GUIDANCE REPORT 2017.0804

分業型社会から、統合型の社会へ。
養豚・福祉・林業、地域とつながるビジネスの可能性。
【イベントレポート】 これからの未来を担うビジネスとは?| スタートアップ・ガイダンス第一弾@藤沢


Kanagawa Startup Guidanceは、神奈川県の経済を支えるような質の高いベンチャー企業を数多く創出することを目指して、起業準備者やスタートアップ受けのイベント、プログラム、情報発信を行い、神奈川県におけるスタートアップコミュニティの形成を目指す、Kanagawa Startup Hubの一環として、起業準備中の方、将来的に起業を考えている方向けのイベントです。

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先日7月29日土曜日に行われた“かながわ・スタートアップ・ガイダンス”第一弾のレポートをご紹介致します。トップバッッターの起業家として登壇いただいたのは、株式会社恋する豚研究所代表取締役の飯田大輔さん。千葉県香取で代々畜産農家として養豚業を実践されて来た飯田さん。今では神奈川県内のスーパーでも手に取ることが出来るほどのブランド豚として、多くの方々に知られる商品を手がけられています。

事業継承に近い形で経営に関わり、畜産の事業と合わせて、障害のある方が働く福祉作業所の運営を行う社会福祉法人福祉楽団の理事、株式会社恋する豚研究所の両方をバランスよく経営をされています。ミッションとして 『ケアを考え、暮らしを良くし、福祉を変える』を掲げ、これまでの福祉の概念に捉われず、新しい価値観を持ちながら、事業づくり&商品づくりを丁寧に実践されています。そんな飯田さんに、【これからの未来を担うビジネスについて】、様々な視点でお話いただきました。

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ガイダンスの冒頭は有限責任監査法人トーマツ村田より、Kanagawa Startup Hubのプログラムの主旨と、起業家支援のプログラムとして2つ実施するKanagawa Startup Acceleration Program(伴走型支援)とKanagawa Startup Camp(スクール型支援)の取り組みについて、参加者の方々にご案内。熱意のある起業家の参加を呼びかける。

こだわりが価値を生む。

“恋する豚研究所”は、一貫経営と呼ばれる養豚のスタイル。繁殖から飼育まで自らの農場で行うため、豚の生産から出荷までを自社で行えることで、安心安全、こだわりの製品を提供することが出来るとのこと。

『 私たちは一貫経営の他にも、豚の餌である配合飼料も自社でつくっています。
実は飼料をつくっている養豚家はほとんどいません。わざわざそのための工場を作らなければならないですし、今は飼料がなくなったら自動的に補充されるようなシステムまであるんです。それでもあえて、我々がなぜ飼料を自社でつくるのか? それは豚にとって体に良い、美味しいご飯を提供してあげることが出来るかです。私たちも、日々の暮らしの中で小麦やお米を生では食べませんよね。必ず加熱してから、食べます。その方が美味しいし、栄養を体に取り入れやすいから。それに加えて、発酵させた飼料をつくっています。 』

 さらに、飯田さんたちは他の養豚家がやっていないことを実践されているそう。毎週1頭は自分たちで育て出荷した豚を、屠畜場から引き取り、実際に食して感応検査を実施。そして、化学的な検査も行い、グルタミン酸のイノシン酸などの含有量もきちんとチェックをしているとのこと。ここまでチェックしている養豚家は少なく、徹底した品質管理が『恋する豚研究所』の魅力の1つになっているようです。

デザインの価値。不等価交換を起こさない経営。

“恋する豚研究所”があるのは千葉県の成田空港の近く。いわゆる都市ではなく、地方都市でも田園風景が広がるエリア。飯田さんたちは豚の加工を行う工場の上に、食堂とオフィスを作り、実際に“恋する豚研究所”の豚肉を食べることができる場を設けている。当初この食堂の売上は期待していなかったと飯田さん。それが蓋を開けてみたら、月1000万ほどの売上になっているとのこと。すごいですね。

『千葉県香取は都心から車で1時間ほど。決してアクセスが良いところではないんです。それでも、どんな場所で豚を育てているのか、実際に足を運んで、その土地をみてもらい、食を通じて地域にお金を落としてもらえたら。僕たちのハムは地元千葉の海で取れた塩を使い、丁寧に時間をかけて熟成させた商品づくりを行なっています。お店で提供するしゃぶしゃぶ用のポン酢も地元のお醤油屋さんとのコラボ商品。これが年間で相当売れるんです。僕たちの事業で意識しているのは、できるだけ地域でお金をまわすこと。そうすることで、地域全体の暮らしがよくなる。そこの貢献できる事業をつくることは、事業をつくっていく上で大事だと思います。』

この一階が工場、2階が食堂とオフィスとなる建物は、非常に明るく開放的な設計に。とても洗練された空間で食事を楽しむことができるようになっています。ここにも、飯田さんのこだわりがありました。

