「こうやっているんだろうな」とか、「あぁ。こんなことまでやってくれたんだ」とか、自分が見ていないところで、「やってもらっていることがいっぱいあるから、この場があるんだ!」みたいなことをすごく感じられるようになったんです。目に見えない努力が、見えるようになった、気づき、考えるようになったところが、一番大きいかもしれないですね。
例えばですが、ある施設に行ったら、すごく歓迎していただいて、パッと見ると、入口にウェルカムボートみたいな看板があって、ポスターを作ってくれていたんです。それを見ただけで、「ああ、いろいろ考えてやってくれたんだなぁ」って、感動しちゃう。あと、段取りがすごくしっかりしていると、「本当にスムーズに進行できるよう、丁寧に考えて準備していただいたんだな」って思うんです。感謝できるようになりました。
お互い、無償でやっていることじゃないですか。それなのに、ここまでいろいろやってくれるんだっていう気持ちです。本当は、仕事でも大事なことなのかもしれないですけど、仕事はやっぱりお金が絡んできますよね。お金が動いて、サービスしてもらって当たり前。だからこそ、この活動で体験する・・・、なんていうのかな、善意みたいなものがとてもありがたく感じられるんです。

なかなか活動する一歩を踏み出せないでいる方々に向けて、何かメッセージがありましたら、お願いします。

潟山:そんな大層なことは言えないですけど、そうですね、私は、音楽をやっていなかったら、こういう楽しい時間の使い方も分からなかったと思うんです。楓響オーケストラに入る前は、休日はサッカーをやっていました。意外にも、運動系です(笑)。でも、ちょっとお腹も出てきちゃったし、体も動かないし、怪我もしてしまって、続けられなかった。あと、子どもが小さいうちは、公園に引っ張り出されて一緒に遊んだりもしていましたけど、子どもも成長して、手が離れちゃった。そんな時に妻に紹介されて、また始めた音楽活動なわけですが、一段落した後の将来のことを考えると、“老後の楽しみ” じゃないですけど、やることがあるって、やっぱり楽しいし、いいですよね。将来のためになる、続けていけるものを、何か見つけて、持っておいた方がいいと思います。

そんな潟山さんにとっての生涯学習とは?

潟山:音楽って、終わりがないんですよ。完成形がないというか、いつまでやっても終わりがない。目指す、いい音楽を作りたかったら、いつまでも練習していていいんです。同じ曲を何度も何度も練習して、完成度もどんどん高くなっていく。ずっと練習して、ずっと上昇していける、どこまでも上を目指していける、学び続けていけるっていうのが、音楽のいいところだなぁと思います。なんでもそうなのかもしれないですけど、特に音楽とか芸術関係は、そういった向上心を強く持てていいですね。

ありがとうございました。

一言ひとことをかみしめるように、とてもゆっくりと、落ち着いた口調でお話しされる潟山さん。穏やかな中にも、音楽のことになると内に秘めた熱い想いがあふれ出てしまう。そんな団長さんだからこそ、大所帯のオーケストラを引っ張っていくことと、支えること、その両方がしっかり出来ていらっしゃるんだろうなと感じました。取材に訪れた日は、一週間後に定期演奏会を控えた、大切な練習日。至近距離で、大迫力の演奏を聞くことができて、感動してしまいました。「終わりがないから」と高みを目指して何度も練習を重ねて奏でられる音楽が、これからも、やさしく、楽しく、広く、地域に広がっていくことでしょう。

2026/10/10

プロフィール

楓響(ふうきょう)ウインドオーケストラ

1997年(平成9年)4月発足、現在の会員数は65名。主に、相模原市の小山公民館、総合学習センター、あじさい会館などで、毎週1回練習しています。年に1回、大きなホールで開催する定期演奏会で本領を発揮しますが、基本は、毎月2回ほど、学校や福祉施設で演奏する「音楽を通じてのボランティア活動」が目的の吹奏楽団。小さいお子さんからご高齢の方まで、心に寄り添う選曲で、音楽の楽しさを伝えています。

定期演奏会では、マーチをはじめ、吹奏楽オリジナル曲やポップス・ジャズ・映画音楽など様々なジャンルの曲を演奏。取材直後の2026年8月23日(日)に開催された定期演奏会では、「プロヴァンスの風<改訂版>」「喜歌劇『メリー・ウィドウ』セレクション」「バベルの塔」「Sprited Away<千と千尋の神隠し>より」など、アンコール含め全12曲を披露しました。(ご来場者数:約1,000人)

各施設での訪問演奏では、会場、年齢層などに合わせて選曲します。敬老会イベントでは、「東京ブギウギ」「瀬戸の花嫁」「有楽町で逢いましょう」「見上げてごらん夜の星を」など、支援学校では、「勇気100%」「童謡メドレー」「さんぽ」「マツケンサンバ」など、食フェス相模原では、「好きすぎて滅!」「ジャパニーズ・グラフィティIX~いい日旅立ち」「夢をかなえてドラえもん」などの演奏で会場を盛り上げます。

楓響(ふうきょう)ウインドオーケストラ ホームページ
https://fukyo-wo.jimdosite.com/

写真は2026年8月23日の定期演奏会より
(提供:楓響ウインドオーケストラ)