GUIDANCE REPORT 2017.1201

かながわ・スタートアップ・ガイダンス 第五弾@横浜
西村拓紀デザイン株式会社 西村拓紀さん
【イベントレポート】 「新規事業のための『1を0』にするデザイン」とは?


Kanagawa Startup Guidanceは、神奈川県の経済を支えるような質の高いベンチャー企業を数多く創出することを目指して、 起業準備者やスタートアップ受けのイベント、プログラム、情報発信を行い、神奈川県におけるスタートアップコミュニティの形 成を目指す、Kanagawa Startup Hubの一環として、起業準備中の方、将来的に起業を考えている方向けのイベントです。

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神奈川の各地で開催しているスタートアップガイダンス。いよいよ5回目となりました。今回は 横浜開催。これまでとは少し違った視点から、起業・創業を捉え直す機会を提供するために、プロダクトデザインの分野で第一線で活躍するデザイナーである西村拓紀さんをお招きして、製造 業に関わらず新しいプロジェクトを生み出す上で考えなければいけないこと、デザインという行為の前にどんなプロセスがあるのかについて、たっぷりとお話を伺いました。

“1を0にするデザインの意味”

大手メーカーで家電のデザインを数多く手掛け、2013年に独立。これまでにプロダクトデザインを軸にベンチャー企業や町工場との協業プロジェクトを多数生み出している西村さん。グッドデザ イン賞6件、iF product design award5件、Design Intelligence Award2件、Design In telligence Award Gloval Top22など国内外の主要デザイン賞を多数受賞している西村さんの 頭の中をのぞく今回のガイダンス。まずは、今注目のプロダクトの1つVIE SHAIR(VIE STYLE inc.)のプロジェクトに携わった時のエピソードから。当初代表の今村さんから相談を受けた時は現在のプロダクトとは違うものを考えられていたそう。今街中で音を出すことが極端に排除されるようになっている時代、ミュージシャンでもあり音に携わる仕事をしている今村さんとしては、多くの人がみんなで音楽を楽しめるプロダクトの必要性を感じ、西村さんに相談するに至ります。西村さんは、今村さんが提供したい本質的な価値を、対話を通して少しずつ掘り起こしていき、一緒に音楽イベントに出向いたり、そこで体感した感覚を共有しながら、現在のプロダクトまで落とし込んでいきました。その過程を、すでに思い描いているアイデアとしての“1”に、一度立ち止まって本質的なことを捉え直す行為を“0”、と捉え、本質的な価値を再確認することで新しい“1”との出会いが生まれると、西村さん。多くの方々との仕事を進めていく中で感じたのは、本当に提供したい価値を最初から理解するのは難しいということ。しっかり立ち止まって、対話を通じてじっくりと捉え直すことで、ブレないコンセプトを生み出し、プロダクトとして価値あるものを生み出せるそう。

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デザインを理解するには、“料理”の概念と一緒

起業家が自らの会社の得意な技術を使って、付加価値の高いプロダクトを生み出したい場合、その価値を生み出せるデザイナーとの出会いが大切と語る西村さん。ただ、デザインの世界にも様々な職域の方が存在する。それを“料理”に例え、実際に“おいしい料理をつくった”コックさん、“おいしい料理を提供するお店経営する”オーナー・経営者、その“おいしい料理の食材を育てた”生産者、などなど、一言で”料理”と言っても関わる人はさまざま。
デザインでも、職域がそれぞれあり、手を動かしてデザインする“デザイナー”、その生み出したい価値を作れるスタッフを集め、チームを動かせる“ディレクター”、など、然るべき人に相談できないと、結果として良いものが生まれないことに。漠然とデザイナーに依頼するのではなく、ご自身が”料理”に例えると、食べたい料理がわかる人は、その専門店を探せいい、今自分が何を食べたいのか、わからないのであれば今何を食べたいのか問い直さないといけない。そうしないと本当においしい料理を食べることが叶わないのでは。と西村さん。ぜひ、そのような視点を持ってデザインする人たちにアプローチしてみて欲しいとのこと。

盛り上がる質疑応答

後半は、ご来場いただいたみなさんからの質問に西村さんが答える時間に。自らも中小企業の経営者の方からの質問は、どうすれば西村さんのような方と出会えばいいのか?というもの。この質問に、「僕自身もメーカーをやめ、独立した当初、プロダクトデザイナーは一人では生きていけないことに気がついた。大きな会社であれば、デザインする人、つくる人、売る人、それぞれの役割がある。それが一旦会社を飛び出した時に、プロダクトをデザインしたくても、自分だけでは作って、生産することはできない。」西村さんの場合は、町工場やものづくりをする企業を応援する株式会社enmonoが開催するイベントが、今回の会場となるmass×massで開催されるのを知り、イベントに参加。そこで、魅力的な中小企業の経営者たちと出会い、そこで生み出されたプロダクトがきっかけとなり、今に至るそう。そのことから「こういったイベントや場所に出向くことも、大事なことだと思います。待っていても、向こうから来てくれることは稀ですから。」と西村さん。イベントの終了後もしばらく来場した皆さんとの対話を丁寧にされていた西村さん、こういったスタンスにヒットを生み出すヒントがあるのかもしれませんね。

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西村さんがデザインした、医療用ウェアラブルチェアarchelis。長時間手術などを行う医療者向けの足に装着して使用するプロダクト。非常に大きな注目を集めている。