Art

特集 Art vol.2

アートが叶える共生社会

NPO法人
「アール・ド・ヴィーヴル」(小田原市)

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「自分らしく生きる」アートが叶える共生社会

ダウン症や自閉症、知的障がいのある人たちが、自分の意思を発信して「自分らしく生きる」ことを追求できる場をつくりたい―。そんな思いを持って活動しているのが、NPO法人「アール・ド・ヴィーヴル」(小田原市)です。ここでは、障がいの種類や程度に関わらずアートという共通項でつながる利用者が、思い思いに創作した作品を通して社会とのつながりを深めています。

アートを共通項にアトリエに仲間が集う

アール・ド・ヴィーヴルは、障がいを持つ人たちが個性と感性を磨き、社会との関わりや自立的に生きることを目指して2013年に設立しました。2016年に小田原市内にアトリエをオープン。18歳から50代まで、幅広い年代の利用者が小田原市や南足柄市、湯河原町、箱根町などから通い、日々創作活動に励んでいます。施設では、オリジナルのグッズ販売や作品のリースなどで利用者の工賃を得るだけでなく、社会とのつながりを目指した展覧会、ワークショップも開催。小田原市でキャンプを行うラグビーワールドカップのオーストラリア代表チーム「ワラビーズ」の歓迎フラッグ制作や、「ともに生きる社会かながわ憲章」の理念を広げるイベント「みんなあつまれ」のロゴをを手がけるなど、活動の幅を広げています。

午前10時、マンション1階のアトリエに利用者が続々と集まってきます。支援員やボランティアのアドバイスをもらいながら、好きな画材を使って絵やイラストを描いたり、フィギュアやクラフト品を作ったり。それぞれがマイペースで作品づくりに励みます。活動を強制するのではなく、得意分野や個々のペースに合わせた創作環境を提供することが、アール・ド・ヴィーヴルのモットーです。

アトリエを利用する方々の写真

障がいがあっても選択できる人生を

県西地域でダウン症児者を育てる親子のための任意団体「ひよこの会」が、アール・ド・ヴィーヴルの母体となりました。ひよこの会では、障がいへの理解を深める学習会や交流会、イベントへの参加、知的障がい者が主演する映画の上映会といった活動を展開。わが子の成長に伴い、「子どもたちが持っている才能を再発見する場をつくろう」と会員から声があがり、ダウン症だけでなくさまざまな知的障がいを持つ子どものためのアートワークショップを定期開催するようになったのが、法人設立のきっかけです。アール・ド・ヴィーヴルの理事長で、ひよこの会の会長も務めた萩原美由紀さんは「障がいがあっても、自分で選択していく人生を送ってほしい」と、設立の思いを語ります。

アトリエ利用者の作品

認められる場所

「認められる場所を提供することで、利用者はやりがいや生きがいを感じることができる」と、言葉に力を込める萩原さん。障がいを理由に、自己実現の機会を奪ってはいけない―。そんな思いが、活動の根底にあります。利用者の多くが、施設に通うようになることで表情が豊かになり、中には車椅子を使わなくても歩けるようになった人もいるそう。日々成長をみせる利用者の姿は、萩原さんたちスタッフの大きなやりがいにつながっています。「その人がハッピーになれば、家族もハッピーになる。トライアンドエラーを繰り返しながら、共生社会のあるべき形を模索していけたら」

展示される作品の写真
取材先:アール・ド・ヴィーヴル(就労継続支援B型事業所)
障がいのある人たちが自ら仕事を選択して働くことができる場を目指し、2016年に事業所を設立。地域社会とのつながりの中で社会的に自立し、「自分らしい毎日の仕事」を持つことを目指してアートを中心とした創作活動を行っている。名称のアール・ド・ヴィーヴルは、フランス語で「自分らしく生きること」。
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