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WLBやD&Iは「企業の破綻確率を下げる」

 リスクマネジメントの2つ目は、「企業の破綻確率の低下」です。

 イギリスのダイバーシティの研究で、「女性役員が1人以上いると、企業の破綻確率が2割減る」という調査結果があります(2008年に英国リーズ大学Credit Management Research Centreによる17,000社を対象とした調査結果)。私は調査結果が発表された頃、ちょうどイギリスで企業ヒアリングをしており、現地企業の担当者から教えていただきました。ですから、たぶん日本でこの研究を最初に紹介したのは私ではないかと思います。
 なぜ、破綻確率に差が出るのでしょうか。女性の判断がいつも正しくて、男性がいつも間違っているとは思いませんが、経営陣が男性ばかりだと、ハイリターンでハイリスクな方針を選択する傾向が強くなります。  そこに多面的な判断をする女性役員が何人か入ると、視点が堅実になります。海外のD&I先進企業において、CSR、コンプライアンス、法務、人事に関する部門に女性担当役員が多いのは、そのようなリスクマネジメントの観点もあるのではなかと思います。
 世界を恐慌に陥れたリーマンショックを思い出してください。あれはリーマン・ブラザーズだから破綻したのであって、リーマン・ブラザーズ&シスターズだったら破綻しなかっただろう、というジョークがあります。米国のインターネット新聞『ハフィントン・ポスト』創設者のアリアナ・ハフィントン氏に端を発するジョークで、安倍首相も海外のスピーチでよく引用しています。

男性は組織防衛の、女性は社会防衛の軸に強い

 私はふだん、あまり男女の性差を考えないようにしていますが、もしかすると男性に特有の、あるいは女性に特有の傾向があるのではと、思うことがあります。例えば、男性は組織防衛に関する軸が強く、女性は社会防衛の軸が強いように思います。海外では、女性のほうがjustice(社会正義)に関するセンサーが強いと言われています。
 知り合いの食品業界の女性経営者、女性役員の方々は、かつて頻発した賞味期限改ざんの不祥事に関して、「あり得ないことだ」と口を揃えていました。自分の子どもに食べさせて安全かどうか。あるいは、会社が企んでいることを堂々と家族に話せるだろうか。そんなふうに胸に手を当てて考えれば、絶対に踏みとどまるはずだとおっしゃっていました。

 これも以前、私がお手伝いさせていただいたた食品メーカーで聞いた話ですが、ある工場で食品の製造中に、誤って卵の殻を混入させてしまい、製品が流通に乗った後で事件が発覚したことがあったそうです。混入は微量であり、機械で粉砕して加工処理を施すので、誰が口にしてもまったくわからないレベルだったといいます。
 しかし社内でこれを公表するべきか否か、議論したところ紛糾し、最終的に、食品部門の責任者であった女性社員の、「自分の家族に食べさせたくないものを販売するのはおかしい」という意見によって、回収を決めたのでした。そのため、謝罪広告を含め、巨額のコストがかかりましたが、不祥事を隠さず公表したことによってブランドイメージはさらに向上し、以前よりシェアが拡大するなど、ピンチはチャンスに転じたのです。
 女性特有の、生活者や消費者としての健全な感覚や常識は、職場の体質を健全にするという観点からも有益です。

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