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認定NPO法人 多文化共生教育ネットワークかながわ

2024年 12月 06日

「外国につながる子どもたち」を支援して30年

2024年 12月 06日
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事務局が入る横浜市栄区の「あーすぷらざ」

 様々な理由から日本に移住し生活をしている「外国につながる子どもたち」。その子どもたちが日本の社会で共に生きられるようにと、約30年にわたり教育支援などを行っているのが認定NPO法人多文化共生教育ネットワークかながわ(以下、ME-net)です。
 横浜市栄区にある「地球市民かながわプラザ(あーすぷらざ)」内に事務局を置いていて、普段は3人ほどのスタッフが業務にあたっています。

高校進学ガイダンスやコーディネーター派遣、フリースクールも

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ガイダンスで体験談を語る先輩たち

 手がける事業は幅広く、主なものには高校進学ガイダンスや神奈川県内の公立高校への多文化教育コーディネーターの派遣、また行政機関と県内NPOなど9団体によるネットワーク会議の開催などがあります。神奈川県教育委員会と協働で作成している公立高校入学のためのガイドブックも重要な活動の一つです。英語・中国語・スペイン語など10言語に対応しており、毎年、県内の公立中学校や公共施設などに計6,500部を配布しています。

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高校ブースで教員から説明を受ける参加者たち

 その他にも、就学前の子どもの教育に関する相談から大学進学に関することまで、外国人の家庭が抱える教育に関する様々な相談を受け付ける事業を、事務局を含む横浜市内3カ所で定期的に開催しています。年間約100日からなるフリースクール(横浜市南区の浦舟複合福祉施設内)も開いていて、学齢超過で中学校に入れない、母国または海外で中学を卒業していて、日本で進学を希望している子どもたちに、高校進学に向けた勉強の場を提供しています。
 学習支援だけではなく、交流会やキャンプ、フェスタも例年開催しており、親睦を深めることで孤立予防にも役立てています。2019年からは県厚木保健福祉事務所の委託で生活困窮家庭の子どもの学習支援教室も開催。参加者の7割以上が外国につながる子どもたちです。
 2020年には、県教育委員会と(公財)かながわ国際交流財団、ME-netの三者が協働して、県内の日本語指導が必要な高校生の進路と校内の支援にかかわる調査を初めて行いました。外国につながる子どもたちの高校卒業後のキャリアも視野に入れていて、今後とも県教育委員会と連携して教育機会の拡大・充実に取り組んでいく方針です。

高校進学、情報不足の解決に

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キャンプ参加者みんなで夕食作り(2024年11月、横浜市野島青少年研修センター)


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グループに分かれて色々なことを話し合い共有しました(写真は一例)


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くつろぐグループのリーダーたち

 支援活動のきっかけは、教育現場からの働きかけでした。高校進学を希望する外国につながる子どもたちに進学に関わる情報をしっかり提供しようと、共通の問題意識を持つ教員の有志がガイダンス実行委員会(ME-netの前身)をつくり、1995年に「第1回高校進学ガイダンス」を実施。1998年からは県教育委員会の後援事業となり、それを機に「多文化共生教育ネットワーク(ME-net)」として活動を開始しました。
 その後、常設の相談の場が必要として2003年に「かながわ外国人教育相談」事業を立ち上げ。2007年に県内公立高校への「多文化教育コーディネーター」の派遣をスタートさせるなど(2023年度は31校に派遣)、行政や関係団体と協力して多文化共生社会を目指し、事業を展開しています。2011年にNPO法人化し、現在は認定NPO法人となっています。
 これらの活動が多方面から評価され、横浜弁護士会(現、神奈川県弁護士会)の「人権賞」や、日本とアジア・オセアニアの若い世代を中心とした相互理解などへの貢献を顕彰する(公財)かめのり財団「かめのり賞」などを受賞しています。

10言語対応のページを特設

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10言語に対応したガイダンス特設ページ(スクロールすると各言語で確認できる)

 ME-netの活動の原点と言える高校進学ガイダンスは、2023年度は横浜・川崎・相模原・平塚・厚木・大和の県内6カ所で実施。日本語を母語としない高校進学希望者と、その保護者・家族・支援者を対象に計454人が参加しました。実施にあたりホームページに設けた「ガイダンス特設ページ」には、やさしい日本語と10の言語で高校入試の紹介や先輩の体験談動画、学習教室や奨学金の紹介資料などを掲載するなど、より詳細で具体的な情報提供を行っています。

共生社会実現に「教育が重要」

 ME-netの創設メンバーの一人で、事務局長を務めている高橋清樹さんは、1995年に初めて高校進学ガイダンスを開いた際、参加者が予想を超える100人余りとなり、いかに高校進学に関する情報提供が求められているかをひしひしと感じたといいます。
 県立高校の教諭を務めていた高橋さんは「教育現場で外国につながる子どもたちとの出会いがあった」と振り返ります。その子どもたちが日本社会で生きていけるよう、現役の頃からボランティアで日本語教室を主催し、その運営の仲間たちとの輪がME-netにつながっています。様々な個性を認め合う多文化共生のためにも「教育が重要」と言葉に力がこもります。

行政や支援団体の架け橋に

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事務局長の高橋さん

 高橋さんは、ME-netの強みについて、「行政や支援団体などとのネットワーク」と説明します。これまでに培ってきたつながり(ネットワーク)を生かし、外国につながる子どもたちが高校進学にあたり抱えている課題や必要としている支援などについて情報共有するとともに、各団体がそれぞれの役割を果たせるよう活動をME-netがコーディネートしています。そのコーディネート力もME-netの特筆すべき特徴です。
 就労などを目的に海外から日本に移住する人たちは今後も増えることが予想されるなか、高橋さんは「国としての移民政策の整備が根本的には必要」と指摘しつつ、「就労者だけでなく、一緒に日本で暮らす家族へのサポートが、より一層求められている」と話しました。

プロフィール

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団体名

認定NPO法人 多文化共生教育ネットワークかながわ

活動内容

外国につながる子どもたちの教育を支援し、その子どもたちと周囲の方々が共に生きられる社会を実現するという理念のもと活動しています。高校進学ガイダンス、ネットワーク会議、多文化教育コーディネーター派遣などの神奈川県教育委員会との協働事業をはじめ、県内の市町村教育委員会や関係団体と広く連携し、課題解決に向けて協力し合う関係を構築しています。彼らが日本社会で育つ中で、制度や環境の違いによって不利益を被ることのないよう社会の課題を明確にし、その解決をめざすべく多角的に事業を展開しています。