『私たちは何かものをつくるとき、必ずクリエイターの方にお願いするようにしています。建物は著名な建築家に、商品のパッケージは大手企業のパッケージを手がけているデザイナーに。あえて地元にいるクリエイターではなく、東京で活躍している方々にお願いをするようにしています。それはデザインの力が非常に大切だと思っていて、価値の不等価交換をおこさないためでもあるんです。“デザイン”は価値や意味の変換する行為。事業の価値や意味をきちんと伝えなければ、そこで生まれる価値が正当な対価で交換されないですよね。東京にはそういった人材が集い、切磋琢磨している環境なので、そこで高いクオリティを発揮する方達と仕事をすることが大事だと思っています。特に私たちのような福祉分野、ケアの分野では短期的な効用だけで判断をするようになると、本当に必要なサービスを提供することが出来なくなってしまいます。そのためにも、長期的な視点で価値ある活動だと伝わることが一番大事になってくると。
農業でも福祉でも、都市との繋がりは大事ですよね。食に関しても、地方で生産され都市で消費されるスタイルですし、電気もそうでした。両者がお互いに依存し合っているとも、言えると思います。だからこそ、地方はもっと都市と繋がって仕事をしたほうがいい。そうすると、いろいろな可能性も広がってくると思います。』

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分野を横断して、あたらしい価値を産み出していく

後半は今取り組んでいる事業と合わせ、あたらしく林業にも挑戦して、地域資源を活かしたビジネスづくりを行なっている現在進行形のお話に。千葉県でも林業従事者が減り、森林の荒廃が進んでいるとのこと。ただ、木材は立派なエネルギー源。地元、地域にある資源を効率よく活用できる仕組みづくりを模索する中で、自伐型林業の仕組みと出会い、現在あたらしい法人を作って事業の立ち上げに取り組んでいるそうです。

『日本では木をエネルギーとして使う人たちが圧倒的に少ないです。先日アメリカのサンフランシスコに行ったとき、スーパーで1まとまりの薪の束が1,500円で売られていました。日本ではありえないですよね。それは、行動経済成長を経て、日本ではエネルギーとして電気とガスが主流化し、圧倒的に家で薪を使う習慣がなくなったから。使う人がいなければ、市場がないので、高く取引されない。そうすると木を切る人が育たない。』

そこで自伐型林業の仕組みを使って、少ない投資で持続的に木材を搬出できる利点を活かして、自ら林業を行うビジネスモデルを実践することに。

『僕らは地元の森で伐採した木材を、自分たちの福祉施設で使うということを始めます。福祉施設では必ず毎日大量のお湯を使うので木材でお湯を沸かすボイラーをあらたに導入、そのボイラーをフル活用します。これまでガスや電気だった時のランニングコストをこの仕組みだったら、より効率よく回すことができます。でも、なぜ他の人たちがそれを利用しないのか。やはりそれは、ボイラーを導入しても安定的に薪を供給してくれる事業者が本当に地域にいるのか、不安ですよね。また木材の供給をする方からすれば、本当に買ってくれるの?それが心配でその事業に取り組めない。だから、需要サイドど供給サイドが同じ人がやればいい。市場がないなら、自分で作る。この仕組みが広がれば、日本の国土の3分の2である森林資源をもっと有効に使えるかもしれませんし、その林業の現場を福祉作業所の人たちの働く場として、仕事を増やしてあげれるかもしれません。オランダでは農家が酪農とデイサービスの運営を両方バランスよく行っていて、酪農と介護保険、両方の事業収益でビジネスを行っている企業もあるんですね。なので、私たちもこのようなケアファームのようなスタイルを今後進めていきたいと思っています。昨年の4月に新卒で2名のスタッフを採用して、今奈良に林業の研修で行っています。』

あたらしい挑戦を続ける飯田さん、最後に来場者のこれから起業を考えている予備軍の皆さんへメッセージを頂戴して、ガイダンスの前半が終了しました。

『千葉の“恋する豚研究所”のレストランで食事をされる人たちは、ほとんどここが障害者施設とは知らないんですよね。美味しいしゃぶしゃぶを食べに来ている。それでいいと思うんです。これからは、1つの目的、1つの場所ということではなくて、さまざまな価値を複合的に提供していくことが大切です。結果として、法人全体として利益を出す仕組みを考えること。それが経営するということだと思います。収入を増やし、コストを削減する、基本はその価値を作り続けることが起業する人に求められることだと思います。これからは1つの概念に縛られず、分業化が進んだ社会で、それぞれをあたらしい視点で統合していくことが大事になってくると思います、特に地域で活躍していくにはその部分が大事になってくるでしょう。ぜひ、これから起業をする方々は頑張ってチャレンジしていただけたらと思います。応援しております!』

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後半は創発ワークショップ。 今社会が求めていること

ガイダンスの後半は会場に集まった参加者のみなさんと、飯田さんの事業ストーリーを聞いた直後の感想を交えつつ、今社会に求められているビジネスについて、起業家として大切なスタンスなどグループに別れてディスカッションを行いました。

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ワークショップの司会はカモス会議など、都内や横浜などで対話の場をプロデュースしているを鈴木高祥さんが担当。飯田さんのお話から得た気づきを活かしながら、参加者の皆さんが近い将来起業するタイミングで何を大事にしたらいいのかを考えるワークショップに。

ディスカッションを通じて、それぞれのビジネスアイデアについての第三者の目でみるきっかけや、ヒントを見つけられたという方も。今後実施するガイダンスでも、毎回テーマを変えて、さまざまな視点で起業やビジネスアイデアについて考える場になるとのこと。ぜひ海老名会場、横須賀会場、小田原会場でのガイダンスもお楽しみに!

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次回ガイダンスは8/19(Sat)海老名で開催!!

次回ガイダンスは8/19