

「ラリグラスの会」
2024年 1月 4日外国籍の人々と地域住民が“ともに暮らす箱根”をつくりたい
2024年 1月 4日
(左から)箱根町社会福祉協議会の栢沼さん、井上さん、山本さん

毎回盛況なカレーパーティー
観光事業が盛んな箱根町には現在、700人を超える外国籍の人々が暮らすと言われています。特にネパール人の割合が多く、主に旅館や温泉施設などに従事し、箱根の観光産業を支えています。外国籍の人々にとって、文化・慣習の違う土地で暮らすことはとても難しく、生活のちょっとした困りごと、日本で暮らすうえでの不安などを抱える人が多かったと言います。
「彼らの声に気が付いたのは、コロナ禍がきっかけでした。生活相談などに訪れる方が増え、私たちもこんなにたくさんの方々が慣れない日本で懸命に暮らしている実態に驚かされました。話を聞くうちに、同じ外国籍住民でも横の繋がりがないこと、皆が生活の困りごとを解決できずにいることがわかりました」と話すのは会を発足させた箱根町社会福祉協議会の井上靖雄さんと山本久乃さん。外国籍の方の相談に触れる一方で、地元からは、「近所に越してきた外国人の騒音に困っている」「ゴミ出しルールを守ってもらえない」などの戸惑いの声が寄せられていたと言います。
2人は、双方の声を聞くうち、困りごとや戸惑いが大きくなる前に、双方で語らい、お互いを知ってもらうことで解決できることがあるのではないかと考えるようになりました。
「外国籍住民だけでもない、日本人だけでもない、誰もが一緒に考え、課題を解決する会を立ち上げようと。言語の不安などはあったけれど、まずは踏み出してみようと考えました」。
こうして2021年12月、町社協職員の呼びかけにより、外国籍住民や民生委員、自治会などが参加する「ラリグラスの会」が発足。“地域の様々な課題を一緒に考える“をテーマに、カレーパーティーや日本語教室など通じた交流が始まりました。
本音を支援に繋げる

交流会で意見を交わすメンバーら

救命講習
同会では、季節のイベントのほかにも、日本赤十字社の協力のもと“やさしい日本語”を活用した「救命法講習」なども開催しました。何度も交流会を重ね、彼らの本音を聞くことで、「彼らが何に困り、何を必要としているか」を理解することから始めたと言います。
情報共有にはSNS(LINEグループ)も活用し、顔を合わせていなくても様々なコミュニケーションが自然に発生する機会を創り出しました。
「あるご婦人が『うちにはこんな洋服があって、誰かにもらって欲しいの』とメッセージを送ると、欲しい人が反応したり。ほかにも『寒くなってきたから風邪に気をつけて』とメッセージを送り合ったり、外国籍の方が家族や自分の生活の様子を写真で送ったり。皆さん、日本語で活発に交流しています」と話すのは、発足した2人から会の運営を引き継ぐ同社協の栢沼拓也さんです。観光客が戻り、箱根町の観光業も活況を取り戻している昨今、外国籍の人々も仕事で忙しい日々を送っているそうです。「以前のようにイベントに参加する機会が減ってしまうかなと心配していたのですが、ある在住ネパール人のメンバーが、『皆に会えなくてもSNSグループのコミュニケーションを見ていると元気になる。皆の会話が私の生活の支えになっている』と話してくれたんです。繋がりの大切さを改めて感じ、こちらまで嬉しくなりました」と栢沼さん。同会では今後も、イベントなどを通じて、SNSの登録者を増やしていく方針だと言います。
支援を受ける存在から、“地域の一員”へ

イベントで赤い羽根共同募金の活動に取り組むメンバー
「会としては、外国籍の方々を支援するだけでは足りないと思っています。あくまで、地域の一員として支え合う存在になってほしい。そのためには、彼らにもできることをやってもらって、地域のためになっている、役割を担っているという自覚を促せたら」と栢沼さんは話します。箱根町社会福祉協議会として星槎大学のイベントに出店した際には、会のネパール人らが赤い羽根共同募金の活動に参加してくれるなど、少しずつですが、助け合いの精神が生まれつつあると言います。
「ある時は、地元自治会から、祭りの担い手不足の話があがり、メンバーである外国籍の方々が祭りに参加することがありました。お互いに支えあう、そうした関係が築けるのも、日頃の交流があるからかもしれません。彼らだって誰かの役に立ちたいし、それがともに生きるということだと感じます」。
【関連情報】
神奈川県では、ラリグラスの会と連携して、外国につながりのある方々へ、生活支援のための出前講座を実施します。(令和6年2月14日) 出前講座のページへ
プロフィール

ラリグラスの会
外国籍住民が多く居住する箱根町で2021年、箱根町社会福祉協議会や外国籍住民、民生委員、支援団体などが話し合いを重ねてラリグラスの会を発足しました。文化の違いや、外国籍であるということへの偏見から生じる生きづらさなどを共有し、地域とのつながりを作ることで、外国籍の人々が安心して暮らしていける場を創出しようと、ランチ会や日本語教室、交流会などを行っています。 ラリグラスとは、シャクナゲの一種。